2008年1月15日火曜日

深刻化する温暖化 地球環境戦略を世界に示せ

 ◆待ったなしの対策
 北極海の氷の面積が過去最小を記録した。凍土が解けたシベリアでは、メタンガスが噴出している。キリマンジャロの万年雪も消滅の危機にある――。
 世界各地で温暖化の影響とみられる現象が顕在化している。巨大なハリケーンなど、頻発する異常気象も、温暖化に起因するとされる。日本では昨夏、最高気温が40・9度を記録し、74年ぶりに記録を更新した。
 地球温暖化は、未来の話ではない。各国が連携して、早急に手を打つべき差し迫った課題だ。北海道洞爺湖サミットが開かれる今年、日本はその主導的役割を果たさねばならない。
 今年は、京都議定書が先進国に温室効果ガスの削減を義務付けた5年間の始まりの年でもある。
 議定書が採択された1997年、各国が一体となって地球温暖化に立ち向かおうという機運が高まったが、国際社会の一致した取り組みにはならなかった。
 世界最大の排出国である米国は、経済への悪影響を懸念し、2001年に議定書から離脱した。米国を抜き、世界一の排出国になったとされる中国や排出量5位のインドは、途上国として、削減義務を免除されている。
 京都議定書で削減義務を負っている国の総排出量は、全世界の3割でしかない。現状では、京都議定書以外に、温暖化対策の国際的なルールはないが、大きな欠陥を有しているのも明らかだ。
 昨年、ノーベル平和賞を受賞した「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は、このまま有効な対策を講じなければ、平均気温が今世紀末に最大で6・4度上昇すると警告した。
 気温が上がるにつれて、干ばつによる農業被害や水不足、海面上昇による洪水、感染症の蔓延(まんえん)などは避けられまい。
 こうした事態を招かないために、急ぐべきは、京都議定書の対象期間が2012年に終わった後の温暖化対策のルール作りだ。京都議定書の失敗を繰り返してはならない。
 まず重要なのは、米国や中国など、すべての主要排出国が参加する枠組みにすることだ。京都議定書は、主に先進国に削減義務を課したが、新たな枠組みでは、途上国も、応分の責任を負うことが必要である。
 ◆「ポスト京都」こそ重要
 次に、どのように排出量削減を進めるのか、具体的なルールを決めなくてはならない。京都議定書と同様に、国ごとに削減目標を設けて達成を義務付けるのか、あるいは別の手法にするのか。
 昨年12月に開かれた国連の気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)は、先進国全体で排出量削減の数値目標を設けるかどうかで紛糾し、結局、目標設定は先送りされた。国別の目標設定の議論になれば、各国の利害の対立が一層、激しくなることは間違いない。
 欧州連合(EU)は、国別の削減義務付けを求めている。域内の排出量取引市場を発展させたいとの思惑がある。
 米国は、議定書を離脱した時から、一貫して義務付けに反対している。温暖化対策の国際交渉では、EU対米国という構図が定着した。
 日本は、米国を交渉のテーブルに留め置くことに腐心し、国別の義務付けなどへの態度を鮮明にしていない。産業界にも、削減義務付けへの拒否感は強い。
 各国が責任を持って排出削減に取り組むためには、やはり、国別の削減義務付けは必要であろう。今後の交渉で、何とか打開策を見いださねばならない。
 環境対策に消極的とされるブッシュ政権だが、仮に民主党政権になれば、米国の対応が大きく変わる可能性もある。
 中国の存在が、事態を複雑にしている。先進国に一層の削減努力を求める一方で、自らが削減義務を負うことは拒否している。大量排出国として応分の責任を担うよう先進国が協力して迫らねばなるまい。
 京都議定書により、日本は、排出量を90年度比で6%削減する義務を負っている。議定書に欠陥はあるとしても、批准国として、その達成に最大限の努力をしなければなるまい。
 だが、90年度当時、既に高水準の省エネルギー技術を有し、省エネを達成していた日本にとって、6%削減は容易でない。06年度の排出量は90年度を6・4%上回っている。
 ◆長期的視点の政策を
 環境省などは、6%に届かない分について、海外から排出枠を購入し、自国の削減分に計上する手法で賄う方針だ。これには1兆2000億円が必要との試算もある。財政難の中、削減率の帳尻合わせのために、巨額の公費を投入することに、国民の理解は得られるだろうか。
 日本は、世界全体の排出量を2050年までに半減させるという目標を提唱している。その場しのぎではなく、長期的視点に立った政策こそが必要である。
 省エネ技術の革新をなおも進め、その技術を途上国に提供することにより、日本は、世界全体の温室効果ガスの削減に今以上貢献できるはずだ。
 北海道洞爺湖サミットで成果を残せるかどうかが、「ポスト京都議定書」の枠組み作りの行方を左右するだろう。議長国の日本は、議論をリードする確固たる戦略を示さねばならない。

