2013年8月31日土曜日

超ミネラル水が地球を救う


現代文明はミネラル欠乏により崩壊する!!!
超ミネラルが地球を救う
がん・糖尿病・アトピーなどの現代病・成人病のほとんどはミネラル欠乏が原因であることがしだいに明らかになってきました。もしこれが真実であるならば、これは現代医学を根底から覆す、まさに 「ミネラル革命」 であります


一  超ミネラルが人類と地球を救う
更新日時:
H21年12月23日(水)

 日本人の三人に一人ががんで亡くなり、多くの人がアトピーや花粉症、糖尿病などの現代病に苦しむようになってきました。
残念ながら、現代医学は、それらの原因をまだ解明していませんし、近い将来解明できるという見通しもありません。
結論を言うならば、その最大の原因は農薬、化学肥料を多投する現代農業にあります。かつて豊かだった土壌から小動物、微生物が姿を消し、作物はミネラルを吸収できなくなりました。
植物は微生物によってミネラル成分をコロイド状にしてもらい吸収できるようになるからです。
又、窒素、燐酸、カリを主体とする化学肥料には植物が必要とする微量ミネラルが供給されないのです。現在、アメリカでは植物が必要とするミネラルは16種といわれています。
こうして現在の農作物はほとんどがミネラル不足になってしまったのです。

 アメリカの西部開拓時代、定住して10年もすると、人や家畜、作物の健康状態が悪くなり、そこで移動すると作物の生育や健康が改善された経験により、しだいに人々は西へ西へと定住と移動を繰り返していったのです。その原因には、定住してしばらくするとミネラルを吸収しつくしたため、その土地のミネラル不足があったのは間違いないでしょう。
又、文明西移動説という見方があります。
たしかに、インダス文明に始まり、シュメール、メソポタミア、エジプト、と西へとしだいに移動して来ています。
近代では、フランスからイギリスへとそして現在はアメリカへと移り、やがて日本をへて近未来は、世界の覇権は中国へと移行すると見ることもできます。
どうして、西へ西へと移動するのかといえば、これはまったくの憶測にすぎませんが、地球の自転と偏西風が関係しているのではないでしょうか。
ミネラル吸収に関係する私たちには見えない何かが、たとえば 気 とかエネルギーの元のようなものがゆっくりと、地球の自転運動と常に吹いている西風と反対方向に移動しているのでないかとも考えられます、ちょうど電気の流れと反対方向に電子が流れているように。
そして、過去のどの文明もミネラルの重要性に気づくことなく、次第に衰退し、滅んでいったのではないでしょうか。

 ミネラルの欠乏は、体の健康ばかりではなく、精神と脳に多大な影響をもたらしていることがしだいに分かってきております。
 古代ローマ帝国の暴君ネロが、幼少の頃とは性格がまるっきり変わってしまったのは、当時のワインのフタに使われていた鉛による鉛中毒・精神異常であったといわれています。
 アメリカのある刑務所での毛髪検査などによる調査研究では、犯罪者のすべてにミネラル欠乏がみとめられたとあります。
又、ニューヨーク市の小学校の児童100万人を対象に4年に渡り、食事に関する大がかりな調査が行われました。その結果では
、ハンバーガー、フライドポテト、ポテトチップス、コカコーラ、チョコレート、脂肪の多い肉類、砂糖類などを多く摂っている児童は、明らかに成績が良くない結果となっていたのです。これらのジャンクフードと呼ばれる食品には明らかにミネラルが不足しています。

 最近、問題になってきている不登校の児童、生徒、そして多動性の子どもたち、すぐ切れる若者たち、これらの症候はミネラル欠乏によるものと思えます。
これらの研究は始まったばかりで、これからしだいに各方面から明らかになってくることでしょう。

 ミネラルの欠乏が、心身の健康を損ね、又、能力の減退をまねき、病気の蔓延、犯罪の増加、紛争の多発に至り、戦争が起こり、かくも偉大な文明も次第に衰退していったのではないでしょうか。
歴史は繰り返される とはよくいわれますが、メソポタミヤやエジプトなど過去の幾多の古代文明も同じ原因により滅亡を繰り替えしていたのではないかと思われます。
今後、なんらかの方法でミネラル欠乏を解決しなければ、現代文明の破局が早晩やってくるのではないでしょうか。
 20世紀はビタミンの世紀でした
 21世紀はミネラルの世紀ともいわれています
 地球の運命がミネラルの摂取にかかっているのではないでしょうか!!!


1 現代文明はすでにミネラルバランスを崩壊させてしまった

 
 年間30万人以上の日本人がガンで亡くなり、糖尿病患者は予備軍をいれると2000万人にもなります。また、高血圧症は3900万人、高脂血症は2200万人と患者は益々増えています。このようながん、糖尿病、高血圧症、アトピーなどの生活習慣病・現代病は昭和30年代から急激に増加をしてきました。これはちょうど経済が高度経済成長期に成り始めたころでした。
 日本のいたるところで産業が立ち上がり、大量の労働者が工場などで求められてきました。都会の労働者だけでは足りなくなり農村からも人を集めるようになってきたのです。
 農村では牛・馬の時代は去り、耕運機からトラクターと変わり、大型機械がどんどんと入ってきました。そしてなによりも堆肥を作る手間をかけない化学肥料と除草剤・農薬が大量に使われだしたのです。
 農作業は一挙に軽減されました。そして作物の収穫量は大きく伸びました。この経済的有利な現代農業は大手を振って瞬く間に日本中に広がり、世界の先進国はこの現代農業一色になりました。
 この農業ルネッサンスとも言える革新により、人類は飢餓の危機を脱したかに思えたのでしたが、さにあらず、いまだにアジア・アフリカ・南米諸国では食糧問題は解決していません。そればかりか、農薬・化学肥料農業が広まるのと平衡して序序に 先進諸国特有の病気が出現しだしたのです。それがガン、糖尿病、アトピー性皮膚炎などの現代病であります。
 
 当然のことながら、現代病の根本原因がミネラル不足である という認識を、西洋医学のお医者様方はもっていません。それは現在の医学教育過程に栄養学は必須となっていないことも理由のひとつです。ほとんどのお医者様は栄養学・ミネラルについて無知と言ってよいのです。

 世界中の、牛や羊などの家畜を育てている畜産業に携わっている人びとは、餌にビタミンやミネラルを投与して家畜の病気を防ぐことは常識であります。ところがなぜか人間の食事にはそのようなことをしていません。これはどうしてなのでしょうか。

 植物も動物も人間にとってもミネラルが必須であることはまったく変わりありません。

 アメリカの農務省は1970年に
「アメリカ人のすべての年齢層において、99%の人はミネラル欠乏症である}
と警告しています。

 アメリカ上院文書264は
「現在、多くの土地で栽培されている果物・野菜・穀類などの作物には、ある一定のミネラルは含まれておらず、そうした作物をいくらたくさん食べたとしても、われわれはその栄養素をとることはできない。あるものは食べ物としての価値はないほどである」

 日本食品標準成分表によりますと、
ホウレンソウの鉄分は1950年と1994年とでは三分の一に減っているそうです。その他ほとんどの作物において、ミネラルは減少しております。

 アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書(マクガバンレポート)という5千ページにおよぶ報告書が1977年に出されました。このなかからいくつか紹介します。
 
現在のわれわれの食事は不自然で、まったくひどいものである。この食事が、がん、心臓病、糖尿病などの現代病を生んでいる。現代の食事はわれわれが気づかないうちに、かつてとまったく違ったものになってしまっている。
 
 現代の医師は栄養素の知識をまったく持っていない。このために間違った食事を与えられ、病気が治らなかったり、治りが遅れたりするケースが多い。
 
 現代病は、現代医学では治らない。これが現代医学の最大の弱点である。
 
 現代の医学は薬に偏った、栄養軽視の医学である。病気を治す根本は薬ではなく、体の持っている本来の修復能力である。それを高めるに最も大切なのは食べ物に含まれている栄養素であり、栄養の知識を持った医学に急いで変える必要がある。
                     

「すべての病気を追及すると、すべてがミネラル欠乏にたどりつく。ミネラルは単体では有効な働きができない。
人体の健康維持には、調和のとれた多種類のミネラル摂取が重要である」 

ノーベル化学賞・ノーベル平和賞受賞者・ライナス・ポーリング博士(米国)

 「土壌は全人類の生命の基礎であり、健康な世界を築くための唯一の希望である。---」

 土壌のミネラル欠乏は作物を通してそのまま人間の体のミネラル欠乏となっていますが、このミネラル欠乏は今や日本やアメリカだけではなく全世界的傾向であります。

 過去100年間における農地のミネラル枯渇の度合い(1992年アースサミットレポート)によりますと
 
 北米・・・・・・・・85%減
 
 南米・・・・・・・・76%減
 
 アジア・・・・・・・76%減
 
 ヨーロッパ・・・・72%減
 
 アフリカ・・・・・・74%減
 
 オーストラリア・55%減
であります。 








二   野島博士の著書
 「現代病・生活習慣病はミネラル不足が原因だった」
より
 
 著者 医師・ 医学博士 野島尚武≪太陽出版≫より抜粋して紹介します
著者略歴
長崎大学医学部卒、
鹿児島大学医学部助教授
海外調査研究・アメリカ留学
千葉県保険所長
現在、野島クリニック院長
超ミネラル療法の日本の第一人者
 
 昔から、偏食が病気の元になると言われ、偏食をなくして病気を治すという「衣食同源」の慣用句を使ってきました。この言葉が死語になるにつれ現代病が広がってきました。
 科学者と行政は、微量元素というミネラルの欠乏が、ガン、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、アトピー、花粉症などの一番の原因であることに気がつきませんでした。まさに現代人の多くが、健康な身体を維持するために必要なミネラルが欠乏して、栄養失調を起こしているのです。
 ミネラル不足が現代病蔓延の主因なんだと気づかず、「超ミネラル治療」に反対する科学者や医者には、裁判を起こしたいくらいの憤りを禁じえません。
 これらの科学者や医者が、なぜいとも簡単に、単純な落とし穴に落ちてしまったかといえば、最近までは微量元素の量が正しく測定できなかったからです。存在量そのものも計れないほど少ないために、科学者は無視してきたのです。
 微量元素は、生きている動物や植物には自然に含まれているものだと考え、偶然入ったに過ぎないと思い込んでいたのです。
 ほかの分野では新しい発見が次々となされている時代、ノーベル賞の栄誉は早い物勝ちですから、その波に乗れないような小さなミネラル(その内の微量元素)の研究など、誰もかえりみなかったのです。
 微量元素は、遺伝子の発現に無条件に必要です。親亀(遺伝子)が健在でも、小亀(微量元素)がこけると、孫亀(タンパク)はすぐこけるのです。代謝異常が病気のはしりなのです。

 いつの日か、科学者は現代病の原因が近代農業にあったと認め、政府は肥料会社へ行政指導をおこなう日がくるでしょう。それまでの間、国民には耐える生活がつづきます。

 「超ミネラル水」を飲用すれば、微量元素をほぼ補充することができ、現代病からも多くの人が開放されるのですが、社会的にはなかなか認知されるまでに至っていません。
 私自身も、超ミネラルにかかわったこの11年間を振り返ってみると、最初はどの病気にどの程度の量が有効なのか分からず、暗中模索の日々でした。それでも、ガンに効く、やけどに良いと確信を深めていき、さらにそのことを遥かに超えて、病気という病気すべての治療に有効であると気づくのに、それほど時間はかかりませんでした。
 でもそこでまた問題にぶつかりました。科学が発展していない昔なら何の問題もなくとおる話ですが、一つの薬が万病に効くということは現代医学では問題なのです。
 薬理学の分野も十分に進歩している現代では、万病に効く富山の万金丹のような薬はあり得ないというのです。
 ガン、糖尿病、アトピーが同じ薬で治るなどということは、科学に反するということです。
 たかが水ごときで、世界の医学者をさておいて、ガンや糖尿病、アトピーを治すのですから、最初は確信を持って否定されました。これもやむを得ないことだと思っていますが、間もなくこれも終わるでしょう。
 ICPmsによって、水道水に含まれる極微量のウランまでも、微量元素を測定できるようになりました。
 私と微量元素の、長くつづいた苦難の道も終わり、遺伝子が脚光を浴びて微量元素が主役になる日も間近かです。

ミネラル欠乏症という21世紀の病気

 「超ミネラル水」とはなにか
 私はこれまで内科医として、数千人に及ぶガンの患者さんたちを診察してきました。当然治療をおこなう私たち医師は、考えられる限りの手段を使って、「ガン」という大敵に挑むわけです。
 しかし、決定的な治療法がないために、改善させることはできても、完治させることは非常に困難です。
 医師としてこの現状を甘受してよいものだろうか・・・・・。
 私はこの疑問を抱かずにはいられませんでした。
 治療現場で、新薬の開発をただ待っていることに絶えられず、たとえ健康食品であっても、治療効果のあるものを探しつづけてきました。

