2009年1月11日日曜日

積極的外交を展開する時 アフガン派遣を検討せよ

世界は今、様々な危機に直面している。米国発の金融危機を発端とする同時不況や、国際テロ、地域紛争、大量破壊兵器の拡散、地球温暖化、貧困などである。
 一つひとつの危機を克服し、世界の平和と繁栄を維持するため、日本が積極的に役割を果たす。国際舞台で自らの存在感を示し、発言力を確保する。そうした外交努力の積み重ねによって、初めて日本の国益は守られる。
 従来のような調整型の外交では、限界がある。中長期的な国家戦略を立案し、能動的な外交を展開することが求められている。
 ◆オバマ政権と同盟強化
 米国の政権交代は、日米同盟を強化し、日本外交を発展させる好機である。
 今月20日に発足するオバマ民主党政権は、多国間外交を重視し、同盟国にも実質的な負担を求める姿勢を示している。
 米国は依然、政治、経済、軍事の各分野で強い影響力を持つ。日本外交が日米同盟を基軸とすべきなのは変わらない。重要なのは受動的外交を脱することだ。
 日本が何をすべきか自ら判断し、実行する。米国にどんな行動を求めるかを熟慮し、最も効果的な方法で働きかける。すなわち、日本がやるべきことをやり、米国にも言うべきことを言う関係を構築したい。
 当面の試金石は、オバマ次期大統領が重視するアフガニスタンへの自衛隊派遣の問題だろう。
 アフガンでは、40か国以上の部隊が計1000人以上もの兵士の犠牲に耐え、アフガン復興や治安維持に汗を流している。「テロとの戦い」は正念場にある。
 海上自衛隊のインド洋での給油活動は、その一翼を担うが、それだけで日本の国力に見合う国際責務を果たしていると言えるか。
 政府は、陸上自衛隊の輸送ヘリコプターや地域復興チーム(PRT)のアフガン派遣について、より本格的に検討すべきだ。
 無論、一定の危険は避けられない。だが、ヘリコプターを改造して能力を高め、適切な派遣地域を選ぶことで、危険を最小限に抑えられる、との見方もある。
 陸自のアフガン派遣には、新法の制定が必要となる。その際、正当防衛などに限定されている自衛隊の武器使用権限を緩和し、国際標準並みにすることが重要だ。
 ◆日中韓の潜在力の活用
 昨年11月の日米共同世論調査では、日米関係を良いと思う日本人が34%と、2000年以降で最低を記録した。米国による北朝鮮のテロ支援国指定の解除などが影響したと見られる。
 ブッシュ政権の後半は、北朝鮮の核・拉致問題をめぐり日米関係がぎくしゃくした。オバマ次期政権とは、より緊密に政策調整し、強固な連携を再構築すべきだ。
 北朝鮮問題では、中国、韓国との協調も大切である。
 中国との「戦略的互恵関係」をより実質的で、確かなものにするためには、北朝鮮問題や金融危機対策で、目に見える具体的な成果を上げることが求められよう。
 麻生首相はきょう、シャトル外交の一環で韓国を訪問する。頻繁な首脳会談を通じて、未来志向の日韓関係を育てたい。
 先月の日中韓首脳会談で確認したように、アジアの3主要国が幅広く協力を重ねることの意義は大きい。
 日中韓協力は多大な潜在力と可能性を持つ。地域の平和と安定に貢献する方向で、日本は指導力を発揮せねばなるまい。
 日本は今月1日から2年間、10回目の国連安全保障理事会の非常任理事国を務める。能動的外交を具体化する大事な足場となる。
 中東など世界各地の紛争解決や平和維持に積極的に関与する必要がある。長年の課題である日本の常任理事国入りを視野に入れた安保理改革にも取り組みたい。
 そのためには、自衛隊の国際平和協力活動を質、量ともに拡充することが欠かせない。12年連続で減少している政府開発援助(ODA)予算も、増加に転じさせるべき時だろう。
 国際協力活動の当面の課題は、ソマリア沖の海賊対策だ。
 通商国家・日本にとって海上交通路の安全確保は死活的問題だ。現場海域では、日本関連船舶がいつ襲われてもおかしくない。
 与野党は、海自の艦船や哨戒機を派遣するための新法を早期に整備するため、協力すべきだ。
 与野党が新法制定に協力できれば、自衛隊の海外派遣全般に関する恒久法の整備にも弾みがつく。安全保障関連法制は、国会の大多数が賛成するのが望ましい。
 自衛隊が実効性のある活動を行うには、「集団的自衛権は行使できない」とする政府解釈も当然、見直さなければならない。