2008年1月11日金曜日

消費税を社会保障目的税に 少子高齢社会の財源

 元号が平成と改まってから20年目である。
 昨年公表の人口統計によると、昭和生まれが1億人を割る一方で、平成生まれは2000万人を超えた。
 平成世代は、まだ未成年だが、十数年後には社会の中核を担い始める。その時、社会保障制度は安心できるものになっているだろうか。真剣に考えることが、平成に先立つ世代の責務であろう。
 平成元年(1989年)は少子化が明確になった最初の年でもあった。合計特殊出生率が丙午(ひのえうま)(66年)の1・58をも下回り、「1・57ショック」と呼ばれた。だが、その数字も今見れば夢のように高い。現状は1・32である。
 高齢化も進んだ。平均寿命は元年当時より約4歳延び、今や男性は79歳、女性は85歳。高齢者(65歳以上)が人口に占める割合も現在は21・5%と、元年の11・6%からほぼ倍増した。
 政治が少子高齢化の進行を予測しなかったわけではない。平成元年は、社会保障を支える基幹税に育てるべく、税率3%の消費税が導入された年でもある。
 ところが、97年に5%に引き上げて以降、税率見直しの議論はタブー視され、超少子高齢時代を支えることのできる財源とはなっていない。消費税もまた、導入から今日まで、社会構造の変化に対応できない“未成年”の段階にとどまってきたと言えよう。
 ◆次世代は支えきれない
 このままでは、社会保障制度を維持することは、ほとんど不可能である。それは、平成世代の先頭が社会の中心的な担い手となる、2025年の人口構成を見れば明らかだ。
 大きな上部に対して根元は細く、形は逆ピラミッドに近い。1人の高齢者を支える現役世代(15~64歳)の数は、現在の約3人から1・9人まで減少する。
 年金、医療、介護などを合わせた社会保障給付は、現在の約90兆円から141兆円まで膨らむ、と厚生労働省は予測している。
 現役世代の負担に大きく頼る現行制度のまま、社会保障を同じ水準で維持しようとすれば、支える世代は耐えきれないだろう。
 老いも若きも、広く薄く、福祉財源を負担し合うしかない。そうすれば高齢者層が大きくとも、負担の重さは各世代に幅広く分散される。消費税率を引き上げることによって、必要な財源を確保すべきである。
 引き上げは段階的に行うとしても、いずれは、欧州諸国の最低水準である15%程度は検討する必要があろう。
 読売新聞は消費税の導入当初から、これを社会保障・社会福祉のための目的税とし、税率引き上げについて、国民の理解を得るべきだと主張してきた。
 政治の動きは鈍かったが、もはや先送りはできない状況にある。
 09年度までに基礎年金の国庫負担割合を、現行の約3分の1から2分の1に引き上げねばならないからだ。そのために必要な約2兆3000億円の財源を、消費税の引き上げ以外の方策で手当てすれば、財政に大きな無理が生じよう。
 年金に限らず、消費税の議論を先送りしてきたツケは、いたるところで噴き出している。
 医療は、保険料や窓口負担の引き上げが限界に来ている。医師不足、看護師不足に思い切った手も打てない。
 介護保険制度も、コムスンの不祥事を機に、介護現場の低賃金と、それに伴う深刻な人手不足が浮かび上がっている。
 社会保障制度全般を持続可能なものとするには、財政基盤を強化しなければならない。それには新たな財源がどうしても必要だ。
 ◆財政改革と両立せよ
 こうした認識は、国民の共通理解となりつつある。
 読売新聞の世論調査で「社会保障制度を維持するために消費税率の引き上げはやむを得ない」と考える人は49・7%に達し、「そうは思わない」とする人の48・1%を上回った。政治は勇気を持って、消費税を財源の中心に据えた社会保障の将来構想を提示すべき時だ。
 自民党の財政改革研究会が、消費税を「社会保障税」とする提言を出した。国の予算を社会保障部門とそれ以外に2分割する。社会保障に必要な財源は、そのための目的税できっちりと確保する。一方で、非社会保障部門の予算はスリム化を進める、というものだ。
 傾聴に値しよう。これまでは「まず歳出の無駄を見直すことが先だ」という、一見もっともらしい理屈で、消費税の議論は先送りされてきた。
 不必要な歳出を見直し、その削減に取り組むのは、当然のことである。しかし、それだけでは、超少子高齢時代に必要な社会保障の財源を捻出(ねんしゅつ)できない。消費税が導入されてから20年目になる今年、責任ある議論を急ぎ、税率引き上げの道筋をつけることが必要だ。
 平成生まれの子どもたちに、揺るぎない社会保障制度を残すためには、消費税を社会保障目的税へと進化させなければならない。