 今から十数年前になりますが、抗がん効果のある成分を研究していたところ、これまでの新薬開発では、植物や動物由来の有機成分ばかりが研究の対象とされ、金属、塩類、水などの無機成分が無視されていたことに気づきました。無機成分というと、人体に欠かせないものとして、まず「ミネラル」が考えられます。
 ひと口にミネラルといっても、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどの一般的に必須栄養素であるといわれているものがあります。そしてこれ以外にも、ごく微量しか体内で利用されないもの、有用であることが解明されてきたミネラルがあります。ここに注目することにしたのです。
 そのミネラルにも、さまざまな種類があります。タングステン、チタン、バナジウムなどは、水銀、カドニウムなどの有害なミネラルと異なり、無害でありながら特殊な働きをもっているのです。
 ただし体内に取り込むためには、水溶性のミネラルでなければなりません。ひたすらミネラルを吸収しやすい形状に加工しているものを探しました。
 さまざまなものを見つけだしては取捨選択して、ようやくたどりついたのが天然の鉱石を溶解させ、含まれているミネラル分をイオン化した溶液でした。私はこの溶液を「超ミネラル水」と名づけたのです。
 この「超ミネラル水」がもたらした奇跡的な効果については後ほどふれます。

ミネラル不足が現代病を蔓延させた
 
 実は、本当に夢のような世界が、目の前に広がっています。信じられないかもしれませんが、微量元素「超ミネラル」で、ガン、糖尿病、心筋梗塞、アトピーが確実に治ってしまい、もう医者の出る幕はないという、うそのような時代が間近なのです。
 現代人を悩ましつづけてきたこれらの病気のほとんどは、ミネラルの不足によって引き起こされていたのです。 ここで私のいう「ミネラル」とは、普通のミネラルではなく、鉄、亜鉛、銅、マンガン、錫、ニッケル、コバルトなどの微量元素と総称されているミネラルのことです。
 平たくいえば、体内で遺伝子が正常に働くために必要なこれらのミネラルが、現代人、特に先進国の人たちに、大幅に不足していたのです。
 農薬や化学肥料などの使用を前提にした無機農法の農作物を食べ続けている私たちの体は、いわばミネラルの栄養失調になっているのです。
 農作物から自然に摂取されるはずのミネラルの量が、農作物そのものに少なくなって、私たちはミネラル不足になっていたのです。

現代病は克服できる
 
 原因さえはっきりすれば、ガンだってあたりまえに治せます。原因が分かり、予防が可能になれば、当然病気を少なくすることができます。交通事故や感染症の問題などが少しは残るにしても、現代人を悩ました大方の病気は、見事に消えていくことになります。
 近い将来、現代病は非常にまれな病気になってしまうと言ってよいでしょう。それこそ80歳以上の高齢になって、初めてかかる病気になるのではないかと思っています。

現代病はミネラルの栄養失調である
 
 現代病は、ミネラル欠乏農産物という近代農業がもたらした、欠陥商品のツケでしかなかったのです。
 平均寿命はたぶん100歳以上になるでしょう。
 簡単にはあの世へ行けなくなるのですから、100歳まで生きつづけることを前提に、世の中の構造も、基本的な考え方も変わらざるをえなくなるでしょう。
 
 ヨーロッパでもアメリカでも、そして日本でも、現代病がじわじわと蔓延してきました。その最大の原因が、微量元素ミネラルの欠乏であったのに、何と二番目の副次的要因だある発がん性物質や喫煙、運動不足や飽食などの不規則な生活習慣を、一番重要な原因と見誤った、ピントはづれの見立てをしてしまったのです。
 これでは、治る病気だって治りません。科学者はこの基本的なミスを見のがし、屋上屋を重ねるという、取り返しのつかない誤りを犯してしまったのです。
 その結果、ミネラルの欠乏という栄養失調が先進国に住む人たちに蔓延して、さらには発展途上国の国民にまで、被害を広げようとしています。

まもなく微量元素が時代の寵児になる 
 
 栄養学の世界では、有機農法と無機農法による生産物に含まれるミネラルの、すさまじいまでの違いが指摘され、農学者、医学者は、自ら微量元素を無視してきた償いをしなければならないでしょう。まさに、人類に現代病を大発生させた責任があるのですから。 
 微量元素を、遺伝子ミネラルとしてもっと重視していたら、死因の80%近くを占める現代病の発生を、未然に防げたのではないかと悔やまれてなりません。
 今からでも遅くはありません。微量元素を遺伝子ミネラルとして正しく位置づけし直し、鉄腕アトムのような新しい時代の寵児として、大切にしてほしいと願っています。
土壌が危ない
 
 農薬による土壌の汚染は、深刻な社会問題になっています。微生物の減少は、ミネラルの減少に直結します。
野菜が野菜でなくなった
 
 窒素とリン酸とカリを与えて、植物を形よく大量に生産することだけはできました。しかしそれは、栄養素もミネラルも不足したもので、野菜とは名ばかりのものとなっているのです。
 店頭に並べられている農産物は、いかにもきれいで美味しそうですが、炭水化物もタンパク質も、脂肪もビタミンも、ミネラルも不足した欠陥商品です。特に、微量元素のミネラルは、無いのと同じといってもよいほどの欠陥商品なのです。
 
 ミネラルを含んでいない野菜や果物をいくら食べても、体のためにならないばかりか、残留農薬によって病気にさせられてしまう危険性さえ含んでいます。
 

待たれる研究成果
 
 有機農法と無機農法で、微量元素ミネラルの含まれる量がどの程度違うのかは、これから農学者、栄養学者が調査すれば分かることです。野菜が美味しいかどうかについても、成分的にはミネラルの含有量の多いか少ないかで決まると結論がでるのも、時間の問題です。
美味しい野菜には、旨みの要素のバロメータであるグルタミン酸、イノシンなどの有機物の量が関係していることまでは、すでに分かっています。まもなく、旨みには、実はミネラルの量が関係しているのだと誰かが発表することとなるでしょう。そして昔の野菜と今の野菜を比べる研究者が、悲鳴をあげて発表することになるでしょう。
 有機農業が栄養的に正しい農法であると認知されれば、多少高くても購入する賢さを持っていると思うのですが、その啓発活動も不足しているようです。

医療費の大幅削減も夢ではない
 
 人体にミネラルが不足したらどうなるか。必要な栄養素が偏って摂取されたり、まったくあたえられなくなっていおるとしたれどうなるか。考えるまでもありません。ガンや糖尿病やアトピーなどの疾患に悩み苦しんでいる人がいかに多いか。これらのほとんどが、ミネラルの不足によってもたれされている病気なのです。
 まったくバカげた話です。現代病の原因はミネラルの栄養失調にあるのですから、農業のありかたを見直して、微量元素ミネラルを十分に含んだ野菜がでまわるようにしさえすれば、現代病は自然に消えていくのです。  健康保険組合の赤字も自然に消えていくでしょう。そうしさえすれば、国民健康保険における医療費の個人負担も、現在の三割から大幅に引き下げることだってできます。
 問題は国にあるのです。ピントはずれの免疫現象だけで説明しようとする科学者の意見を鵜呑みにして、本当の原因に気がつかないでいる国の姿勢こそ問題です。

ミネラル欠乏症がアレルギー疾患をもたらした。 
 
 アレルギー疾患などもミネラルの欠乏症なのです。農業問題として、農業手法の改革で解決しなければならないことに、早く気づいて欲しいのです。
 東京の雑踏に、化粧をしていない女性を見かけることがあります。アトピー性皮膚炎です。季節によっては、男女を問わずマスクをしている花粉症の患者がいます。
 この人たちは、自分のアレルギー体質を恨み、アレルゲンのダニとか、抗原性の食品のせいにしたり、あるいは花粉のせいにしていますが、攻める相手がちがいます。花粉やダニは二番目の原因で、本当の原因は、ここでも微量元素ミネラルの欠乏なのです。
 原因を正しく認識しないで、対症療法でいくら症状を抑えても、根本的な対処にはなりません。治らないのがあたりまえなのです。
 私は、超ミネラル水でこれらのアレルギー疾患を治していますが、やはり食事がまともでなければ、つまりミネラルを十分に含んだ食べ物を摂取しなければ、病気から開放されません。
 くり返しますが、現代病の原因が微量元素という遺伝子ミネラルの欠乏にあることは、いまや疑いの余地はありません。ミネラルが不足すると、ガンの遺伝子を多く持った人がガンになり、糖尿病の遺伝子を持っている人が糖尿病になるのです。同じようにアレルギー体質の人は、ダニや花粉に反応して、アトピーになったり、喘息になったり、花粉症になったりするわけです。

ミネラル不足が根本原因だった
 
 炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルを五大栄養素といいます。この中でミネラルだけは、他の栄養素のように体内で作り出すことができません。私たちは、食べ物や水を通して、ミネラルを摂取しなければならないのです。問題はその食べ物にありました。
 人も動物も、植物からミネラルをもらいます。植物は土壌からミネラルを吸収するのです。化学肥料と農薬によって破壊された土壌には、細かい岩石としてのミネラルは含まれていても、生物が使えるようなイオン化されたミネラルや有機ミネラルは、十分には含まれていないのです。
 含まれていても五十年前の半分以下(おそらくはそのまた半分以下)であるといわれるほどですから、私たちの体は、絶対的なミネラル不足、特に微量元素不足になっているのです。

ミネラルは自己治癒力を高める
 
 人体の生理作用に、明らかに必要な栄養素として、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの常量ミネラルと、鉄、亜鉛、コバルト、マンガンなどの微量元素と呼ばれるものの存在が知られています。
 ミネラルについては、科学的にまだ解明されていない部分が多くあり、漠然としたイメージで理解されていることが多いようですが、ミネラルの不足が人体に及ぼす影響の大きさは無視できません。
 ほとんどの生活習慣病に「超ミネラル」を活用すると、確かに大きな治療効果をあげることができるのは、歴然たる事実です。
 最近、ICPmsによって、非常にわずかの元素の質量も測定できるようになりました。微量元素の科学的な研究が可能になったのです。成果が期待されますが、ミネラルが現代病に関係していることに思いをおよぼさない多くの科学者たちは、その重要性に、まだ気づいていません。
 ミネラルを投入すると、ガン、糖尿病、アトピー性皮膚炎、脳梗塞の後遺症などの症状には、顕著な改善が見られます。もともとこれらの生活習慣病は、ミネラルの欠乏によって引き起こされたものですから、ミネラルを補給すれば、症状が改善されるのは、しごくとうぜんのことなのです。
 花粉症の治療に、「超ミネラル」を併用すると、ほとんど回復します。

二次的要因に振り回される現代医療
 
 今まで私たちは、大気汚染、水質の悪化、食品添加物、ダニなどの存在が、花粉症の原因であると疑ってきました。しかしこれらは、二次的な要因にすぎないのです。
 ガンや糖尿病の遺伝子が問題なのではなく、ミネラルが欠乏することで体内の微妙な代謝のバランスが崩れて、ガンや糖尿病の遺伝子が思いもよらないときに活動を始めて、病気になってしまうことが問題なのです。
 ミネラルはすべての代謝に直結していますから、ミネラルの欠乏はただちに病気に直結します。
 化学肥料や農薬によって土壌が汚染される無機農法以前の、ミネラルが豊富に含まれていた土で育った野菜を食べていた時代には、私たちはミネラルの存在を知らなくても何の問題もなかったのです。現在のスーパーなどで売っている無機野菜に、微量元素が壊滅的に少なくなってきたことから、問題にせざるを得なくなってきたのです。
 
 つい最近の科学技術庁の報告では、有機農法(戦後すぐのもの)のニンジン、ほうれん草の鉄分と、無機農法(現在のもの)での鉄分含有量の違いが比較されていますが、無機農法による無機野菜に含まれるミネラルは、有機栽培のものの七分の一から二十分の一と少ないことが判明しています。