2009年1月6日火曜日

国政遂行の枠組みを作れ 予算を早期に成立させよ

世界同時不況の大波が押し寄せている。政治の指導力が、今ほど必要とされている時はない。
 衆院議員の任期は、今年9月10日で切れる。秋までには、確実に総選挙が行われる。
 政策を迅速かつ強力に推進できる日本政治の枠組みを、どう構築していくのか。政党も、個々の政治家も、責任の重さを噛(か)みしめ、熟慮して行動すべき時である。
 麻生首相は年頭の記者会見で、「急ぐべきは景気対策。予算と関連法案を早急に成立させることが重要で、それまで衆院解散を考えることはない」と強調した。
 小沢民主党代表は「首相の意図を超え、『主権者の意思を問え』という声は大きくなる」と述べ、早期解散を要求している。
 「松の内」の5日に召集された通常国会は、衆院解散含みの緊迫した国会になるだろう。
 政府・与党が、これほど開会を急いだのは、急速な景気の悪化や雇用問題の深刻化に直面し、2008年度第2次補正予算案と09年度予算案を早期に成立させる必要に迫られているからだ。
 麻生内閣は支持率が急落し、渡辺喜美元行政改革相が自民党離党の動きを見せている。この国会を切り抜けられるかどうかが、政権の命運を左右する。
 与党は、定額給付金などを盛り込んだ第2次補正予算案と関連法案について、1月中旬に衆院を通過させる日程を描いている。
 しかし、民主党は、定額給付金の関連部分を削除する修正案を衆院に提出する方針を決めた。参院でも徹底審議を求める構えで、早期成立の目算は立っていない。
 定額給付金は、総額約2兆円もの巨費を投じながら、経済効果はあまり期待できない。
 だが、民主党も、審議をいたずらに引き延ばせば、「生活が第一」という党の選挙スローガンと矛盾してしまうだろう。
 国会審議が難航し、予算の成立が遅れると、景気の足をさらに引っ張る。与野党は、政局次元の争いを避け、予算の早期成立に向け協力すべきだ。
 ◆将来構想を競え
 衆院選は、自民、民主の2大政党が、政権の座をかけてぶつかり合う選挙になる。
 自民党は、政権を維持する余力が残っているのか。民主党は、責任を持って政権を担えるのか。これを、有権者から厳しく吟味されることになる。
 同時に問われるのが、政権を取って何をなすか、である。一体、日本をどんな国にするのか。各党は、国造りの将来構想を具体的に提示しなければならない。
 少子高齢化で人口減少が進む日本にあって、経済、社会の活力をどう維持していくか。安心できる年金、医療、介護などの社会保障制度をいかに再構築するか。
 国際社会の安定に、日本はどんな役割を果たし、日本の安全をどう守っていくのか。
 与党の定額給付金や民主党の子ども手当などのバラマキ的な政策を競い合うばかりでは、有権者の心をとらえることはできまい。
 麻生首相が、政府の税制抜本改革の「中期プログラム」に、2011年度からの消費税率引き上げを明記したのは、政権政党としての責任感からだろう。
 民主党は、最低保障年金の創設や農家への戸別所得補償など07年夏の参院選以来の公約を中心に、総選挙に臨む方針だ。
 だが、これらの公約を実現するには、20・5兆円もの財源が必要だ。消費税率を引き上げず、行財政改革で本当に捻出(ねんしゅつ)できるのか。財源を明確に示すべきだ。
 今国会で、各党は、活発に論戦を展開し、総選挙の争点を明確にしてもらいたい。
 有権者は、衆参ねじれの下で迅速な意思決定ができない政治の現状に、いら立ちを強めている。
 ◆政界再編は不可避か
 総選挙で自民、公明の与党が衆院の過半数を確保し、政権を維持しても、衆参のねじれは残る。
 加えて、与党は衆院での再可決に必要な「3分の2以上」の議席を失うのは必至だ。となると、参院で野党が反対すれば、国としての意思決定ができない異常な事態に陥ってしまう。
 民主党など野党が、総選挙で過半数を獲得すれば、ねじれは一応、解消する。
 だが、民主党も単独で衆参の過半数を確保することは難しい。政策に違いがある社民党などの協力を得る必要に迫られる。
 自民、民主のいずれが政権をとろうとも、国政を遅滞なく遂行する枠組みが必要だ。衆参両院で過半数を押さえるために、新たな組み合わせの連立政権や政界再編が避けられないのではないか。