2008年1月8日火曜日

政策推進の枠組みづくりを 「ねじれ」が生む政治の停滞

 ◆意思決定ができぬ国家
 今日の日本政治の停滞は深刻だ。
 国際社会で、日本として相応の責任を果たすには何をなすべきか。少子高齢化が進む人口減社会にあって、いかにして活力のある国を築いていくのか。北朝鮮の核開発、中国の軍事大国化など悪化するアジアの安保環境の下、日本として平和と安全をどう確保するのか――。
 政治はこれら内外の課題の解決に道筋を示し、具体的な施策を着実に実行していかなければならない。
 しかし、衆院では与党、参院では野党が多数を占める国会の「ねじれ状況」が、国としてなすべき意思決定を困難にしている。
 例えば、インド洋での海上自衛隊艦船による給油活動再開のための新テロ対策特別措置法案の成立が、年明けにずれ込んだ問題である。
 法案成立後、2月には活動再開の見通しとはいえ、「テロとの戦い」から一時的に離脱したことは、国際社会に失望感を与えた。何よりも、国際社会の一員として、責任ある行動をとるための意思決定が容易にできない国家であることを露呈した。
 こうした事態が重なれば、国際社会の信頼を損ない、日本の対外的な発言力は低下するだろう。
 通常国会は、租税特別措置法改正案など国民生活にかかわる問題をめぐって紛糾するのは確実だ。
 民主党は、道路特定財源である揮発油(ガソリン)税などの暫定税率を維持する政府案を否決する方針だ。
 3月末で暫定税率の期限が切れると、ガソリン価格は下がるが、国や地方自治体の予算に約2・6兆円の穴が開く。期限切れ後に法案が成立すればガソリン価格は元に戻る。そんなことになれば、国民生活や地方行政は大混乱に陥る。
 憲法は、衆院で可決し参院に送られた法案は、参院で否決されるか、参院送付後60日以内に採決されなければ、否決と見なし、衆院の3分の2以上の多数で再可決できると定めている。
 ◆政権能力試される民主
 自民、公明の両与党は新テロ法案同様、租税特措法改正案でも、民主党が反対を貫くなら、粛々と再可決すべきだ。暫定税率の期限切れによる混迷を回避するには、改正案の提出を急ぎ、早期に衆院通過を図る必要がある。
 同意人事の問題もある。現在、同意人事案件では、衆院の再可決の道が封じられている。民主党は、3月に任期満了となる日銀総裁の有力候補とされる官僚OBの起用に反対する構えだ。民主党の対応によっては、日本の金融政策を司(つかさど)る重要ポストが空席になりかねない。
 そうなれば、米国の低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」問題や原油高などの影響で不透明感が漂う日本経済の運営に混乱が生じる恐れもある。
 民主党は参院第1党という責任ある立場だ。政権政党をめざすなら、国会での不毛な対決は避け、国益や国民生活にかかわる政策について、与党との協議を通じて合意形成を図っていくべきだ。
 福田首相と小沢民主党代表は、昨秋の党首会談で、「大連立」政権をめざすことで基本的には一致した。重要政策を推進していくための安定した政治システムの構築が必要との判断からだった。
 国家としての意思決定ができない状況を放置しては政治の責任が果たせない。主要政党の指導者として、そうした強い危機感を共有するのは当然のことだ。
 社会保障制度改革やその財源としての消費税率引き上げ、自衛隊海外派遣の恒久法制定などは、自民、民主両党が等しく取り組まなければならない問題だ。
 政府・与党は、2008年度の消費税率引き上げを見送っている。その必要性は認めつつも、ねじれ国会で身動きがとれないことが最大の要因だろう。
 民主党は、党税制改革大綱で、消費税の社会保障目的税化を提唱したが、税率は当面据え置き、引き上げは社会保障制度の抜本改革を前提に「国民の審判を受け、具体化する」としているだけだ。
 2大政党が消費税率引き上げ問題をはじめとする税財政、社会保障、外交・安全保障など喫緊の課題に向き合わず、問題を先送りすれば、ツケはすべて国民に回る。
 ◆「連立」の追求が必要だ
 現在の衆院議員の任期は、2009年9月までだ。すでに解散・総選挙が各政党の視野に入っている。
 衆参両院で議決が異なる場合の“決裁手段”としての「3分の2以上」の議席を有する自民、公明の両与党は、当面、解散を急がねばならない理由は乏しい。直面する数々の懸案を考えれば、解散によって政治空白を招いてはなるまい。
 しかし、いつ解散があってもおかしくない局面になりつつある。その解散・総選挙で与党が勝利しても、3分の2以上の議席をとることは極めて困難だ。
 一方、民主党が過半数をとれば、現在のねじれ状況は解消する。だが、現有議席を倍増したとしても過半数には届かない。小沢代表も、単独過半数は「非常に厳しい」と認めている。
 結局、衆院選によっても、ねじれ状況が解消される可能性はほとんどない。それに加え再可決もできなくなる、という最悪の事態が予想される。
 それでは、政治の停滞がさらに深刻化するばかりだ。その時は必ず、新たな連立を模索する動きが出るだろう。
 政治の停滞と混迷が続けば、国民生活の安定も、国際社会における日本の地位も危うい。必要な政策を推進できる政治体制の構築こそ、今の政治に課せられた最大の課題である。