ミネラルの不足を解消すれば病気は治る
 
 なんとなく体がだるい、肩が凝る、頭が重いといった経験は、日常的に誰にでもあることでしょう。大した病気でもないのに体調がすぐれない。医者に行くほどではないが、不快な日常症状がなかなか取れないといった「半病人」になっていないでしょうか。
 私たちは、自然に調和し、自然をうまく利用することで文明を育ててきました。しかしその過程で、近代の文明は、自然破壊という大きな過ちを犯しました。土壌を汚染して、空気や水を汚して、生態系のバランスを壊してしまったのです。そのツケが、食物を媒介にして、人体に及んでしまったのです。
 水道の水もまずくなりました。原因については先にふれたとうりです。汚染された水や空気や農作物をとおして、無数の有害物質が体内に蓄積されています。これらの有害物質が、弱っている酵素の働きをさらに阻害して、正常な細胞の成長と活動を妨げているのです。
そのために、結果的に発生したミネラル不足が、人体が自然に持っていた治癒力を奪って、おびただしい数の病人と半病人を作りつづけているのです。
 さらに、食生活の乱れと抗生物質の多用による免疫力の低下が、ストレスに対応できない「人という生物」を作っているのです。植物や水から、体内に取り込まれていたミネラルが減ったために、さまざまな病気にかかりやすくなりました。現に苦しんでいる人たちが大勢いるのですから、何らかのかたちで、人為的にミネラルの補給を考えなければならないのは、当然のことです。

バランスのとれたミネラル摂取が大切
 
 ミネラルの使用量について、一定の基準はありません。動物実験や臨床試験、治療経験などから使用量を割り出しています。それというのも、それぞれの生活習慣、年齢、性別、身体の特徴など、考慮すべき要素が多く、いちがいに決めるわけにはいかないからです。
ミネラルは、不足しているからといって、むやみに摂取すればいいというものではありません。
 一つのミネラルが過剰になると、他のミネラルの吸収を妨げ、新たなミネラル不足を生ずる「拮抗作用」をおこします。拮抗作用がおきると、ミネラルのバランスが崩れ、健康を維持する働きをしなくなりますから、注意が必要です。
 ミネラルは、相互の関連を保ちながら、生体を健康に保つ働きをするのです。私が使っている「超ミネラル」には、微量元素がバランスよく含まれているだけでなく、毒性のない超ミネラル(代用ミネラル)が豊富に含まれているという特徴があります。
 生理作用的にみれば、微量元素にしろ超ミネラルにしろ、ミネラルによる治療によって、正常な代謝機能を完全に回復するためには、ほぼ三ヶ月がかかります。
ミネラルは、バランスよく一定の期間のあいだ摂取すると、完璧な効果が期待されるのです。

ストレスがミネラルのバランスを崩す
 
 過度のストレスによって、胃腸に腫瘍が出来たりする人は少なくありません。腫瘍の発生を抑制する亜鉛の血中濃度が低くなり、胃に十分供給できなくなるのが原因とみられています。このストレスもミネラルと密接な関係があります。~~~

アルコール依存症と肝臓
 
 アルコールを日常的に飲みすぎると、亜鉛が排泄されやすくなり、亜鉛欠乏症になります。アルコール依存症やアルコール性肝硬変の人は、一般的に血中亜鉛濃度が低くて、低亜鉛血症になっているのはそのためです。

なぜガンや糖尿病になるのか
 
 日本人が成人病に悩まされるようになったのは、経済の高度成長政策によって豊かになった、昭和30年代からです。それ以前にももちろん、動脈硬化や高血圧、糖尿病、悪性腫瘍などの、いわゆる成人病はありました。偏食、即ち食わず嫌いの人がかかり安いと言われた時代です。しかし、空気も水も土も汚染された環境において、さらにそれを悪化させる無機農法から生産される農産物を食べるようになって、大きな社会問題になったのです。
 偏食を原因として発生した高血圧、ガン、糖尿病が、今は、先進国の国民に何を食べてもいくら食事に注意しても発生するようになっているのです。
 肉にかたよった食事、インスタント食品の多用などの、食生活の変化もこれに拍車をかけました。
 炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルの五大栄養素のなかで、ミネラルだけは、ほかの栄養素のように体内で作りだすことができません。私たちは食べ物や水をとおしてミネラルを摂取しなければならないのです。問題はその食べ物と水にあります。
 人も動物も、植物からミネラルをもらいます。植物は土壌からミネラルを吸収するのですが、化学肥料と農薬によって破壊された土壌には、吸収可能なミネラルが含まれていないのです。含まれていても、五十年前の半分以下であるといわれているのですから、私たちの体は、絶対的なミネラル不足になっているのです。
 遺伝子情報に従って作られたタンパクのなかにあって、微量元素がないと、遺伝子は十分に働きません。遺伝子という生命現象において、微量元素ミネラルは問題なく、重要な役割を演じているに違いないのです。
ほとんどの病気が、「超ミネラル水(微量元素と超ミネラル水を含む)」を飲用することで、直接的にも間接的にも影響を受け、無条件に治っていくことによっても、それを証明することができます。
 
 たとえば、微量元素が不足すると、ガンの発生を用意にします。NK細胞が正常に働かなくなってガン細胞を死滅(アポトージス)させられず、ガンの遺伝子を持っている人を、ガンにしてしまうのです。
 同じように、微量元素が不足すると、糖尿病の遺伝子をもっている人は糖尿病になります。昔はお相撲さんのように、偏った食事をする人の病気だったのですが、今ではごく普通の人が、普通に糖尿病になってしまいます。
 戦後になって、自己免疫疾患の難病が増えてきましたが、これらも微量元素ミネラルの欠乏によって、遺伝子を持っている人の発症をおさえられなくなったものと考えられます。
 これらの現代病と呼ばれる病気の全てが、ミネラルを補給することで、その進行をくいとめることができます。
 
ミネラルが副作用を抑えるのはなぜか
 
 末期のガンは、猛烈な痛みをともないます。この痛みは、大きくなった細胞が他の細胞を圧迫して浸潤していくときに、感覚神経を刺激して起こると考えられています。ガン細胞そのものには、痛みの要因はないのです。
「超ミネラル水」を服用して痛みから解放されるのは、ミネラルによって活性化された免疫細胞・NK細胞が、ガンの成長を阻害して、浸潤しつつあるガン細胞を死滅させて、感覚神経を刺激しなくなるからだと思われます。ミネラル自体には、鎮痛作用も神経をブロックする働きもないからです。~~
 
 「超ミネラル水」を飲用することで、ガン細胞におかされて元気をなくしていた酵素が、ふたたび活発に働き始めます。細胞にエネルギーを送り込み、正常な細胞を生き返らせるのです。代謝が健全におこなわれれば、副作用に打ち勝つ体力を自然に取り戻すことができます。

約80%もいるアレルギー体質の子どもたち
 
 先進諸国は、農機具を開発して、効率よい大規模農業のシステムを完成させました。農産物の品種も人間に都合よく改良されて、規格品を大量に栽培して流通させることには成功しました。しかし大きな落とし穴があったようです。
 人類は、飢餓との戦いには勝ちつつありますが、その方法に大きな間違いがあることに、気づかなかったのです。
 一つ例をあげれば、今の子どもたちには、生まれたときから微量元素という遺伝子ミネラルが欠乏して、アレルギー体質の子どもが80%もみられます。
 子どもたちは、アトピー性皮膚炎に悩まされています。食物アレルギーで食べる物に苦労して、発育障害をきたしている重症児童もいます。せいぜい気管支喘息しかなかった昔が懐かしく思われます。
 
 今では何でもありの状態です。ファーストフードの大好きな子どもたちは、安い経済活動(無機農法)に巻き込まれています。このままの状態がつづけば、小児糖尿病が普通に発生して、おそらくは40歳になるころにはバタバタと、ガンや心筋梗塞や脳梗塞で死んでいくに違いありません。なんとしてもこの悲惨な状況を避けたいのです。
 

活性酸素犯人説のうそ
 
 活性酸素とは、通常の酸素にくらべて、化学反応を起こしやすい酸素のことです。生体内で有害な過酸化脂質生成にかかわりますが、そのこと自体は特に問題ではありません。
 活性酸素が原因とされる「うその病気」が騒がれすぎているために、活性酸素病があたかも存在しているかのように錯覚されています。 それほどに、現代の医学、最先端の医学というものは、無力で役にたたないものなのです。
 
 病気の原因が、単なる微量元素不足の栄養失調なのに、ガンに対しては発がん性物質、糖尿病などの生活習慣病には飽食習慣、花粉症には花粉というように、要因としては二番目の、どうでもいいことを一生懸命研究しているのですから、根本的な解決につながらないのです。
 
 医学で病気が治らず、ラチがあかないということで、そこへでてきたのが活性酸素説です。健康食品を売って儲けようとする人たちがつぎつぎと現れ、世はまさに健康食品ブームです。
 まだ科学的根拠が証明されるに至っていませんので、遺伝子ミネラルである微量元素が十分に研究されて、その有効性が科学的に証明されるまでは、医薬品と認められないのが現状です。
 
 しかしそれでは、多くの人たちが現代病に苦しめられながら、ただ死ぬのを待つしか道はなくなります。私の役目はそれまでの間、できるだけ多くの人たちを救うことにあると思っています。
  
医療制度のカベと保守・保身
 
 小児ガンには、白血病に次いで多いものに神経芽腫があります。副腎、好感神経に発生する網膜芽細胞腫も多く見られます。
 私は千葉県の保険所長であったので、多くの例を挙げることができます。早期発見、早期治療ということになっているこの二つの小児ガンの、早期手術は効果が期待できず、不必要であるという報告が出はじめています。神経麻痺や眼球摘出手術という後遺症は、大問題です。
 私はこの種のガンを、「超ミネラル」で完治させたことがありますので、保健所職員にも話しをしたのですが、どの保健士も話をそらして、真剣には考えてもらえませんでした。立場上、責任問題になると、保身に走るのもよく理解できたので、所長としての強行発言はできなかったのですが、超ミネラルの認知・普及を急ぐ必要性を強く感じていました。
 
 たとえ今は、医薬品として認められていなくても、これだけの成果がでているので、医学的に検討してほしいと願い、機会あるごとに超ミネラルの圧倒的な力を訴えてきました。それでも、大学の研究者は動きません。
 私のまわりにも、医者・科学者はたくさんいますが、微量元素が遺伝子ミネラルであると認知されるまでは、話も聞いてもらえないのです。「超ミネラル」がその代用をするので有効だといっても、医薬品でないものは使うべきではないというばかりでした。医療制度のカベと保守・保身が、道をふさいでいるのです。

「超ミネラル水」を飲めば、ガンで死ななくなる

イオン化されている「超ミネラル水」
 
 私が治療に用いている「超ミネラル水」の中のミネラルは、イオン化された状態で水に溶け込んでいます。ミネラルはイオンかされてはじめて、体内に吸収されるからです。
 この溶液は、まだ医薬品としての認可は受けていませんが、ガンの一般的な治療と平行して「超ミネラル水」の飲用をすすめて効果を上げています。
ミネラル投与はすべてのガンに効く
 
 ガンの治療には、手術、放射線照射などの局所療法と、薬物投与による全身療法の二つがあります。実際は局所療法で40%、抗がん剤などの全身療法で10%の人が回復して、あとの半分の人は残念な結果になっています。
 私はこれまで、数多くの症例を見てきました。生活習慣をチェックして、食生活をコントロールしながら「超ミネラル水」の飲用効果を記録してきました。
 五ミリ以下の粘膜上皮ガンは、2~3週間で治癒の方向にいくことは確認しています。2センチほどの腫瘍は、1~2ヶ月、それよりも大きなものでも数ヶ月でガンの腫瘍がなくなってしまう例が少なくありません。
 完治しないまでも進行を止め、腫瘍を小さくして、放射線の放射時間を少なくすることができますから、治療の効果も上がります。患者さんにとっては、計り知れない救いになります。
 ミネラルの投与は、早期のガン、進行性のガン、末期のガンのいずれにも顕著な治療効果を発揮します。ミネラルは確かに「ガンに効く」のです。
 