2009年1月5日月曜日

「トヨタショック」克服の道は 不況のツナミに襲われた日本

少し前まで薄日が差していた空に、あっという間に真っ黒な暗雲がたれ込め、横なぐりの雨と大波が荒れ狂う……。
 2009年の日本経済は、激しい時化(しけ)の海への船出となった。
 「100年に1度」とも言われる嵐の海をどのように乗り越え、「経済再生」の港に到着するか。しっかりとした航海計画を立てねばならない。
 まずは、日本経済の弱点を探り、対策を練る必要がある。
 第一に、成長を引っ張る「外需」と「内需」という、二つのエンジンのバランスが悪い。
 日本は、原材料を輸入して製品に仕上げ、それを海外に売る「加工貿易」で、戦後の高度成長を実現した。このため、今も外需への依存度が高く、それも欧米の先進国に偏りがちだ。
 工場の海外展開など工夫もしたが、海外に販路を求める構造に大きな変化は見られない。
 主力の欧米市場で金融危機が拡大し、外需のエンジンが急激にスローダウンしてしまった。
 前年度に2兆円を超える営業利益を誇ったトヨタ自動車は今年度、一転して1500億円の赤字に落ち込む見通しだ。
 「トヨタショック」は、日本経済を引っ張ってきた輸出産業が、ツナミのような世界同時不況にのみ込まれ、かつてない苦境にあえいでいる象徴といえる。
 ◆新たな市場の開拓を
 中国やインドをはじめとしたアジアの新興市場も、高成長にかげりが出てきた。さらに幅広く新規市場を求め、外需の地域バランスを取る必要がある。
 ただ、高性能で価格の高い日本製品を、途上国で大量に売るのは難しい。生産技術などの「知恵」を供与し、その成果を配当などの形で受け取るなど、新たな事業モデルも育てたい。
 外需依存の結果、為替相場の影響を受けやすいことも弱みとなっている。1ドル=90円台前後まで円高が進み、輸出産業の利益は大幅に圧縮された。
 一方で、円の価値が高まれば、優良な海外企業の買収など経営戦略の幅は広がる。円高をピンチと考えるだけでなく、メリットを活用する視点もあっていい。
 中長期的には、日本の針路の先にある少子高齢化と人口減社会の到来という潮流も、航海を一段と難しくしている。
 ◆デフレの深刻化防げ
 内需主導への転換が叫ばれて久しいが、長い目で見れば、国内の経済規模は縮小の方向にある。
 こうした中で、内需を活性化するカギは、約1500兆円という、世界的にも高水準な貯蓄が握っている。タンスなどに眠る巨額の資金を社会基盤投資などに活用すれば、内需拡大と将来への備えを同時に実現できよう。
 政府は、08年度の実質国内総生産(GDP)が7年ぶりのマイナス成長になると見込む。
 09年度の政府経済見通しは「ゼロ成長」としたが、マイナスだけは回避したいという「努力目標」の意味合いが強い。民間は2年連続でマイナス成長の予想が大勢だ。消費者物価も09年度は下落する見通しで、日本は「デフレ」に逆戻りする。
 融資が絞られ、黒字の会社も資金繰り難で倒産している。金融収縮によるデフレの悪化は10年前に経験済みである。政策で先手を打って、深刻化を防がねばならない。
 政府は、2回の補正予算と来年度予算で総額75兆円規模の景気対策を実施する。日銀も政策金利を「ほぼゼロ」に下げた。
 しかし、これで十分とは限らない。不況で税収が減り、財政は一段と危機的になったが、景気下支えに必要な財政出動をためらう時ではない。
 経済を立て直さないと、安定した社会保障財源を確保するための、消費税率引き上げへの道筋も見えてこない。
 ただし、財政投入が単なる「ばらまき」では効果が乏しい。
 まず必要なのは、失業対策の充実など景気悪化の痛みを和らげる措置だ。救急医療など、社会保障予算削減の弊害が出てきたところへの手当ても急ぎたい。
 公共事業も、耐震化など国民の安全や社会資本の質向上につながる分野に絞るべきだ。
 昨年末にかけ、自動車など大手企業の減産が加速した。このあおりを受け、年の瀬に「職」と「住」を同時に失い、ホームレスになった人も少なくない。
 ところが、与野党はバラバラに雇用対策を出して、実現を越年させてしまった。
 「経済最優先」をともに掲げるのなら、与野党は政策実現のスピードアップで協力すべきだ。