2008年1月7日月曜日

やはり日米同盟が基軸だ 自衛隊派遣の恒久法を

◆集団的自衛権を見直せ
 世界の平和と安全は、通商国家・日本の存立基盤だ。アジア地域も国際社会全体も、安全保障環境が不安定化している時、安定した新たな国際秩序作りに積極的に取り組むことは、日本にとって死活的な課題である。
 北朝鮮の核とミサイルの脅威をどう除去するか。政治、経済、軍事の各分野で大国化へ突き進む中国と、いかに向き合うか。世界各地で国際テロが続く中、道半ばのイラクとアフガニスタンの復興にどう取り組むべきか――。いずれも日本単独では対処できない。
 戦後の日本外交は一貫して日米関係を基軸としてきた。超大国・米国が保持する軍事抑止力をはじめとする強大な力を、日本の安全は無論、世界の平和と繁栄の支えとするために、今日、日米同盟の重要性は一層強まっている。
 日米同盟の強化とは、緊密に政策調整しつつ、日本の国益を確保する主体的外交である。米国の要求に唯々諾々と応じる対米追従外交ではない。
 日米両国は、北朝鮮に対し、核の完全廃棄を迫っている。だが、北朝鮮は、6か国協議で合意した「完全で正確な核計画の申告」を未(いま)だに実行していない。
 一方で、北朝鮮は現在も、核兵器の開発を続けている。日本を射程に入れるノドン・ミサイルに搭載可能な小型核弾頭を持つようになれば、日本はより深刻な脅威にさらされる。
 核問題の処理は、米朝協議が主舞台となっているが、米国には、北朝鮮に対し、厳しい姿勢で臨むよう求めねばならない。米国による北朝鮮のテロ支援国指定も、日本人拉致問題に進展がないまま、安易に解除すべきではない。
 同盟の深化には、在日米軍再編の着実な実行とともに、ミサイル防衛、周辺有事の相互協力計画策定など、防衛協力の進展が重要だ。
 集団的自衛権は「保有しているが、行使できない」という、矛盾した政府の憲法解釈の見直しも不可欠である。近くまとまる有識者会議の報告を受け、政府は、見直しへ動くべきだ。
 こうした努力を怠れば、日米同盟は揺らぐ。日本の外交・安全保障を支える力の基盤が脆弱(ぜいじゃく)化する。
 「日米同盟の強化」と並ぶ福田内閣の外交の柱は、「アジア外交の展開」だ。日中関係は、その中核である。
 ◆中国軍備増強への懸念
 昨年末の福田首相の訪中では、青少年交流の拡大などで合意したが、東シナ海のガス田開発問題は決着しなかった。
 日中が目指すのは、単なる「友好」ではなく、「戦略的互恵」の関係だ。国家戦略が違う両国が、経済、エネルギー、環境などの分野でどれだけ実質的な成果を上げられるのか。今春の胡錦濤国家主席の初来日が試金石となる。
 中国には、国際社会の一員として責任ある行動を促すことが肝心だ。
 艦艇の相互訪問など軍事交流は、地域の良好な安全保障環境の形成につながるものとすべきだ。19年連続で2けたの伸びを示す軍事費の透明性向上を求め続けつつ、海空軍の近代化と活動範囲の拡大の意図に目を向けねばなるまい。
 盧武鉉政権下で停滞した日韓関係の改善も重要だ。李明博次期大統領は、対北朝鮮融和政策の見直しに言及している。北朝鮮包囲網の強化へ、日韓の連携を強めていきたい。
 7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)では、議長国として、主要8か国(G8)と中韓両国との首脳間の対話の機会を作るなど、アジアの安定に寄与する視点も重要となろう。
 日本の安全保障法制上、急ぐべきは、自衛隊の海外派遣に関する恒久法の整備である。
 インド洋での海上自衛隊の給油活動を再開するための新テロ対策特別措置法案が成立しても、法律の期限は1年だ。期限延長問題で再び膨大な政治的エネルギーを費やしかねない。
 給油も含め、自衛隊の海外任務に関する恒久法制定を目指す方が合理的だ。
 恒久法整備の際、大きな論点は、国連安全保障理事会決議の有無の問題だ。
 民主党の小沢代表は、安保理決議を根拠とする活動のみに自衛隊の派遣を限定するよう主張する。その場合、武力行使を含む活動でも、憲法9条には抵触しない、と言う。従来の憲法解釈の転換であり、検討に値する。
 問題は、“国連至上主義”がはらむ危険性だ。安保理は、中国やロシアが拒否権を行使すれば機能不全に陥る。
 どんな国際平和活動に参加するかは、日本が主体的に判断すべき問題だ。安保理に判断を委ねるのは国家主権の放棄にも等しい。安保理決議がなくても、国会の承認があれば、自衛隊を派遣できる枠組みを定めるべきである。
 ◆防衛省抜本改革が急務
 自衛隊の海外任務は、後方支援や人道支援に限定されているが、治安維持や警護、船舶検査の追加を検討する必要がある。そうすれば、インド洋での海上阻止活動への参加も視野に入る。
 その際は当然、自衛隊の武器使用基準を見直すべきだ。現在は、正当防衛と緊急避難に限られているが、任務遂行目的の使用を認める国際標準にしなければ、効果的で安全な活動ができない。
 防衛省の抜本改革も喫緊の課題だ。
 昨年は、守屋武昌前次官の汚職、イージス艦情報漏えいなどの事件が続いた。防衛調達改革、情報保全の具体案をまとめ、早急に実行する必要がある。
 新たな安全保障政策の策定と展開に、国民の信頼回復が不可欠である。