完治したことが私にもたらした事件
~~~~~~

 ミネラルはガンの治療とはまったく関係がないとして、病院側はこの患者さんには放射線が良く効いたのだと解釈しました。そして、同じ県の職員同士で顔見知りでもあるので、私について早くも非難がはじまったのです。
 すぐに、当時国のほうから千葉県に出向していた衛生部長から呼び出しがありました。
 「医薬品でもないものを監視する立場の人間が、それを治療に使うのは問題がある」といわれました。私は、「有効だからいいじゃないか」と反論しましたが、「有効と証明されていないからダメだ」と言うばかりです。
 「有効とわかっていながら、それを無視して、患者さんを治さないのはそれこそ医師法違反になります」という私の言葉に、彼は目を丸くしていました。
 「医師たるもの責任をもって治すべきである」と私は主張しつづけました。水掛けでしたが、彼からはその後も、直接的にも間接的にも嫌がらせは受けていません。
 私はその時、法的にも正しいことをやっているんだと実感しました。

あれ、ガンがない 
 
 卵巣がんということで、すでに二ヶ月間、「超ミネラル水」を服用している患者さんから、私の診療所に相談の電話がありました。
 「先生からは、様子をみていても十分時間があるので、すぐ手術をしなくても良いと説明されていましたが、病院の先生方だけでなく家族からも手術を勧められ、やむをえず手術を受けました。」と報告がありました。
 「水で治るわけがないと、家族は私の意見を聞かなかったのです。でも、手術のあと、摘出した卵巣にも子宮にも、どこにもガンがないので大騒ぎになっています。」という話です。
 患者さんは、しっかりしない自分が悪かったんだと静観していますが、病院側では、診断を間違ったという医療過誤問題になっているということです。
 水で治るわけがないから、最初からガンではなくて誤診だったと家族が文句をいい、病院側では病理診断医と婦人科医が、自分の責任ではないと主張しあっているそうです。
 
「超ミネラル水」は糖尿病にも効く
 
 ガンの治療に「超ミネラル水」を使い、その効果を知れば知るほど、私の希望はふくらんでゆきました。ほとんどのガンに有効であるということは、ほかの疾患にも効くのではないかということに思い至ったからです。
 ミネラルが体の部位、腫瘍の種類にかかわらず有効な働きかけをするのは、疾患を直接攻撃するのではなく、その免疫システムに作用するためであると気がつきました。もしそうならば、がんにかぎらずほかの疾患にも、効力を発揮するはずだからです。

どんどん広がる「超ミネラル水」の可能性
 
 病気の治療以外では、化粧品の分野にも、「超ミネラル水」の可能性は広がります。皮膚の老化、シミ、そばかすなどに悩む女性のための基礎化粧品には、新陳代謝を高めるための薬分が期待され含まれることが要求されます。ミネラル入りの化粧品が開発されれば、間違いなく脚光を浴びるでしょう。
 副次的な効果としては、肥満の解消にも顕著な有効性がみられました。血糖値を減らせば、糖尿病による肥満は、確実に解消できるからです。代謝が高まり、正常な生理効果とともにエネルギーは消耗され、健康的な体型の維持(肥満予防)に有効なのです。
 そのほか、血液障害、自律神経失調症などにも効果があることがわかりました。 「超ミネラル水」の「免疫力を高める力」は、エイズなど免疫系の不全によっておこる疾病にも効果が期待できます。

ふつうに生活していてもミネラルは不足する
 
 ふつうに食事をしていれば必要量のミネラルを補給できるという人もいますが、かんじんの農産物が無機農法によって作られて、農薬にも汚染され、ミネラルの含有量が以前とは比較にならないほどに少なくなっているのです。
 現実に、多くの患者さんたちが「超ミネラル水」によって救われて、社会復帰を果たしています。メカニズムの解明を待つまでもなく、「超ミネラル水」を使わざるを得ないのです。
 
 私は実際に、ガンの治療をつづける過程で、ミネラルの効用を知りました。またそれを治療に使うことで、想像もしなかった効果を確認することができました。
 「超ミネラル水」を治療に使いはじめた当初は、奇跡ではないかと思ったものです。それが、必然的なミネラルの効果であると実感できるまでになり、さらに多くの疾患に応用できないかと模索して研究していることをご紹介しました。
 「超ミネラル水」という無機物を治療に使うことは、無謀なことと思われるかもしれません。しかし現場の医師にとっては、病気を治せるか治せないかが一番大切なことです。ガンの「特効薬」はないといわれる現状では、効きめがあると分かった以上は、積極的に「超ミネラル水」を活用すべきであると思っています。

「超ミネラル水」による治療指針

 潜在能力を引き出す「超ミネラル水」
 
 私は「超ミネラル水」を種々の病気を抱える患者さんにしようしてきました。現代医療をもってしても病気が治らないという現実から、病気の種類も内科系から外科系まで多岐にわたっている患者さんに、「超ミネラル水」を試すことになりました。たしかに現代病は、実に治らないのです。しかし、「超ミネラル水」をもってすれば、確実に良く治るのです。
 このミラクルな作用は、今世紀最大の科学的業績のひとつになるでしょう。
 
 「超ミネラル水」の薬理作用は、通常の薬理作用とまったく異なっています。代謝を正常にして、病気の状態を正常の状態にすることで、薬理効果が出てきます。 自己治癒能力を高めることに関係する新しい医薬品です。強いて言えば、遺伝子賦活剤の範ちゅうになると考えられます。
 
 「超ミネラル水」を短期に大量投与して、重症の感染症や脳挫傷、打撲傷、急性臓器不全などを、解決することもできます。
以下、代表的な病気について、ポイントだけを述べてみます。

慢性疾患の場合
 
悪性腫瘍一般
 「超ミネラル水」を飲みはじめると、まず腫瘍の発育進行が止まり、新たな転移が生じないという現象がおこります。このことはガンの治療をおこなうにあたって、大きなメリットです。患者さんは、3~4ヶ月ほどの時間的猶予をえることができます。
 量的には健康な人に投与する毎日の量の5倍程度を飲むことになります。動物実験でさらに確かめる必要があると思っていますが、臨床的観察からみると、間違いなく新たな転移が阻止されているのです。
1 胃ガン・大腸ガン
 初期のガンは、「超ミネラル水」を飲むだけで治りますが、念のため内視鏡検査によって、手術の必要のないことを確認させています。2ヶ月も「超ミネラル水」を飲むと、結論がでます。もちろんその間、元気になりこそすれ、何のトラブルもありません。
 手術して胃がなくなると、食事も思うようにとれず、寿命が3年は縮みます。胃ガンだからといって、すぐに胃を無条件に切除するようなことを避けて、「超ミネラル水」を飲めば簡単に回避できることです。~~~~
 さて現実では、今の医療ではどうしようもなくなって、初めて、「超ミネラル水」を知って助かる患者さんがほぼすべてです。「超ミネラル水」と出会った一部の幸運な患者さんだけが助かるという不公平があります。このような命と直結することの不公平は、非常に問題です。
2 肺ガン
 
 消化器ガンと違って、治療期間中に出血トラブルはまったくなく、完治しやすいのが肺ガンの「超ミネラル水」治療です。

3 子宮ガン、子宮頚ガン、前立腺ガン
 
 ガン組織が、「超ミネラル水」治療中に、脱落排出されることが多くあります。検査をしてみたら、ガン組織がなかったということがよく起こります。

4 肝臓ガン 
 
 発がん性のB型肝炎、C型肝炎ウィルスを原因とする肝臓ガンについては、この「超ミネラル水」をもってしても、治すには至っていません。
 今のところは、肝炎、肝硬変の進行を止めて、ガンの発症を阻止している程度です。

循環器疾患
1 高血圧症
 
 健康な人が飲む量の「超ミネラル水」を、3ヶ月も飲み続けると、血圧降下剤に頼っていた患者さんが、それを服用しなくてもいいようになります。ほとんどの症例で、この治療効果が期待できます。

2 動脈硬化症
 
 「超ミネラル水」を6ヶ月間飲用すると、あまり心配する必要のないくらいまで改善します。患者さん自身も身体に自信を持ってきます。脳梗塞、心筋梗塞の心配も消えます。「超ミネラル水」を飲んでいた時期に、新たに発生することがあっても、「超ミネラル水」の一日の量を増やすと、すみやかに麻痺が消えていくリハビリ効果がみられます。

3 糖尿病
 
 インシュリン、糖尿病治療薬は併用したほうが血糖値をうまくコントロールできます。最近になって糖尿病になった患者さんでは、「超ミネラル水」の飲用で、つぎの週には血糖値が降下しはじめます。
 五年以上の糖尿病経験者では、その多くは3ヶ月あるいは4ヶ月目に血糖値が落ちはじめます。
 いずれにしろ、かたくなに薬に抵抗していた糖尿病が、いとも簡単に反応しはじめます。インシュリンを減らす場面がまもなくやって来るわけです。糖尿病治療薬を必要としなくなるのは時間のもんだいです。

急性疾患のばあい
 
 抗生物質などの現代医療との併用を勧めています。敗血症、肺炎において、おもしろいように死のふちから患者さんを生還させます。

1 火傷
 
 火傷についても、現代医療では考えられないほどのいい結果がでています。「超ミネラル水」を患部に塗布するだけで、ほぼ治ってしまうのです。一度試された方のみが、このミラクルな治療効果を理解できます。

超遺伝子ミネラル療法で、
  改善・完治がみられた疾病(野島博士の小冊子より)
 
大いに症状改善がみられた症候群
 
ガン、糖尿病、高血圧、アトピー性皮膚炎、花粉症、更年期障害、心筋梗塞、子宮筋腫、脳梗塞、食物アレルギー、動物アレルギー、鼻アレルギー、薬物アレルギー、不眠症、口内炎、痔核、水虫、火傷、褥そう、蜂窩織炎、白内障、腫瘍性大腸炎、クローン病、てんかん、ものもらい、捻挫・・・


症状改善がみられた症候群
 
リウマチ、パーキンソン病、痴呆、高脂血症、多発性筋炎、耳鳴り、めまい、うつ病、不妊症、狭心症、緑内障、腰痛、むち打ち症、帯状疱疹後神経痛・・・
あとがき
 
 残念なことに科学者の目は、まだまだ微量元素にいっていません。でも時間の問題だと思われます。
 遺伝子の解析は道半ばで、微量元素の重要性には科学が間に合っていませんので確定的ではありませんが、現代病は現実に「超ミネラル水」という代用ミネラルで治っていく実績が積み重ねられるでしょう。また、無機野菜の微量元素不足は、目を覆うばかりであることは、栄養学関係者によって白日の下に報告されるでしょう。
 科学者が意地を張って、いくら微量元素および「超ミネラル水」の働きを無視しても、世論によってメディアは立ち上がると私は思っています。メディアは国民の味方であるはずですから、そうなるはずです。
 今のところメディアもほぼ科学者と同じような反応しか示していません。それでも、地方の新聞社や雑誌などは、好意的に報道しはじめています。
 
 
 輝かしい未来が皆様方の前途に広がっています。健康な状態で、百歳まで生きようと願うのは当然のことです。それこそ権利です。すばらしい人生設計を立てられんことを願ってやみません。                      (2003年12月 野島尚武)







三   ミネラルに関する書籍より


①    
 ガンに限らず、ミネラル欠乏症と考えられる疾病には次のものがあります。
 神経・精神障害、異状知覚、神経の興奮、情緒不安定、集中力欠如、
精神的無感動、心身衰弱、てんかん、焦燥感、抑うつ症、脳障害、錯乱、
不眠、発育不全、成長不全、骨格不全、幼児の発育遅れ、貧血、
悪性貧血、成長阻害、頭痛、腰痛、痴呆、消化障害、食欲不振、
極度の疲労、味覚異常、くる病、骨軟化症、関節炎、
血液の凝固作用低下、心臓病、心臓障害、心臓発作、呼吸障害、
高血圧、低血圧、動脈硬化、コレステロール蓄積過多症、呼吸障害、
前立腺肥大、病菌に対する抵抗力低下、平衡感覚障害、筋無力症、
筋肉麻痺、筋ジストロフィー、筋肉の収縮機能低下、タンパク質代謝障害、
塩分中毒、浮腫、肝臓障害、副腎皮質障害、腎臓結石、胆石、糖尿病、
低血糖症吐心、潰瘍、虫歯、甲状腺腫、甲状腺肥大、生理痛、月経閉止、
甲状腺障害、不妊、難産、精力減退、性欲減退、生殖力低下、肥満、
アトピー性皮膚炎、喘息、皮膚障害(湿疹・発疹・シミ)、シワ(老化現象)、
脱毛、白髪、
日本人のミネラル不足は農業に原因がある
 
 
 現代人のミネラル不足は地球規模の問題ですが、私が「日本人のミネラル不足はとくに深刻だ」と思うのにはもうひとつ理由があります。それは日本の農地そのものにミネラルがなくなっているのです。
 植物は成長するとき、土壌からミネラルを吸収します。土壌はその分ミネラルが減るわけですが、成長後にかれた植物が自然の堆肥となって土に戻りますから、以前はそれで土壌のミネラルが補われていました。