2009年1月4日日曜日

国際秩序安定をどう図るか 米新政権が背負う重い課題

世界全体の景気が急速に冷え込む中、「チェンジ(変化、変革)」を掲げるバラク・オバマ氏が20日、米国新大統領に就任する。
 最優先の課題は米国経済の再生だ。イラクとアフガニスタンの二つの戦争、核拡散防止、中東和平問題などの難題も待ち構えている。
 オバマ次期政権が、米国主導の世界秩序の立て直しに向け、いかなる取り組みを見せるのか。その政策が、2009年の世界の行方を左右することになる。
 8年間続いたブッシュ政権のもと、イラクの混迷や金融危機で、米国の威信は大きく傷ついた。「ベルリンの壁」とソ連が崩壊したあと、到来したかに見えていた米国の一極支配体制は、足元から揺らいでいる。
 大国復活を目指すロシア、経済力と軍事力の増大を背景に存在感を強める中国、地域の大国として大きな潜在力を持ったインド、ブラジルなど、新たなプレーヤーが台頭している。
 金融危機への対応では、G8(主要8か国)に中国やインド、南アフリカ、韓国などを加えたG20が、また地球温暖化対策では、主要排出国16か国会合が、新たな枠組みとして定着してきた。
 しかし、各国とも昨年来の金融危機と景気後退で、苦境の中にある。このため、先進国と新興国との利害対立も深まっており、懸案の合意形成を難しくしている。
 オバマ次期大統領は、米国のリーダーシップを再生するため、世界に比類のない軍事力、経済力、外交力など米国が有するパワーを総動員し、重大かつ喫緊の課題に取り組む、と宣言している。
 実際、世界をとりまとめ、安定と繁栄へ導いていく能力を有する責任ある大国は、米国以外にはあるまい。
 オバマ氏には、その言葉の通り、諸政策を具体化し、果敢に遂行していく責務があろう。
 現在、世界情勢は急激に変化し、流動化している。
 ◆中国もロシアも難局
 軍事的な膨張を続ける中国は、昨年末、ソマリア沖の海賊対策で軍艦を派遣し、国際責任を果たす意思を鮮明にした。外洋展開能力を誇示する狙いもあろう。
 だが、国内では、社会不安が増大しつつある。建国60年の今年は、チベット動乱から50年、民主化運動を弾圧した天安門事件から20年の節目でもある。
 北京五輪成功直後の米国発金融危機に伴う景気減速で、生活への不満は高まっている。格差是正を要求する大衆行動が広がる恐れが指摘されている。
 ロシアも、好調だった経済が、原油価格の暴落で暗転した。外貨準備の取り崩しを余儀なくされるなど、資源偏重の経済構造の脆弱(ぜいじゃく)性を露呈した。
 一方で、欧米の東方拡大路線に対する強烈な対抗意識は変わるところがない。
 中露には、国連安全保障理事会の常任理事国の立場から、オバマ次期米政権と協力体制を築き、世界の安定のために、責任を持って行動してもらう必要がある。
 ◆テロとの戦いは続く
 「テロとの戦い」も、引き続き国際社会の重大な課題だ。
 オバマ次期大統領は、テロとの戦いの最前線は、イラクではなく、アフガニスタンだとして、イラクから米軍を撤退させ、アフガンへの増派を進める方針だ。
 米軍を早期に撤退させつつ、イラクの安定を確保できるのかどうか。宗派対立の激化で内戦に陥らないようにするには、復興支援を強化していくことが重要だ。
 アフガンでは、米国から増派要請を受けている英独仏など北大西洋条約機構(NATO)メンバー国は、これにどこまで積極的に応じるのか。パキスタン領内にあるテロ集団の拠点を、パキスタン政府の協力で壊滅できるか、という難題もある。
 核兵器保有国であるパキスタンとインドの根深い対立が、昨年、両国で相次いだ無差別テロを契機に、再燃しようとしているのも懸念材料だ。
 北朝鮮の核廃棄や、イランの核開発の阻止も、焦眉(しょうび)の急だ。
 オバマ氏は、核廃絶を目標に掲げ、専制的な独裁政権とも「無条件で対話する」外交戦略に力点を置いている。だが、経済力や軍事力のテコなしに、核交渉で成果をあげられるか、疑問も残る。
 健康不安が伝えられる金正日総書記の後継問題など、北朝鮮情勢の不透明感が強まっている。
 核廃棄や拉致問題の解決を早急に図らなければならない日本は、米国と緊密に連携しつつ、対北朝鮮交渉ではより能動的な対応が求められる。