2008年1月6日日曜日

中国の「光」と「影」 急激な膨張に潜む内外の危機

◆尽きない社会不安の種
 超大国へとひた走る中国にとって、2008年は様々な面で「光」と「影」が交錯する年となるだろう。
 8月には北京五輪が開催される。市場経済化を進める改革・開放政策の導入から30年。北京五輪は、この間の国力伸長を内外に誇示する絶好の舞台となる。
 世界一の外貨準備高の多角運用を目的に、中国は昨年秋、政府系ファンドを設立し、国際金融界の耳目を集めた。「世界の工場」から投資大国へ――。「中国マネー」が本格始動すれば、世界経済における中国パワーは、ますます強大になる。
 一方で、急激な膨張は、中国内外に深刻な問題をもたらしている。国内では格差拡大や汚職のまん延、底なしの環境汚染など、社会不安の種は尽きない。
 環境汚染は、国内から日本など周辺国へと広がり、「越境汚染」の様相を呈している。人権問題など意に介さない露骨な資源外交も非難の的だ。「中国は国力に見合った責任を果たしているのか」との国際社会の不信は募る一方だ。
 「影」を直視し、内外に潜む危機に適切に対応できるか否か。中国は、困難な課題に直面している。
 今、国際社会で強まっているのは、中国経済の過熱への懸念だ。
 背景にあるのが「カネ余り」現象である。上海市場の株価は2年間で6倍に急騰した。昨年の固定資産投資は前年比25%超の大幅増となる見込みだ。
 全体の物価水準も、危険水域に迫っている。昨年の物価上昇率は、8月以降6%台から下がらず、11年ぶりの物価高となった。中でも食品価格は18%を超え、低所得者層の生活を圧迫している。インフレは社会不安に直結する。
 胡錦濤政権は昨年末、過熱経済の制御とインフレ抑止を今年の最優先課題とする方針を決めた。当然の措置だが、問題はその方針を徹底できるかどうかだ。
 胡政権は、着々と権力基盤を固めてきた。だが、地方政府は地元利益を最優先し、中央政府の指示を無視する傾向が強い。今回の引き締め策も地方政府の面従腹背で空回りに終わる可能性がある。
 過熱経済の元凶である「カネ余り」を根本から解決するには、やはり大胆な人民元の切り上げが不可欠だ。
 ◆人民元の改革を急げ
 昨年1年間で人民元は対ドルで7%弱上昇した。だが、貿易黒字、外貨準備高とも急ピッチで積み上がった。より速いペースの切り上げが必要な証しだ。元高は物価抑制策としても有効なはずだ。
 北京五輪開催や成長を優先するあまりに、引き締め策や人民元改革が後手に回れば、バブル崩壊といった深刻な事態もあり得よう。
 米国、日本に次ぐ世界第3位の規模の中国経済が混乱すれば、国際経済にも大きな影響を及ぼす。日本は米欧と歩調を合わせながら、中国に適切な経済運営を求めていく必要がある。
 経済と並び、軍事、外交の両面でも、中国パワーが国際政治の構図を変えようとしている。
 軍事費は、公表分だけでも19年連続2けたの伸びで増え続け、近年、装備増強が急速に進んだ。米国防総省の年次報告は、「中国と台湾の軍事バランスは、中国優位に傾いている」と指摘する。
 ◆急速な軍拡が招く不信
 胡政権は昨年の軍首脳人事で、対台湾作戦関連ポストを経験した将軍を大挙、登用した。装備の増強や人事の主眼は、独立志向を強める台湾けん制にあるとされてきた。
 海軍は、外洋展開力の充実に努めている。軍内では空母保有論が公然と語られ始めた。ミサイルの増強や空軍力の強化も著しい。米国を中心に、「中国の軍拡の規模は対台湾作戦の想定を超える」として、軍事力強化の意図に対する警戒論が渦巻いている。
 上海協力機構を構成するロシアや中央アジア各国との軍事演習は、年々、米国けん制の色彩を強めている。パキスタンやミャンマーの港湾を軍事拠点化する動きもある。中国には、中東・アフリカから原油を輸送するシーレーンを確保する狙いがある。
 長期的には、政治・安全保障面でも、超大国・米国に拮抗(きっこう)する一極であろうとしているのだろう。
 中国は近年、アフリカ、南米などで資源確保のため、大規模な援助外交も展開し始めた。問題は、ダルフール紛争を抱えるスーダンへの援助のように、中国の外交姿勢が紛争解決に逆行し、時に国際秩序の安定を損なっていることだ。
 軍の透明度も低いままだ。
 中国は昨年1月、ミサイルによる衛星破壊実験を行い、国際批判を浴びた。11月には空母キティホークを含む米軍艦船の香港寄港を唐突に3回にわたって拒否し、米国との関係が揺らいだ。
 ゲーツ米国防長官は、「いずれも軍部の決定で、政府には伝えられていなかったようだ」と指摘した。2004年11月の中国原潜による日本領海侵犯事件でも、同様の見方がされた。こうした事例が、国際社会に不安を抱かせている。
 経済、政治、軍事など、あらゆる分野での中国の膨張が、地域や国際社会の大きな不安定要因となっている。「中国問題」は、ますます国際社会全体の中心的な課題となっていくだろう。