 植物 が食べ物として採取される農地も同じことです。昔は人糞や残飯を肥料として使っていたので、ミネラルはそれらを通してリサイクルできました。しかし、今はどうでしょうか。下水やゴミの処理場に行ってしまい、ミネラルが農地に戻ってくることはありません。
 化学肥料が先進国で市販されるようになったのは、1908年のことです。人間の三大栄養素はご存知のようにタンパク質と脂質と糖質ですが、農作物にも窒素・燐酸・カリウムという三大栄養素があります。この3つのミネラルを使った化学肥料が1908年に一般化し、日本にも1938(昭和13)年ごろから出回り始めたのです。
 窒素とリン酸とカリウムを与えると作物が豊富に育つため、この化学肥料はあっという間に普及しました。現在、農地で最もつかわれている肥料もこれですが、実は大きな問題をもっています。成分のほとんどが窒素・リン酸・カリウムばかりで、ほかのミネラルを含んでいないことです。
 植物の必須ミネラルは、現在までに確認されているものだけで窒素、リン、カリウム、水素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ホウ素、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、の16種類です。これらのうちのどの元素が欠けても、植物は健全に生育できません。
 窒素・リン酸・カリウムの肥料が使われだした頃は、土壌にまだほかのミネラルが豊富に存在していたのでしょう。しかし、糞尿や残飯などによるミネラルのリサイクルを行わなくなって久しい現在、農地という土壌は窒素・リン酸・カリウムの3種以外のミネラルが枯渇してしまいました。
 植物は、根に特定の栄養素を過剰に与えると、その植物が本来必要とするほかの栄養素を吸収しなくなってしまうのです。
 ニンジンやトマトやピーマンなど、かつての濃厚な味がしなくなったと感じている方が多いのではないでしょうか。よく「それは品種改良のためだ」といわれますが、そうとばかりはいえません。土壌に本来あったはずのミネラルが不足しているため、ニンジンらしい味、トマトらしい味、ピーマンらしい味が失われたしまったのです。
 
以上、 「アメリカはなぜガンが減少したか」 森山晃嗣 現代書林より(2006年)
② 
 
 最近、私たちの周りには、以前では考えられなかったさまざまな病気が増えています。大人でもガンや心臓病、糖尿病、肝臓病などの成人病に悩む人が急増しているわけですが、イジメや自殺、登校拒否、青少年犯罪など、子どもたちの世界でもたいへん異状な事態が進行していることが、毎日のように新聞で報道されていいます。
 たとえば登校拒否は、昭和57年度では、小・中学校あわせて2万人でしたが、それ以後、平成3年度に3万人、平成5年度に6万人、現在(平成13年度)では、8万人と、毎年増加しつづけています。
 また青少年犯罪は、97年の神戸市須磨区の小学生連続殺傷事件が記憶に新しいところですが、殺人・強盗・放火・婦女暴行などの凶悪犯が増え、また低年齢化しています。
 そうした凶悪犯は、たとえアトピーや喘息のような病気でないとしても、やはり健康ではないのです。短略的で思いやりのない行動をとらせる脳、あるいは、気分をかえてしまうのに重要な働きをしている血液中のホルモンやカルシウムが異常なのです。
 私はこの数十年間に日本人を変えてしまった体の内部の異常こそが、近年の不可解な健康問題の発生の謎を解くキーワードだと考えています。「アブノーマル・ニュートリション」(栄養異常)は、異常犯罪や成人病にあふれていたかつてのアメリカでの言葉でした。しかしそれが今、多くの日本人におきている異常を象徴した言葉になっています。
 その異常な状態を解決する方法が、人間の体にある60兆個の細胞の働きを正常にしていくことです。細胞に有害物がたまっていれば、解毒といってそれを出してやらなければいけません。また、何かの栄養素が不足しているために細胞の働きが悪いのであれば、それを補ってやらなければいけません。
 健康を取り戻すためには、まず栄養異常を解決しなくてはいけません。
  
以上、 「ビタミン・ミネラル革命」 山田豊文(杏林予防医学研究所) 総合法令


超ミネラル水、EMミネラル米については
こちらをご覧下さい。
(店舗名:超ミネラルで超元気)
  http://chou4genki.ocnk.net/

(リンク集にあります。)
日本臨床栄養協会会員 
日本サプリメントアドバイザー認定機構公認
 ≪日本臨床栄養協会サプリメントアドバイザー≫
  認定番号 07-157
 The Japanese Clinical Association Supplement    Advisor      
≪栄養士≫
     

世界に羽ばたくブランドを増やそう

 国内景気は上向き、企業業績も悪くないが、日本企業が以前の強さを取り戻したわけではない。アジア企業には激しく追い上げられ、収益力では米欧勢に見劣りする。もう一度世界で輝くために何をすべきか。ブランド力の向上こそ、大きなカギである。

 日本企業はよく「技術で勝って事業で負ける」といわれるが、その典型が時計産業だ。

技術で勝っても……
 1日に1秒と狂わないクオーツ(水晶)技術や、太陽光で動くソーラー時計。過去半世紀にわたり腕時計の技術革新をリードしたのは、間違いなくセイコーグループをはじめとする日本勢である。

 だが、市場を見ると、圧倒的な存在感を示すのはスイス企業だ。おひざ元の日本市場でも国産ブランドの金額シェア23%に対し、スイスブランドは66%を占め、世界市場での差はさらに大きい。

 技術に出遅れたスイス企業は、1990年代以降ブランドを磨くことに専心し、復活した。スイス最大手のスウォッチグループは高級品の「オメガ」から若者向けの「スウォッチ」まで独自の歴史と個性を持つ20ブランドを展開し、幅広い消費者の心をつかんだ。

 同社を大きく発展させたニコラス・ハイエク前会長は日本企業を評して、「数量を追うだけの価格競争をいつまでも続けるべきではない。10ドルで売るようなブランドの商品を妻や友達にプレゼントしたい人がいるだろうか」と鋭く指摘したことがある。

 「いいモノを安く」を長年追求してきた日本企業はブランドづくりが得意とはいえない。長い歴史や伝統のある欧米企業はもちろんとして、最近はサムスン電子のようにブランド力で日本企業をしのぐアジア企業も現れた。

 そもそも強いブランドとは何だろう。単に「品質がいい」「高機能」というだけでは不十分。それに加えて「かっこよさ」や「驚き」「感動」「親しみやすさ」といった人間の感性や情緒に訴える魅力が必要だ。目には見えない「おもてなしの心」もブランドを育てる素地になる。

 日本にも期待の芽はある。アシックスは米ナイキや独アディダスといった世界の巨人を向こうに回し、ランニングシューズの市場で非常に強力なブランドを築いた。

 ロンドンやアムステルダムの直営店にはシャワーや着替えの部屋を用意し、そこから多くの市民ランナーがジョギングに出発する。早い時期から各地で市民参加のマラソン競技を後援し、ランナーの裾野拡大にも取り組んだ。

 これらが功を奏し、今ではボストンマラソンなど世界の主要大会では、参加者のほぼ半数がアシックスで走るという。

 ファーストリテイリングが展開する日用衣料の「ユニクロ」はファッション性と独自の機能性を組み合わせ、反日機運の残る中国でも人気を博している。ニューヨークなどの世界の大都市の目抜き通りに大型店を出店するのも、ブランド構築投資の一環である。

 これまで日本発の世界ブランドといえば、「トヨタ」をはじめとする自動車と「ソニー」などの電機系にほぼ限られていた。

リーダーの力が重要
 これに対して、例えば米国発のブランドはコカ・コーラのような飲料からマクドナルドなどの外食、さらにはIT系のアップルやグーグルまで多彩な顔ぶれが世界で存在感を発揮する。

 日本でもアシックスなどに続いて、幅広い分野から世界に羽ばたくブランドが誕生すれば、産業構造の厚みが増すだろう。強いブランドは一度つくってしまえば、ライバルが簡単にはマネのできない競争優位の源泉にもなる。

 ブランド構築には、マーケティングやデザインの分野で感性力に優れた人材が必要だ。社内に人がいなければ、外から起用してもいい。富士重工業は独ポルシェで活躍したマーケッターを招へいし、北米で「スバル車」のイメージを大きく向上させた。

 輝くブランドの背後には、個性豊かなリーダーのいることも多い。製品のデザインや操作性にこだわり抜いたアップルのスティーブ・ジョブズ氏や、「ウォークマン」の楽しさを自分の言葉で世界に発信したソニーの盛田昭夫氏がその典型である。「我こそは」と思う経営者は世界を魅了するブランドつくりに挑戦してほしい。

春秋

 「初老」という言葉は最近あまり使われないが、辞書を引くと、もともとは40歳の異称なのだそうだ。たしかに人生五十年の時代には不惑の年回りともなれば老いを意識したに違いない。見た目も気も十分若いアラフォー男女が元気ハツラツの今どきとは別世界である。

▼それでは現在だと何歳くらいなら初老と呼べるか? NHK放送文化研究所の調査によれば男性55.5歳、女性58.4歳だというから、小欄などもその一員である。いささか感慨が湧くけれど、先日の総務省の発表によると初老よりずっと年長の、65歳以上の「老年人口」が今年3月末時点で3000万人を超えたという。

▼かたや15~64歳の「生産年齢人口」、つまり世の中の働き手の数は8000万人の大台を割り込んでしまった。年金を受ける高齢者が急増しているのに、それを支える労働力は減るばかりなのだ。こういう少子高齢化のすさまじさを物語る数字を突きつけられると、ニッポンの危機の深さにあらためて暗然たる思いが募る。

▼社会保障の見直しや少子化対策を、よほど徹底してやらないと大変な未来がやってくるだろう。加えて、高齢でも元気で意欲のある人が働きつづけられる環境を整えなければならない。なにも「生産年齢」を64歳までに限ることはないのだ。「初老」はむかしとは様変わりした。「老年」だって新しい解釈があってもいい。

TPP交渉の打開へ日本が知恵を出せ

 ブルネイで開いた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、アジアの新興国と米国の鋭い対立が浮き彫りになった。年内の妥結を目指している以上、両者の溝を早急に埋めなければならない。この難局を打開するために、日本は重要な役割を担っている。

 交渉が特に難航しているのは、知的財産権、環境、競争政策の3分野だ。いずれも新しい通商ルールづくりを目指し、米国がマレーシアやベトナムなどに高い要求を突きつけている。これらの分野は入り口の段階で協議が止まっていることが分かった。

 遅れて交渉に参加した日本は、不利な面が多いが、こじれた対立関係と問題点の所在を客観的に把握できる立場にあるともいえる。米国と新興国の間に立って知恵を絞り、両者が折り合えるような独自の提案を用意すべきである。

 知財権をめぐっては、医薬品データや著作権の保護期間について米国と新興国の対立が激しい。米国主導でつくった協定の原案に新興国から異論が噴出し、両者に歩み寄る様子は見えない。

 環境については、米国がさまざまな環境保護の国際条約に沿った厳しい基準の導入を要求し、新興国が反発しているようだ。競争政策では、市場で優位に立つ国有企業の定義や規制の方法について、意見がまとまらないという。

 ブルネイでのTPP閣僚会合の共同声明には、年内決着に向けて交渉を加速する方針が盛り込まれた。だが、このままでは目標期限を守ることは極めて難しい。

 今こそ日本の出番である。10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)でのTPP首脳会合に向けて、アジアの一員として日本が米国との調整役を買って出るべきだ。後発の日本が存在意義を示す絶好の機会と考えたい。

 仮に知財権や国有企業に関する交渉が決裂し、ルール導入に失敗すれば、日本にとっても大きな損失となる。日本企業が競争力を発揮できる公平な市場が形成されないからだ。独創的な打開案を出すことが日本の交渉の「攻め」であり、対立を解消して妥結に導くことが日本の国益となる。

 一方、物品の関税交渉はこれからが本番となる。農産物の関税撤廃を迫られるのは確実だ。安倍晋三首相は前線の交渉チームに「守り」を任せるのではなく、自ら政治指導力を発揮して自由化に備えた国内改革を急ぐべきである。

日本のスマホ復活への条件

 NECに続き、パナソニックにもスマートフォン(スマホ)事業撤退の動きが出てきた。だがスマホは世界規模で市場が急拡大している。日本の携帯技術の強みを生かせる分野はまだあるはずだ。

 NECとパナソニックはNTTドコモを支えた中核企業で、NECの2つ折り端末は日本の携帯の形を作った。それを変えたのが米アップルのタッチパネル操作で、両社は技術の転換を見誤った。