2009年1月3日土曜日

カギ握る米国経済の再生 深刻な世界同時不況の中で

米国発の金融危機の直撃を受けた世界経済は、急坂を転げ落ちるように悪化している。
 2009年も、厳しい試練の時が続くのは避けられまい。
 昨年は米国、欧州、日本の先進国が景気後退局面に入り、中国、インドなど新興4か国の景気も急減速した。
 国際通貨基金(IMF)の予想では、今年は景気が一段と落ち込み、世界全体で実質2%程度の成長にとどまる。日米欧がそろってマイナス成長に落ち込むのは戦後初めてだ。中国も2年連続で1ケタ成長となる見通しである。
 先進国経済が低迷しても、新興国の高成長が補うという「デカップリング(非連動)論」は、もろくも崩れた。牽引(けんいん)役が不在で、世界経済は同時不況から抜け出す道筋が見えない。
 世界経済は、いつになったら回復するのか。楽観的な見方でも2010年半ば以降とされる。
 カギを握るのは、米国経済だ。米国では、住宅市況の悪化が続き、失業が急増している。国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費も冷え込んだままだ。
 こうした状況を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年12月末、ゼロ金利政策を導入した。長期国債などを買い入れる量的緩和策にも踏み込んだ。
 ◆米の大規模な財政出動
 異例の危機対応を取ることで、景気悪化を食い止め、デフレを阻止する決意を示した。しかし、FRBの金融政策だけでは不十分だ。連邦政府の財政政策と連携した両面作戦が重要になる。
 今月20日に就任するオバマ次期大統領は、道路や橋の補修などの公共投資と、減税を柱にした8000億ドル(約72兆円)超の大型の景気対策を実施する考えだ。雇用対策では、「2年間で300万人の雇用創出」を目標に掲げる。
 次期大統領は、ルーズベルト大統領が大恐慌時に実施したニューディール政策を意識しているとされる。米国経済を再生させることができるか、就任早々、その手腕が問われることになろう。
 次期大統領が最初に直面するのは、米自動車大手3社(ビッグスリー)の再建問題だ。
 ブッシュ大統領は、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーへの巨額のつなぎ融資を決め、当面の経営破綻(はたん)を回避した。
 両社は3月末までにリストラ策を提出するが、それが不十分であれば、連邦破産法による破綻処理の可能性がでてくる。
 実際に破綻すれば、世界の金融市場や景気に及ぼす影響は甚大だ。次期大統領は極めて難しい判断を迫られよう。
 自動車業界への支援を含む金融危機対策と、大型の景気対策により、2009年度の米財政赤字は1兆ドル超に膨らむ見通しだ。これも米国経済に重しとなって、のしかかることになる。
 世界経済を立て直すには、主要国が米国と連携を強め、迅速に行動することが肝要だ。
 すでに欧州、日本や、中国などの新興国が、財政・金融政策の発動で足並みをそろえつつある。昨秋に開かれた世界20か国・地域(G20)の金融サミットの合意に沿ったものだ。
 4月に英国で開催される第2回金融サミットでは、国際的に活動する金融機関の規制強化など、より具体的な成果が求められる。
 ドル基軸体制の在り方も焦点の一つになろう。米国の財政赤字の急拡大で、ドルの信認が揺らぐとの見方が強まっているからだ。
 しかし、ドルに代わる通貨が見当たらないのが現実だ。誕生から10年を迎えた欧州単一通貨ユーロも存在感を増したが、ドルほどの力はない。サミットでは、ドルをいかに支えるかが焦点になるのではないか。
 ◆保護主義の台頭を防げ
 世界経済が動揺するなか、保護貿易主義の高まりが、要警戒段階に入ってきた。
 米国政府によるビッグスリー救済に対抗するかのように、ロシアが自動車輸入関税を引き上げ、欧州や中国なども自動車業界の支援に乗り出した。このままでは、自国産業の保護合戦に発展しかねないとの懸念もある。
 こうした時こそ必要なのが自由貿易の促進だ。世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は、日米欧と途上国の対立が解けず、目標だった「昨年末の大枠合意」を達成することができなかった。
 大恐慌は、世界各国が保護主義に走ったために、事態が深刻化した苦い教訓がある。
 各国は、新ラウンドの早期合意を目指すべきだ。日本も、率先して責任を果たさねばならない。