2008年1月5日土曜日

家計の元気回復を急ぎたい 「成長」「財政再建」両立を

◆原油高と株安が直撃
 どうにか飛行を続けていると思っていたら、年明け早々、激しい乱気流に巻き込まれ、墜落するかと思われるほど機体が激しく揺れた。
 日本経済を飛行機に例えれば、そんなところか。もともと、米国の「サブプライムローン」問題で、世界経済は乱気流気味だった。
 ここに来て、ニューヨーク商業取引所で、原油の先物価格が、1バレル=100ドルの大台をつけた。産油国の政情不安などを材料に投機筋が買いを入れた結果で、「第3次石油危機」を思わせる様相だ。
 外国為替市場では、一気に円高・ドル安が進んだ。東京証券取引所では、大発会で株価が一時、700円以上も暴落してしまった。
 2008年の日本経済はどうなっていくのか。景気の失速を防ぎ、さらに息の長い成長を実現するには、二つの課題を克服する必要がある。
 まず、企業部門と並ぶ経済のエンジンである家計部門の元気を増すことだ。2002年2月に始まった今回の景気回復期は戦後最長を更新し、まもなく6年になる。好調な輸出による企業収益の拡大が、それを支えてきた。
 企業業績の拡大は、雇用や賃金の増加を通じて家計部門に恩恵をもたらすことが期待されたが、いまだ十分には実現していない。むしろ昨年は、一段と賃金の伸び悩み傾向が目立った。
 厚生労働省の毎月勤労統計によると、5人以上の規模の事業所の1人平均現金給与総額は、06年12月以降、ほぼ一貫して前年同月比で減少している。
 給与の高かった団塊世代が退職し、代わりに低賃金のパートなど非正規社員が増加した。加えて、原材料費の高騰で収益が圧迫された中小企業が、賃金を抑える姿勢を強めているためだ。
 大企業もこれまで、厳しい国際競争を意識して人件費増には消極的だった。だが、空気は次第に変わりつつある。日本経団連は昨年末、今年の春闘で賃上げに積極的に対応する方針を打ち出した。
 賃上げの可否は、個々の企業の経営判断だ。しかし、企業の従業員を含めた家計部門の活性化なしには、日本経済の安定成長は実現できない。生産性を高め、競争力に余裕ができた企業が賃金を引き上げるのは、望ましい方向だろう。
 ◆デフレ脱却を確実に
 政府は08年度経済見通しで、国内総生産(GDP)実質成長率を2・0%、名目成長率を2・1%とした。デフレの象徴とされる「名実逆転」が11年ぶりに解消されるとの姿を描いている。06、07年度も名実逆転の解消を見込んだが、原油高の影響を除けば物価の上昇力は極めて弱く、実現が阻まれてきた。
 賃金の増加が消費を押し上げ、それがまた企業活動を刺激する。そんな好循環を、企業部門の堅調さが維持されている間に強めることができれば、物価も緩やかな上昇を維持していこう。デフレ脱却を完全なものにする道だ。
 政府・日銀は、この道筋の維持に努めなければならない。金融政策には一段の慎重さが求められる。建築確認審査の厳格化を円滑に実行できなかったように、行政の不手際が景気に冷水を浴びせることがないよう、細心の注意も必要だ。
 もう少し長い目で見た課題は、成長と財政再建の両立である。
 ◆「ばらまき」は避けよ
 昨年、自民党内では、成長率を高めることで増税を回避すべきだとする「成長重視派」と、消費税率引き上げを含めた財政健全化を急ぐべきだと主張する「財政再建派」の対立が注目された。
 だが、本来、成長の持続と財政立て直しは、日本経済の発展に欠かせぬ車の両輪だ。労働力人口の減少による経済の衰退を防ぐには、生産性を高め、成長力を増す必要がある。
 一方で、巨額の財政赤字を放置すれば、民間の資金はその穴埋めに回り、経済の活力が失われる。
 まず重要なのは、財政をまっとうな姿に戻すことだろう。景気減速で税の自然増収が鈍り、政府が目標としている11年度の国と地方の基礎的財政収支の黒字化は、すでに達成が危ぶまれている。
 成長率上昇による税収増という、実現性が不確かな要素だけをあてにできる状態ではない。増え続ける社会保障費を考えても、消費税率上げを中心にした財政健全化策の策定は、待ったなしだ。
 成長政策も問われる。日本企業の国際競争力向上の観点からは、法人税実効税率の引き下げなども課題になる。その実現のためにも、財政的余力を確保する必要があろう。
 政府は、福田内閣下での新たな経済成長戦略作りを進めている。都市と地方、高齢者と若者、大企業と中小企業などが連携する「つながり力」の強化をキーワードに具体的政策を策定するという。
 経済のグローバル化や、情報技術(IT)の高度化で、個人の所得格差が広がり、景気回復の過程で都市と地方の景況感にも開きが目立ってきた。そうした格差の拡大を防ぐ努力は必要だ。
 しかし、格差穴埋めのための「ばらまき」政策や、「護送船団」型の産業政策では、日本経済の実力は高まらない。その認識をしっかり持って、企業の活力や働き手の質の向上を目指す、実効性のある政策を実行すべきだ。