 勝敗を決定づけたのがドコモの新しい戦略である。販売促進費を他社の2商品に絞った結果、パナソニックは販売目標を大幅に減らさざるをえず、採算を改善するのは無理と判断したようだ。

 だが世界のスマホ市場を見ると、中国など新興国も加わり、直近の伸び率は50%を超える。家電の主戦場はテレビやパソコンからスマホやタブレットに移った。国内の若者もテレビよりスマホを愛用しており、スマホ市場は拡大こそすれ、なくなることはない。

 登場してまだ5年余りのスマホは今後、もっと技術革新が進むに違いない。最初はアップルなどが技術を主導したが、優位性が続く保証はない。むしろ基本ソフトや通信規格が共通化されたことで、電子決済端末や腕時計型など様々な端末が登場してくるだろう。

 では日本の携帯産業が復活する条件は何か。まずは部品技術から見直し、まねのできない製品を作ることだ。国内の通信会社に依存しない新しい販路の開拓も必要だ。京セラは騒音の中でも聞こえるスピーカー技術で米通信会社へのスマホの納入に成功した。米通信会社を買収したソフトバンクも海外への新たな販路となろう。

 メーカーが自由に宣伝や販売をできる仕組みも重要だ。端末と通信会社の回線が固定化される日本の制度も夏から解消が進む。家電と同様、メーカーによる消費者への自主的な販促に期待したい。

 ただメーカー全社が生き残るのは難しい。撤退も選択肢の一つだが、技術や人材が離散しないよう新たな再編も進める必要がある。

予算編成―しまりのなさに驚く

 来年度の予算編成で、各省庁が財務省に概算要求を出した。

 一般会計の総額は過去最大の99・2兆円で、今年度予算を7兆円近く上回る。省庁ごと、分野ごとでも軒並み増額だ。

 査定はこれからだが、財政再建などどこ吹く風と言わんばかりのしまりのなさに、あきれるほかない。

 景気の回復基調を受けて税収は増加が見込まれ、来春には消費増税も想定される。

 一方、安倍政権はデフレ脱却へ「機動的な財政運営」を掲げる。先の参院選で業界団体の支援を受けた与党からは「予算を増やせ」の声がかまびすしい。古い自民党そのままだ。

 「入り」が増え、「出」には追い風が吹く。要求しなければ予算はつかないから、とにかく目いっぱい要求する。

 そんなゆるみきった構図の象徴が「特別枠」だろう。

 省庁の縦割りを超えて予算を重点配分するのが建前だが、防災や経済成長、地域活性化など実態は何でもありだ。

 国土交通省や農林水産省が特別枠をフルに使い、公共事業費の要求額を今年度予算より2割近く増やすなど、すっかり「別ポケット」になっている。

 財政難への危機感がないのだろうか。

 「入り」と「出」の現状を、今年度の一般会計で改めて確認したい。

 全体で92・6兆円に及ぶ歳出の半分近くは、借金(国債)でまかなっている。消費税収は社会保障にあてることになっているが、社会保障費が29兆円を超えるのに対し、国の消費税収は11兆円に満たない。

 税率を今の5%から10%に上げても足りず、しかも社会保障費は高齢化で毎年1兆円程度増えていく。

 消費税を除く所得税、法人税などの税収と、公共事業費など社会保障以外の政策経費を比べても、9兆円近い赤字だ。

 財政再建への出発点である「基礎的財政収支の黒字化」とは、こうした政策にかかわる不足分をゼロにすることだ。これ以外にも、過去に発行した国債の元利払い費(国債費、今年度は22兆円余)があることも忘れてはなるまい。

 財政の立て直しは、一朝一夕には達成できない。

 国の成長率を底上げして税収を増やす▼必要な増税策を実行する▼できるだけ少ない予算で効果をあげて歳出を抑えていく――この三つについて、不断の努力が欠かせない。

 このままの甘い姿勢では、いまに厳しいしっぺ返しが来る。

卵子の保存―利便を追う前に知識を

 とうぶんバリバリ仕事をしたいが、将来は妊娠・出産を考えたい。そんなキャリア志向の独身女性にも、選択肢が広がりそうだ。

 日本生殖医学会が先週、健康な独身女性にも卵子の凍結保存を認める指針案をまとめた。年内にも最終決定する。

 だが、卵子保存に限らず生殖技術には限界も多い。利便性ばかりに目がいくと後悔しかねないことを知っておきたい。

 女性も男性も、自分たちのからだについて正しい知識を持つことが何より重要だ。

 夫婦間の不妊治療では、体外受精で余った受精卵を凍結保存する手法が普及している。

 また、がんの治療などで卵子に障害の起きる恐れがある独身女性では、未受精の卵子の凍結保存が試みられている。

 さらに海外では健康な独身女性の卵子保存が広まっているが、今は国内でもサービスを提供する医療機関が出てきた。

 生殖医学会は、独身女性の意思による保存が、十分な説明のないまま水面下で広まることを心配して指針案をつくった。

 採取は40歳未満、保存卵子の使用は45歳未満とする▼本人が死亡したり生殖可能年齢を過ぎたりしたら卵子は廃棄する▼口頭と文書で十分に説明して同意を得る――などの内容だ。

 若いうちに卵子を残しておくことで、出産時期をずっと容易にコントロールできる可能性がある。加齢に伴って卵子の質が落ちて妊娠率が下がる「卵子の老化」を避けられるからだ。

 だが、採卵の際は痛みや出血が起き、卵巣が腫れることもある。保管中の事故や取り違えのリスクもゼロではなく、費用もかさむ。なにより、受精卵に比べると卵子の方が保存は難しいとされ、妊娠・出産が保証されるわけではない。

 卵子だけ若くても、子宮などの老化や、パートナーの加齢が精子に及ぼす影響で流産しやすくなるという研究報告もある。

 そうした基礎知識は、男女問わず常識としたい。学校教育の中でも、一度は学ぶようにしてはどうだろうか。

 卵子の保存は、仕事や婚期の選択など社会的な制約に合わせて、自然のサイクルを調整しようとする試みともいえる。

 本来は、自然のサイクルを大事にして、社会の側が対応するのが望ましい姿であろう。

 自然妊娠率・出産率が高い20代から30代前半の女性が、出産と育児でキャリアを中断しても復帰しやすい社会に変えていくことが、より本質的で優先される課題といえよう。

消費税率 「来春の8%」は見送るべきだ

 ◆デフレからの脱却を最優先に

 日本経済の最重要課題は、デフレからの脱却である。消費税率引き上げで、ようやく上向いてきた景気を腰折れさせてしまえば元も子もない。

 政府は、2014年4月に予定される消費税率の8%への引き上げは見送るべきだ。景気の本格回復を実現したうえで、15年10月に5%から10%へ引き上げることが現実的な選択と言えよう。

 消費増税を巡って、有識者らから幅広く意見を聴く政府の集中点検会合が開かれている。

 ◆成長と財政再建両立を

 安倍首相が今秋の決断へ、「最終的に私の責任で決める。会合の結果報告を受け、様々な経済指標を踏まえて適切に判断したい」と述べているのは妥当だ。

 日本は、15年間もデフレが継続し、巨額の財政赤字を抱える。景気低迷がさらに長期化すれば国力の低下が進みかねない。

 デフレを克服し、経済成長と財政再建の両立をいかに図るか。日本に求められているのは、この難題に取り組む方策である。

 読売新聞は年々増える社会保障費の財源を確保し、中期的に財政健全化を図るべきだとの立場から、消費増税の必要性を主張してきた。考えは変わらない。

 有識者らの多くは、来春に予定通り引き上げるよう主張したが、問題は、来春が増税するのに適切な時期かどうかだ。

 今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は、年率換算で2・6%増にとどまった。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果が見え始めてきたものの、民需主導の自律的回復というにはほど遠い。

 懸念されるのは、成長に伴って賃金が上昇し、雇用も拡大するというアベノミクスの好循環が実現していないことだ。

 来年4月は、春闘による賃上げや新卒採用の拡大などが見込まれる重要な時期である。好循環への動きに冷水を浴びせたくない。

 もちろん、消費増税だけで財政は再建できない。増税で景気が失速すれば、法人税や所得税などの税収も期待したほどは増えない恐れがある。それではかえって財政健全化が遠のくだろう。

 政府は今秋、成長戦略として投資減税などの追加策を打ち出す方針だが、そうした政策効果が表れるまでには時間がかかる。

 ◆15年の10%を目指せ

 8%への引き上げに固執した結果、景気が落ち込み、10%への引き上げを実現できなくなれば、本末転倒である。

 他方、消費増税を先送りした場合には、日本国債の信認が損なわれ、長期金利が上昇すると懸念する声が出ている。

 重要なのは、不安を払拭する政府の強いメッセージである。8%見送りはデフレ脱却を最優先した結果であり、財政再建の決意はいささかも揺るがないと表明し、内外の理解を求めてもらいたい。

 増税先送りに伴う消費税収分をカバーする財政資金の確保も課題になる。まず緊急性の低い歳出は削減し、併せて、あらゆる政策を検討する必要がある。

 利子が付かない代わりに、国債の額面分に相続税を課さない無利子非課税国債を発行し、家計に眠る貯蓄を有効活用することは政策メニューの一つだ。

 広く集めた資金を社会保障や防災・減災対策などに重点配分することが考えられる。

 ◆軽減税率を新聞にも

 15年10月に消費税率を10%に引き上げる際は、国民負担の軽減が不可欠だ。税率を低く抑える軽減税率を導入し、コメ、みそなどの食料品や、民主主義を支える公共財である新聞を対象とし、5%の税率を維持すべきだ。

 消費税率を1%ずつ段階的に引き上げる案では、中小企業などの事務負担が増大し、価格転嫁しにくくなるため、賛成できない。

 消費増税の判断にあたっては、世界経済への警戒も怠れない。

 シリア情勢が緊迫化し、米国による軍事行動が取り沙汰される。すでに原油価格が高騰し、円高・株安傾向も続いている。原発再稼働の見通しが立たない中、燃料高に伴い、電気料金のさらなる値上げも予想されよう。

 米国が異例の量的緩和策を縮小する「出口戦略」や、中国の金融リスクも波乱要因と言える。

 1997年4月に消費税率を3%から5%に引き上げた際、深刻な金融不安に加え、アジア通貨危機が重なり、景気が急減速したことが苦い教訓である。

 内外情勢を十分に見極め、日本再生のチャンスを逃さない決断が政府に求められている。

2013年8月30日金曜日

春秋

 54、55……。おでこやおなかに無造作に貼られたガムテープに数字が書いてある。外傷はなく、ちょっと見には口を半開きにほうけて昼寝しているようでも、じつはもう息絶えている。10歳にもならないだろう子どもの死体、それが何十も丸太ん棒のように並んでいる。

▼21日にシリアで使われたという化学兵器(神経ガス)の犠牲者の映像がある。反政府側が公開した。見れば「もう憤りだけでは足りない」(仏ルモンド紙)という気になる。憤りより強いもの、つまりは米国などのアサド政権への武力行使が間近だとされる。子どもの死に顔はその空爆に大義を与える大切な要素でもある。

▼シリアの内戦では2年半に10万人が死に、200万人が難民になって国外に逃れた。化学兵器を使ったという話はかつてもあったが、誰が使ったか、結局は藪(やぶ)の中だった。国連は化学兵器について現地で調査はしている。しかし、アサド政権を非難する米英仏と後ろ盾になるロシアの対立ばかり際立ち、何も決められない。

▼そんな中で迫る大国の軍事介入である。空爆があれば、そのためにあらたな犠牲も出るだろう。それでも大義があるとすれば、内戦を一刻も早く終わらせるという正義と結びついてこそである。子どもの命を弄ぶ蛮行をすぐやめさせてこそである。「アラブの春」などと知ったふうに使ってきたが、その何と多難なことか。

危機の今こそ中東との関係強化が大切だ

 米英仏によるシリアへの軍事介入の観測が強まり、中東が緊迫している。この時期に安倍晋三首相が中東・アフリカを訪問した意義は大きい。

 シリア情勢について域内諸国の首脳と直接意見を交わし、原油や天然ガスの安定調達や、海上交通路(シーレーン)の安全確保へ協力を確認したことは重要だ。

 安倍首相はペルシャ湾岸のバーレーン、クウェート、カタールの3カ国と、アフリカ東部のジブチを訪問した。今春にはサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)も訪れている。

 米国はシリアのアサド政権が首都近郊で市民に化学兵器を使ったと断定し、英仏と連携し攻撃の準備を進めている。

 中東の不安定化は世界経済に深刻な事態をもたらす。エネルギー資源をこの地域に頼る日本も影響は免れない。シリア危機に距離を置くわけにはいかない。

 安倍首相は首脳らとの会談で化学兵器の使用は許されないとの日本の立場を伝えた。カタールでの記者会見で「アサド大統領は道を譲るべきだ」と退陣を求めた。