2009年1月1日木曜日

危機に欠かせぬ機動的対応 政治の態勢立て直しを

◆新自由主義の崩落
 新自由主義・市場原理主義の象徴だった米国型金融ビジネスモデルの崩落が、世界を揺るがせている。
 急激な信用収縮は、実体経済にも打撃を与え、世界は同時不況の様相を深めつつある。
 「100年に1度の危機」とさえ言われ、1929年に始まった「世界大恐慌」が想起されたりもしている。
 だが、もちろん、現在の世界は、80年前とは大きく異なる。
 先進諸国は、歴史的教訓を踏まえて、さまざまな政策手法を積み重ねてきた。危機発生後、直ちに協調利下げを実施したのを始め、その後もさらなる金利の引き下げや、通貨供給量を増やすための量的緩和および公的資金の注入、財政出動などを進めている。
 日本は世界第2位の外貨準備から国際通貨基金(IMF)に10兆円を拠出し、新興・途上国支援に充てる方針だ。外貨準備高世界一の中国などにも協調を促して、IMFの機能拡充への外交努力を強めるべきだろう。
 ただし、足元の日本経済自体も、揺らいでいる。
 世界金融危機の発生当初は、日本の傷は世界で最も浅いとの、楽観論、強気論もあった。
 ところが、戦後最長とされる景気拡大を牽引(けんいん)してきた外需・輸出が、にわかに変調を来した。
 「トヨタショック」といわれた自動車業界を始め、輸出関連業界の急速な業績悪化を引き金に、雇用、企業倒産、消費動向など、様々な経済指標が、日々、急速に悪化している。
 ◆内需拡大に知恵絞れ
 世界経済の混迷は、数年間は続くという見方が多い。早急に、新たな商品の開発、新市場開拓などによる輸出戦略の立て直しに取り組まなくてはならない。
 景気の底割れを防ぐため、内需拡大を急ぐ必要がある。ただ、少子高齢化、人口減少が進行する中で、従来通りの公共事業を中心とする手法では限界がある。財政事情も厳しい。
 日本の強みは、減少したとはいえ、まだ1467兆円もの個人金融資産があることだ。
 このうち、150兆円から170兆円が平均的な個人のライフサイクルから見て「余剰貯蓄」といえるとの、総合研究開発機構(NIRA)による試算もある。
 また日銀は、いわゆるタンス預金だけでも30兆円、投資や利殖より安全を志向する当座・普通預貯金としてほぼ眠っている資金が、120兆円あると見ている。
 こうした“眠れる資金”を掘り起こして活用することは、重要な政策課題だ。
 内需拡大に向け、社会保障や、雇用対策などを中心とする景気振興に使途を限定すれば、国民も納得するに違いない。
 できれば超党派で知恵を絞るべき課題である。
 ◆日米同盟の維持が重要
 世界経済が混迷する中でも、日本の国際社会への関与、協力の在り方は、引き続き、見直しを迫られよう。
 当面は、対外関与の軸足をアフガニスタンに置くとするオバマ米次期政権が、日本にもアフガン本土の治安回復活動への自衛隊参加を求めてきた場合にどう応えるか、という問題がある。