2008年1月4日金曜日

「北」の脅威をどう排除するか 超大国の力と威信の陰り

◆膨張する中国の存在感
 グローバル化が進む国際社会は、不安定感を増している。
 最大の要因は、圧倒的な力を背景に、一極支配の時代を作るかに見えた超大国・米国の地位が揺らいでいることだ。
 イラク情勢など米国自身の対応の不手際も一因だが、米国に対抗する一極を目指して、中国とロシアが、国際舞台での影響力を広げようとしているからだ。
 東アジアでは中国が台頭し、地域の勢力図に変化が生じつつある。
 今世紀初めにブッシュ米大統領が就任してからの7年間に、日本と韓国にとっての最大の貿易相手国は、米国から中国へと移った。軍事的にも、膨張する中国の海軍力は、米第7艦隊の作戦行動上、最も重要な西太平洋に進出している。
 欧州では、ロシアの“復活”が著しい。プーチン政権のもとで年率7%近い経済成長を遂げ、石油価格の高騰の後押しも得て経済規模は拡大した。外貨準備高で中国、日本に次ぐ世界第3位の座を占め、10年後には経済力で英仏と肩を並べる、との見方も出ている。
 石油、天然ガスの供給源として、欧州への影響力を強める一方、米国への対決姿勢が目立っている。
 しかし、現在の中露は、世界構図変動の要因ではあっても、まだまだグローバルな規模で国際関係の混乱回避に責任を持てる力はない。
 世界の平和と安定のために、中心的な役割を担える大国は、やはり米国をおいてほかにない。
 ところが、任期末のブッシュ政権のリーダーシップは、低下するばかりのように見える。
 混迷から抜け出せないイラク情勢、対テロ戦争の最前線であるアフガニスタンの治安悪化、その隣国であるパキスタンの政情流動化によって、中東から南アジア地域へ危機は拡大する傾向にある。北朝鮮の核問題も解決への道筋は依然、明確ではない。
 混迷するイラクは、米国の威信低下の象徴だ。米国の威信と力を回復する上で、イラクの安定化は最優先課題だ。
 イラクでは、昨年の米軍増派が、治安を回復する成果を上げた。ブッシュ大統領は今年7月までに、増派分の3万人弱を米国に帰国させる方針だ。
 ◆長期化するイラク駐留
 だが、肝心の政治的な安定はまだ見えない。依然、米軍の存在が治安維持の要である現実に変わりはない。
 アフガンで、国際テロ組織アル・カーイダやタリバンが再び勢力を盛り返していることも懸念すべき事態だ。米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍の増派が検討され始めた。
 その最中、対テロ戦争の重要“後方基地”であるパキスタンで起きたブット元首相の暗殺は、イスラム圏唯一の核保有国の混乱に拍車をかけている。アフガン情勢にも影を落としている。
 イラクとアフガンの再建、平和構築に米国が失敗すれば、中東地域や南西アジア地域、ひいては国際社会全体が不安定になる。日本をはじめ国際社会は米国と協調しながら、引き続き復興支援に努めていかなければならない。
 当面、米国が、イラクとアフガンに20万人近い米軍兵力を駐留せざるを得ない状況は続く。米政府が必要とする戦費は年額2000億ドル(約23兆円)近い。米国には大きな負担だ。
 問題は、それが、米国が他の地域で外交安保政策を遂行する際に、いかなる影響を及ぼすのか、にある。軍事力を行使するだけの余裕はなくなっている。
 折しも、北朝鮮の核廃棄を目指す6か国協議は大きなヤマ場にさしかかっている。北朝鮮に核廃棄の決断を迫る上で、軍事力を背景にした米国の圧力が、重要なテコとなる。
 しかし、米国の力が弱まれば、北朝鮮の核廃棄が遠のきはしないか。北朝鮮の核、ミサイルの脅威に直接さらされる日本にとっての懸念は、そこにある。
 北朝鮮は、6か国協議で、昨年末までの履行で合意していたはずの核施設の「無能力化」や、核計画の「完全で正確な申告」を、今もってしていない。8年前、クリントン前政権を相手にした時と同様、政権交代期の米国に、大きな譲歩を求めて強気の対応に終始するつもりなのだろう。
 核の放棄なしに、金正日政権の未来はないことを厳しく認識させることが重要だ。日本としては、米国はもちろん中国、さらにロシアとも協力を強化し、堅固な北朝鮮包囲網を築く必要がある。北朝鮮の非核化を実現するための戦略を描き、各国と連携していかねばならない。
 ◆外交力を立て直すには
 日本の課題は、経済・政治の混迷を立て直して発言力を確保し、国際政治に積極的に関与していくことにある。
 日本にとって極めて重要な外交手段である政府開発援助(ODA)も、世界一だった1990年代の6割となり、24年ぶりに第3位に転落した。これでは日本の外交力は弱まる。
 インド洋での給油作業から海上自衛隊が撤退したことも、国際平和協力への日本の姿勢に疑問を招いている。
 変動する世界の中で、日本は難しい局面に立たされている。進路の選択を誤らぬよう、国民の英知を結集しなくてはならない。