 発言はサウジやカタールなど湾岸諸国の主張と合致する。現地でのメッセージ発信は中東の人々に日本の姿勢を理解してもらう機会になったと評価したい。

 原子力発電所の事故後、日本にとって中東産油国の重みは増している。原発を代替する火力発電用の原油や液化天然ガス(LNG)の輸入が急増しているからだ。

 事故後に緊急調達したLNGの多くがカタール産だ。クウェートも第4位の原油の輸入先である。原油輸入の8割弱、LNGの3割を依存する湾岸諸国との関係強化は以前にも増して大切だ。

 ジブチではソマリア沖で海賊への対処活動を展開する自衛隊の拠点施設を視察した。ジブチは地中海と、インド洋やアジアを結ぶシーレーンの要衝にある。

 ジブチ沖は年間2万隻の船舶が航行し、1割が日本の船舶だ。日本は2009年から護衛艦や哨戒機を派遣し、商船やタンカーの護衛にあたってきた。自衛隊を含む、各国海軍による活動の結果、この海域での12年の海賊の被害件数は11年比で3分の1に減った。

 エネルギー資源や様々な物資を運ぶ海上物流の安全は日本経済に欠かせない。日本は中東諸国と連携し、地域の安定に積極的に役割を果たしていかねばならない。

M&Aテコに成長加速を

 企業が成長戦略やグローバル化を進めるうえで、自社に足りない経営資源を外から取り込むM&A(合併・買収)は欠かすことのできない経営手法である。

 日本企業による海外企業の買収は史上最高の件数を記録した昨年に比べると、円安の影響もあって、足元ではやや一服感も出ている。その半面、注目すべき新たな傾向も浮かび上がってきた。

 一つはアジアを舞台にしたM&Aの活発化だ。これまで日本企業の海外での買収は米欧中心で、対アジアの直接投資は工場や店舗を自前で一から立ち上げる、いわゆるグリーンフィールド(更地)投資が多かったが、最近はM&Aも有力な選択肢になっている。

 三菱UFJフィナンシャル・グループはタイ大手のアユタヤ銀行の株式を公開買い付けし、傘下に収める。ANAホールディングスはミャンマーの中堅航空会社、アジアン・ウィングス・エアウェイズ株の49%取得で合意した。

 いずれも成長著しい東南アジアで、競争相手に先行して事業の基盤を固めるのが狙いである。

 もう一つの傾向は、投資ファンド経由の買収が目立ち始めたことだ。LIXILグループは今月、米衛生陶器最大手のアメリカンスタンダードを買収した。LIXILに株を売ったのは米国の有力投資ファンドだ。ダイキン工業が昨年、米空調大手のグッドマン・グローバル株を買い取ったのも、別の米ファンドからである。

 世界の投資ファンドは2008年の金融危機前のカネ余りの時代に元気がよかった。そのころ傘下に収めた企業群をそろそろ手放す時機が来ており、それをうまく活用すれば日本企業にとっても買収のチャンスが広がるだろう。

 買収を成功に導くためには、相手先企業の価値を見極める眼力と、買収後の統合を円滑に進める経営ノウハウの蓄積が欠かせない。これまで自前主義の強かった日本企業だが、豊富な手元資金を成長戦略に結びつけるためにも、M&Aの腕を磨いてほしい。

派遣見直し―働き手を守る覚悟は

 労働者派遣制度の改革をめぐる議論が、労使が参加する厚生労働省の審議会できょうから本格的に始まる。

 重要なのは、「派遣切り」に象徴される不安定な働き方が改善されるかどうかだ。

 それには、派遣業界が働き手の側に立つことを制度化する必要がある。規制緩和だけ進めるのなら理解は得られない。

 議論の「たたき台」となるのは、学者を集めた厚労省の研究会がまとめた報告書だ。

 内容を大づかみにいえば、「派遣先で労働者がどう働くか」については、規制を緩和する一方、「派遣元がどう労働者を保護するか」については規制を強化する。

 労働力の需給調整という派遣制度の機能を正面から認めており、業界大手が加盟する「日本人材派遣協会」の要望に沿ったものといえる。

 現行法では、ずっと派遣に任せていいのは26の専門業務に限り、そのほかの業務には最長3年の上限を設けている。

 「ずっと続く仕事なら、正社員にさせるべきだ。そこに派遣労働者が入って、正社員が代替されるのを防ごう」という理念が背景にあった。

 報告書は、この考え方を見直し、仕事の内容による区別の撤廃を提言した。

 いまや非正規雇用は、働き手の3人に1人、1800万人に及ぶ。派遣社員は約137万人で、パートやアルバイトにはない特別な規制を、派遣にだけかける意味は薄い。専門26業務の中身もあいまいになっていた。区別の撤廃自体は妥当だろう。

 焦点は、派遣会社が派遣労働者をきちんと保護できるかどうか、である。

 報告書は、派遣会社との契約が有期の場合、3年の派遣上限に達した働き手に対して、派遣会社に「雇用安定化措置」を講じるよう義務づける。

 具体的には、(1)派遣先に直接雇ってもらうよう申し入れる(2)新しい派遣先を提供する(3)働き手との契約を無期雇用にする、のいずれかだ。

 もっとも現実的なのは(2)だろうが、切れ目なく派遣先を用意し続けるには、派遣会社側に相当な努力が必要となる。

 逆にいえば、派遣労働者の生活を安定させる力のない派遣会社は、ビジネスを続ける資格がないという意味でもある。

 全国に8万3千近くある派遣会社のうち、かなりの数は淘汰(とうた)される可能性があるが、働き手にしわ寄せがいかない形で進めるしかない。

 業界の覚悟が問われている。

はだしのゲン―図書で知る戦争と平和

 小・中学校に対し、漫画「はだしのゲン」を図書館で自由に読めなくするよう求めていた松江市教委が、措置を撤回した。

 事務局が教育委員に相談しないまま決めていたことから、5人の委員全員が「手続きに不備があった」と判断した。

 閲覧規制を白紙に戻したのは良識的な結論と言える。ただ、理由が手続きの問題にとどまっているのは残念だ。

 ことの発端は昨年8月。旧日本軍の戦場での行為や昭和天皇の戦争責任に関して「ゲン」の歴史認識に誤りがあり、学校図書館から撤去してほしいとの陳情があった。市議会は不採択にし、市教委もそのときは撤去に応じない方針を示した。

 閲覧制限を支持する人たちの間では、陳情と同じように、反天皇制的だなどと、漫画の歴史認識を問題視する声が目立つ。

 だが、ゲンの真骨頂は作者の中沢啓治さんが実体験した原爆の悲惨さを見事に伝えている点にある。だからこそ、国内外で読み継がれてきた。その作品を、歴史観の相違を訴える人がいるからと、子どもたちの前から「排除」しようとする主張は、あまりに視野が狭い。

 全編に作者の強烈な思いがこもるゆえに、人を引きつける作品は多い。一部分が気に入らないからと全体を否定するのは、図書に対する理解不足だ。

 撤去に応じなかった当初の市教委の姿勢は正しかった。ほかの教育委員会も今後、手続き論でなく、規制の要請をきっぱりと突っぱねるべきである。

 問題は、いったん要請をはねつけた後の市教委事務局の対応だ。当時の教育長ら幹部5人がゲンを読み直した結果、旧軍のアジアでの行為を描いた最終巻のシーンが「残酷」との見方で一致し、閲覧制限を小・中学校に求めることにした。

 発達段階にあるからこそ、子どもたちが本を自由に読む機会も、最大限に保障されなければならない。市教委事務局の対応には、その点への目配りがあまりに欠けていた。

 戦争は残酷だ。そこを正面から問う本を、教育にどう生かしていくか。知恵と工夫を重ねる必要があるが、戦争を知らぬ世代に残酷さから目を背けさせるばかりでは、平和の尊さを学びとれない。

 もとより、本を読むかどうかは子ども自身の選択が大切である。そこを基本に、読むことを選んだ子たちが抱いた疑問や衝撃にはしっかり応えていく。

 そうした図書との上手なつきあい方を、教育現場や家庭で広めていきたい。

地方分権改革 堅実な事務権限移譲が肝心だ

 一時のムードに惑わされず、国から地方への事務・権限の移譲を現実的な手法で着実に進めることが肝要である。

 政府が地方分権改革有識者会議に、地方への事務・権限移譲案を提示した。

 理容師や美容師の養成施設の指定・監督など44項目は、全国一律で都道府県に移譲する。国直轄の河川や国道の整備・管理など29項目は、条件付きで移譲を検討する。こうした内容が柱である。

 年内に結論が得られたものは、来年の通常国会に関連法案を提出し、移譲を実行する予定だ。

 民主党政権下では、政府の役割を過小評価する「地域主権」、政府の出先機関の「原則廃止」といった、乱暴かつ無責任な掛け声ばかりが先行した。結果的に、分権論議は停滞が続いた。

 東日本大震災の復旧・復興で、政府や出先機関が主導的な役割を果たす重要性が再認識されたことも大きかったと言える。

 自公政権への交代を機に、政府と自治体の役割を冷静に再検討して、二重行政を排し、行政の効率化や地域の活性化につながる分権を進めることが大切である。

 国直轄河川、国道の管理の地方移譲は長年の懸案だ。それにはまず、必要な財源や職員の移譲が大きな課題となる。大規模災害など非常時の政府の関与についても検討すべきだ。国土交通省と地方の接点を探る必要がある。

 一方、有識者会議は、厚生労働省のハローワークの求人情報を自治体に提供することや、過疎地や福祉目的での有償旅客運送事業の登録・監督権限を国交省から市町村に移譲することを提言した。

 いずれも早期に実現したい。

 年約900万件に上る求人情報のオンライン情報提供は、自治体による生活保護対象者らへの職業紹介などに有効利用できよう。

 求人情報は民間人材ビジネス企業にも提供される。官民連携で若者や女性の労働力を活用することは政府の成長戦略に合致する。

 一般のバス・タクシー事業が成立しない過疎地や、身体障害者、要介護者の交通手段を確保することは重要課題だ。現在は、市町村や非営利組織(NPO)法人など約3000団体が年間延べ2600万人を有償輸送している。

 登録・監督権限を国交省から、地域の実情を熟知する市町村に移すことは合理的だ。総合的な町づくりと連動させる創意工夫の余地も生まれる。移譲を円滑に進めるには、国交省や都道府県が市町村を支援することが欠かせない。

悪ふざけ投稿 ネット交流に潜む危険な誘惑

 実に嘆かわしい事態である。若者が悪ふざけで撮った写真がツイッターなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿され、重大な問題を引き起こしている。

 高知市のコンビニエンスストアでは、男性店員がアイスクリームの冷凍ケース内に身を横たえた姿を撮影し、投稿した。

 本部には「店員の教育がなっていない」「衛生管理はできているのか」といった苦情が殺到した。この店はフランチャイズ契約を解除された。

 冷凍庫の食材をくわえた店員の写真がツイッターに公開された大阪のラーメン店は、食材廃棄ばかりか、休業に追い込まれた。

 店員の軽はずみな行為により、店や経営企業は信用低下というダメージを受けた。店員は解雇のみならず、店側から損害賠償を請求されてもおかしくはない。

 刑事事件に発展したケースもある。北海道で駐車中のパトカーの屋根に乗った場面を投稿した19歳の少年2人が、器物損壊容疑で逮捕された。

 悪質な行為を抑止するためには厳しい対処もやむを得まい。

 一連の問題を引き起こした若者たちからは、ネット空間で他の人から注目されたいという自己顕示欲がうかがえる。北海道の少年は「パトカー荒らしてきたぜ」という書き込みをしていた。

 SNSは友だちの輪を広げる道具だ。うまく利用すれば、多くの人と交流することができる。関心を引くために、自分をアピールしたいという若者もいるだろうが、問題はその手段だ。

 自らの行為がもたらす結果に思いを及ぼすことができれば、一連の騒動は起きなかったはずだ。

 なぜ、著しく常識を欠いた若者の行為が目立つのだろうか。

 専門家の中には、ネットの世界に浸ると、正常な判断力を失いがちになるとの指摘がある。働いている最中でも、ネット上でどんな会話や投稿をするかが頭から離れず、ネット仲間にうける行動に走ってしまうのだという。

 騒動が短期間のうちに集中したのは、他の人の投稿を見て刺激を受けた結果だろう。

 中高生だけでも約52万人に達するとされるネット依存問題の一つの側面と言える。

 スマートフォンが急速に普及し、SNSなどのネット利用者は今後も増え続けるとみられる。学校だけでなく、社員教育の中でも、ネットとの適切な関わり方を指導していくことが必要だ。

2013年8月29日木曜日

春秋

 「ゲン」がない。どこにもない。松江市教育委員会による閲覧制限が問題になった漫画「はだしのゲン」のことだ。騒動をきっかけに読者が殺到し、いま書店では品切れが続出、図書館でもほとんど貸し出し中とあってめったに手にできない。版元は増刷を急ぐそうだ。