 これに対し、過去の惰性で、憲法問題など国内政治事情を名目に協力を断れば、米国にとっての日米同盟の優先順位が低下していくことになるだろう。
 日本は、たとえば、北朝鮮の核開発問題にしても、日米同盟関係抜きに、単独で解決することはできない。
 急速に軍備増強を進める中国との関係を考える場合にも、緊密な日米同盟の継続が前提となる。だが、米国にとっても、軍事大国化、経済大国化する中国との関係は、ますます重要になっている。
 国連が各国に求めているソマリア沖の海賊対策に中国も軍艦を派遣するのに、日本関係船舶が多数通航するにもかかわらず明確な方針を打ち出せないでいる日本を、米国はどう見るか。
 米国にとっての日米同盟の優先度を、高い水準に維持するためには、日本が信頼できる同盟国だと思わせるだけの能動的な外交・安全保障戦略で応えていかなくてはならない。
 しかし、現実には、その責任を担うはずの政治は、事実上、“空白”状態に近い。
 衆参ねじれ国会の下、麻生政権は、民主党の政局至上主義的な駆け引きに揺さぶられ、緊要な内外政策の決定・実行ができなくなっている。
 景気対策に必要な第2次補正予算案も、関連法案の成立がいつになるか不明で、早急には実施できそうにない。
 まして、2009年度予算案をいつ実行に移せるようになるかは、見通しがつかない状況だ。
 与野党が国内政局次元の争いに明け暮れていては、日本は国際競争から落伍(らくご)しかねない。
 ◆「党益より国益」を
 9月の衆院議員任期切れまでには確実に総選挙があるが、党益より国益、政局より政策を優先し、できるだけ早く“政治空白”を解消して、政治の機動性を回復しなくてはならない。
 しかし、次回総選挙では、自民党、民主党とも、単独過半数を獲得するのは難しいとみられている。すでに、与野党を通じ、そうした選挙結果を想定した政界再編、連立絡みの動きもある。
 結果として、それがいかなる形の政権になるにせよ、肝要なのは、世界の先行きについての中長期的展望を踏まえた政策を、迅速かつ強力に推進できる政治態勢であることだ。
 政治家も、国民も、世界と日本が険しい難所に差し掛かっているのだということを、常に心しておきたい。

時事問題

注目の投稿

人手不足への対応は急務だ

 日銀が発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業、中堅、中小企業をあわせた全規模全産業の業況判断指数(DI)が26年ぶりの高水準になった。景気回復は6年目に入り、中小企業にも裾野が広がってきたが、先行きに懸念材料もある。深刻な人手不足だ。  従業員などの...

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