2008年1月1日火曜日

多極化世界への変動に備えよ 外交力に必要な国内体制の再構築

◆唯一の超大国の揺らぎ
 どうやら、今、わたしたちは、世界の構造的変動のただ中にいるようだ。
 「唯一の超大国」とされてきた米国の地位が揺らぎ、多極化世界へのトレンドが、次第にくっきりしてきた。
 米国の揺らぎは、イラク戦争の不手際が招いた信頼感の減退によるものだけではない。より本質的な要因として、長らく世界の基軸通貨として君臨してきたドルの威信低下がある。
 欧州の単一通貨ユーロが着実に力を伸ばし、第2の基軸通貨としての地歩を築いている。原油高騰で巨額の金融資産を積み上げている中東産油国や外貨準備世界一の中国などは、その一部を徐々にドルからユーロへと移し始めた。
 やはり原油収入で潤うロシアは、国際政治上での「大国」復活を目指し、ソ連崩壊以来の対米協調路線から、対米対抗姿勢に転じた。
 他方では、中国がめざましい経済成長を続けている。早ければ数年以内にも日本を追い抜いて、世界第2の経済大国となる勢いだ。それと並行して軍事力をも急拡大しつつある。いずれは、軍事パワーとしても、米国に拮抗(きっこう)する一つの「極」をなすだろう。
 BRICsという言い方が出回り始めたのは、4年ほど前からだ。2050年のブラジル、ロシア、インド、中国の経済大国化を予測し、その頭文字を並べた造語である。
 それによると、あと40年ほど後の世界では、中国が世界一の経済大国となっており、米国が2位、中国に匹敵する人口大国インドが3位へと躍進している。
 ◆重さを増す対中外交
 最近では、メキシコがロシアより上位に来るとも予測されているが、いずれにしても、中国、インドという新たな「極」が出現し、日本の経済的存在感は大きく後退する。
 購買力平価で見ると、すでに1995年に中国は日本を追い抜き世界第2位、06年にはインドも日本を抜いて第3位になっているとの報告もある。
 世界のパワーバランスの変動過程には、さまざまな曲折、摩擦もあろうが、今後、日本にとっては、新たな「極」となりつつある中国との関係が、外交政策上、もっとも難しい重要な課題となるだろう。いわゆる「戦略的互恵関係」をどう構築していくかということである。
 しかし、日本外交の基軸が日米関係であり続けることには、変わりはない。中国との関係を適切に調整していくためにも、見通しうる将来にわたり、日米同盟を堅持していかなくてはならない。
 福田首相が、日米同盟関係とアジア外交の「共鳴」を掲げているのも、そうした判断からだろう。
 懸念されるのは、中国の興隆にともない、米国の日本に対する関心が低下するのではないか、ということだ。
 米大統領選挙に手を挙げているヒラリー・クリントン候補が、21世紀の2国間関係で「最重要」なのは中国だと述べたことが、話題を呼んでいる。
 ◆日米同盟基軸は不変
 だが、だれが次期大統領になるかにかかわらず、中長期的には、米国にとっても、経済・軍事巨大パワーとしての中国との関係が「最重要」課題になるのは、いわば、自然な成り行きだろう。
 そうした米国と、今後も、「最も重要な同盟国」としての関係を維持するためには、日本もこれまで以上のさまざまなチャンネルを通じての外交努力、あるいは相応の負担をする覚悟が要る。
 その対米外交にしても、中国・アジア外交その他にしても、機動的な日本外交展開の前提になるのは、国内政治の安定である。国内が混迷状態では、日本の対外的発言、約束も信頼性が薄れ、外交力が弱まってしまう。
 ところが、現在の日本は、衆・参院の与野党ねじれ状況により、内外にわたる重要政策について迅速な政治決定が困難になっている。新テロ特措法を巡る迷走は、その象徴である。
 内政上、喫緊の課題ともいうべき税財政改革も、ほころびの目立つ社会保障制度の抜本改革も、与野党の次期衆院選がらみの思惑で先送りされている。
 社会保障制度が持続する条件は、そのための財政的裏打ちがしっかりしていることである。社会保障費の伸びに見合うだけの財政収入増がなければ、いずれ財政が破綻(はたん)する。財政が破綻すれば、社会保障制度も破綻する。
 08年度政府予算案の社会保障費は、約22兆円、一般会計歳出の4分の1を占める。08年度以降も、高齢化に伴う自然増だけで毎年1兆円近い。他方で国の債務は年間税収の10倍以上に達してなお増え続け、利払い費だけでも9・3兆円に及ぶ。
 ◆危機の財政、社会保障
 財政上の見通しがつかない中で、政府は社会保障関係費の伸びを切り詰めてきた。だが、そうした手法を重ねた結果、年金制度の将来不安だけではなく、医療、介護などに至るまで“システム崩壊の危機”といった声が上がっている。
 こうした窮状を打開するには、国民全体が広く薄く負担を分かち合う消費税の税率を引き上げる以外に、現実的な財政収入増の方途はない。実は、そのことを与野党ともよく知っているはずだ。それなのに改革をためらっている。
 ドイツでは、現メルケル首相率いるキリスト教民主同盟が消費税(付加価値税)率引き上げを公約に掲げながら選挙で勝利したという近例がある。だれしも増税がうれしいわけはないが、ドイツ国民はそれが必要なことを理解した。
 ◆強い政治的意思を示せ
 日本国民も、その必要性、それによる福祉の将来像などを丹念に説明すれば、理解できないはずはない。
 福田政権が当面なすべきことは、内外に強い政治意思を示すことである。
 新テロ特措法案に限らず、外交上、財政上、あるいは国民生活上必要な政策・法案は、憲法に定められる「3分の2」再可決条項を適用して、遅滞なく次々と断行していくべきである。
 野党の問責決議を恐れる理由は、まったくない。「3分の2」再可決は憲法に明記されているルールだが、問責決議などは、憲法にも国会法にもまったく根拠のない性格のものだ。内閣不信任決議とは、およそ重みが違う。
 衆院の任期は、あと2年近くある。解散・総選挙を急ぐ必要はない。
 もちろん、政策・法律の断行に際しては、国民に対する丁寧な説明を怠ってはならない。

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