▼単行本で全10巻。通読するには骨の折れる大作である。それがこんなに注目される展開になろうとは、市教委は思いもしなかっただろう。いや教委といっても事務局だけで判断し、市立小中学校の図書館で自由に読めないようにしていた。その短慮が、かえって「ゲン」をいよいよ有名にしたのだから皮肉というほかない。

▼この漫画にはかねて表現が過激だ、歴史認識が「反日的」だといった批判がある。一方で戦争の不条理、原爆の悲劇を描いて貴重な作品だと称賛する声がある。つまり問題作なのだが、それくらいの毒は古今の文芸作品にだっていくらでも含まれていよう。そんな懸念でいちいち閲覧制限をかけていたら棚から本が消える。

▼松江市教委は5人の委員による会議を開き、8カ月に及んでいた制限の撤回を決めた。教育委員がようやく仕事をしたわけだが、さてこの人たちはふだん何をしているのか、事務局の暴走を怒っていないのか、という疑問もわいてくる今回の騒ぎだ。時ならぬ「ゲン」ブームのなかで考えさせられることが、なかなか多い。

経営的視点で効率よく国を動かそう

 国という巨大な組織を動かすのは容易な仕事ではない。各省庁が毎日何をしているのかを分類した事業レビューシートに載っているだけで5000を超える事業がある。優れた指導者でもなかなか目配りしきれないし、木ばかりみて森を見失っても困る。

 国が抱えるさまざまな課題を効率よくこなす統治機構をどうすればつくれるのか。ここはひとつ、経営的な視点を取り入れ、組織を活性化させる方法を考えたい。

首相を縛る国会審議
 日本社会はもめごとを嫌う。何をする場合も事前調整が重視され、合意までに時間がかかる。このままでは迅速な決断が求められるグローバル社会に適応できない。

 トップに一定の裁量権を与え、臨機応変に対応できるようにする。そのかわりに業績評価が悪ければ責任をとらせる。民間ではそんな経営が主流になりつつある。

 日本の首相は国会に縛られすぎだ。有識者でつくる「日本アカデメイア」によると、2011年の首相の国会出席日数は127日。英国36日、フランス12日、ドイツ11日と比べ格段に多かった。首相や主要閣僚が海外出張などに行きにくい現状は国際政治の場での日本の発言力を損なっている。

 政府が任命に際して衆参両院の議決を必要とする国会同意人事の範囲も広すぎる。人事権は首相が何をしたいかを世の中に示す重要なツールだ。

 旧態依然たる国会のあり方は改めたい。与野党攻防は政策の中身よりも法案審議の日程を巡る争いになりがちだ。成立すべき法案がさまつな行き違いで通らないこともある。

 政府が法案の優先順位を明確にし、いつまでに採決してほしいのかの締め切りを設ける仕組みにしてはどうか。

 国会の会期ごとに計画(プラン)―実行(ドゥ)―評価(チェック)―改善(アクト)のPDCAサイクルに沿って、ときの政権が目指す施策を実現するための立法がなされているかを明示すれば国民も業績評価がしやすくなる。

 これらの見直しは与党の自民・公明だけでなく、野党の日本維新の会も前向きだ。早急に与野党協議を開き、秋の臨時国会から新たなルールを実施するぐらいのスピード感に期待したい。

 行政の機能強化も大事だ。民間では新規事業に踏み出すのか、不要な事業から撤退するのか、こうした瞬時の判断が業績を大きく左右する。会社同士のM&A(合併・買収)は日常茶飯事だし、事業ごとに切り売りすることもある。

 職場も人材を固定せず、事業ごとに流動的なプロジェクトチームを編成する運営が珍しくない。

 こうした観点からみると省庁の枠組みにこだわり、省益優先の官僚社会はあまりに遅れた存在だ。

 「01年の省庁再編をやり直せ」「総務省から旧郵政省を切り離して経済産業省と統合して情報通信省をつくれ」。そんな声を聞くことがある。

 実情に合わないならば変えればよいが、省庁再々編と構える必要はない。どの省庁出身かにとらわれず事業ごとに人材を配置する仕組みにすればよいだけだ。

 ついでに全事業を時限方式にして必要ならば更新することにすれば事業仕分けの手間が省ける。

ぬるま湯体質を一掃
 「省庁の権限は設置法で決めてあり、それ以外はできないし、勝手に人材は動かせない」。民間型の行政運営はどうかと話したら、官僚OBにこう反論された。

 だったら臨機応変に対応できる制度を組み込んでおけばよい。行政が権限を乱用しない歯止めは必要だが、法律で動かせないから国民に役立つ行政運営ができないというのでは本末転倒だ。

 仕事が多い部署に人材を移し、一仕事終えたら配置転換する。当たり前のことを当たり前にする組織にすれば公務員のぬるま湯体質は一掃されよう。プロジェクトチームのリーダーを内部募集すれば若手公務員のやる気も引き出せる。

 中央省庁の地方出先機関の地方移管のように半世紀も論議しているのに結論が出ない課題もある。民間でそんな悠長なことをしていたらとっくに倒産だ。

 国民が望めば政権交代が起きる時代だ。現状維持が染みついた古い仕組みに別れを告げ、新たな創造へ動く国にしたい。

「特別警報」 災害の被害軽減に生かしたい

 気象庁が「特別警報」の運用を30日に始める。豪雨などにより、大災害が発生する恐れが著しく高まった際に出す。

 今夏も局地的な豪雨が各地で発生している。災害による被害を少しでも軽減する手立てとして機能させてもらいたい。

 気象庁は、災害発生の恐れがある時に「注意報」、大きな災害発生の恐れがある際には「警報」を出してきた。これを上回る危険が迫っていることを知らせるのが、新設する特別警報だ。気象庁が発信する最大の警告と言える。

 大雨では50年に1度程度の降雨量が予想される場合に発する。暴風や津波などにも適用する。気象庁は該当の自治体に対応を求めるとともに、報道でも「直ちに命を守る行動を」と呼びかける。

 特別警報を出すことにしたのは、気象庁が発する防災気象情報が活用されず、住民の避難が遅れる災害が後を絶たないためだ。

 東日本大震災では、巨大津波の危険性が十分伝わらず、多くの人が逃げ遅れた。台風や大雨でも市町村が避難指示を出したころには、避難できないほど天候が悪化していた事例は少なくない。

 注意報や警報は、最悪の状況に至る少し前の段階で出される。このため、市町村や住民は、猶予があるだろうと様子見になりがちだ。特別警報が発せられた時、そうした対応は禁物である。

 重要なのは、自治体の役割だ。改正気象業務法は、特別警報が出された自治体に対し、住民への迅速な情報の周知を義務付けた。市町村は、避難が必要か、どこに避難するかも決め、併せて住民に伝えることになる。

 情報伝達手段の拡充、避難所確保といった防災対策など、平時から取り組むべき課題は山積している。政府と自治体が連携し、体制の整備を急がねばならない。

 情報伝達の手段としては、既存の防災無線や広報車による呼びかけに加え、インターネットの活用など、新たな仕組みも早急に検討する必要があろう。

 気象庁の防災気象情報は、豪雨や暴風など気象関連のほか、地震や火山まで多岐にわたり、複雑すぎるとの指摘がある。特別警報が加わることで、さらに分かりにくくなる恐れがある。

 緊急メッセージは正確に伝わることが重要である。気象庁は、細分化された情報の見直しを検討している。改善を急ぐべきだ。

 的確な情報発信のためには、気象庁の観測、予報技術の向上が大切なことは言うまでもない。

全国学力テスト 苦手分野をどう克服するか

 子供たちの苦手な点を見極め、指導に反映させることが重要だ。

 文部科学省が4月に実施した全国学力テストの結果を公表した。小学6年生と中学3年生を対象に、国語と算数・数学の基礎的な知識や応用力を調べた。

 全員参加方式による学力テストは4年ぶりだ。民主党政権下の抽出方式では分からなかった市町村別や学校別の細かなデータが得られたのは収穫だろう。

 成績が振るわなかった学校に教師を手厚く配置するなど、自治体はテスト結果を教育施策に活用できる。今後も全員参加方式を継続し、学力を検証していきたい。

 今回の都道府県別の結果では、過去に平均正答率が低迷していた県で改善の兆しが見られた。放課後を利用した補充学習や県独自のテストを組み合わせ、成果に結びつけたところもあった。

 2007年から始まった全国学力テストが、各自治体の取り組みを促していると評価できよう。

 これまでのテストを通し、子供たちの苦手分野がはっきりしてきている。与えられた資料を読んだ上で自分の考えを書く問題や、解答の理由を論理的に説明する問題などだ。今回も出題されたが、やはり正答率は低かった。

 苦手分野の学力の底上げが大きな課題である。文科省はテスト結果を踏まえた授業のアイデア例を作成し、教育委員会などに配布する予定だ。学校現場で子供たちの思考力や表現力を磨く指導を工夫してもらいたい。

 同時に実施された意識調査では、中学生の1割近くが、授業で分からないことがあった時、「先生にも友人にも尋ねずにそのままにしておく」と答えた。義務教育の最終段階の大事な時期だけに、気がかりな調査結果である。

 国語の記述式問題や数学の証明問題で無解答だった子にその理由を尋ねたところ、そもそも最初から解答をあきらめていた中学生も目立った。

 児童生徒の習熟度に応じた授業を導入するなど、指導にあたって、教師がきめ細かな目配りをしていく必要がある。

 子供たちの学力向上には、家庭学習もポイントとなる。

 調査開始以来、家で授業の復習をしている子供の割合が増加している。今回、小中学生とも約5割になったのは、一定の前進だ。

 学校や自治体がテスト結果を保護者に丁寧に説明し、課題を共有する。それが保護者の理解を深め、家庭学習の充実にもつながる。

シリア情勢―国連の調査が先だ

 内戦状態が続く中東のシリアに対し、米、英、フランスが軍事行動の検討に入った。

 首都近郊で、アサド政権が化学兵器を使って多くの市民を殺傷した疑いが強まっている。

 米英仏は、大量破壊兵器の使用は許さない決意を国際社会に示し、同じ殺戮(さつりく)を再び犯さないよう抑止するとしている。

 だが、いまの米英仏の動きは性急であり、危うさを伴う。

 化学兵器が使われたとの疑惑は、まだ十分に解明されたとはいえない。内戦を収束に導く抜本的な道筋も描かれていない。

 いまは国連の調査団による事態の解明を尽くすべきであり、内戦の収拾に向けた外交調整にこそ本腰を入れるべきだ。

 アサド政権は疑惑を否認しているが、今月から現地入りした国連調査団による解明に全面協力しなくてはならない。

 調査の結果は、国連安全保障理事会に報告される。米欧は、その結果を踏まえて、これまで対シリア決議に反対し続けてきたロシアと中国の説得を再度試みることが必要だろう。

 同時に、トルコやアラブ連盟など深い利害を持つ周辺国との意見調整を急ぎながら、シリアの人道危機に国際的な取り組みを強める新たな枠組みづくりを進めるべきだ。

 2年半におよぶ内戦の死者は10万を超えた。隣のレバノンやヨルダンなどへの難民は200万にのぼり、国連によると、その半数は子どもだという。

 この惨状に加えて化学兵器が使われれば、大量殺戮は歯止めがなくなる。これまで長らく介入に慎重だったオバマ米政権が危機感を強め腰を上げるのは、遅すぎたとはいえ当然だ。

 だが、いま検討が伝えられる行動は軍事介入でしかない。アサド政権の軍事施設を破壊すれば無分別な攻撃の一時的な抑止につながるかもしれないが、逆にかえって混乱を拡大させる恐れがつきまとう。

 空爆が反体制派を勢いづけたとしても、各派はいまも結束していない。中には国際テロ組織アルカイダに通じるイスラム過激派もいる。アサド政権後を担える国家体制の受け皿はまだ見えていないのだ。

 米欧の強硬策は、アサド政権を支えるイランのロハニ新大統領を対話路線から遠ざける心配もあるだろう。中東全域が流動化する懸念がぬぐえない。

 今回の化学兵器疑惑を機に米欧が力を注ぐべきは、無秩序な争いをやめさせ、各派を話し合いの席につかせるための方策を練ることだ。空爆では、抜本的な解決策は生み出せない。

国会の改革―小手先で終わらせるな

 国会審議のあり方を改めようという動きが出てきた。自民、公明、日本維新の会が協議を始め、自公両党は民主党にも呼びかける考えだ。

 先の通常国会の会期末に、安倍首相の予算委出席などをめぐって参院で与野党が対立。首相問責決議が可決されたあおりで民主党も賛成していた重要法案が廃案になった。国民には全く理解しがたいことだった。

 こんな茶番を繰り返さないためにも、各党が改革に乗り出すことには賛成だ。前に進めてほしい。

 与党がまず手をつけようとしているのが、首相や閣僚の国会出席を減らすことだ。閣僚に代わって副大臣の答弁機会を増やし、委員会の審議時間に上限を設けることを検討している。

 安倍首相は先の通常国会で、衆参両院の予算委員会に約180時間出席した。日本の首相の国会出席は、欧州諸国の首相に比べ格段に多いとされる。

 これが首相から多くの時間を奪い、外交日程の組み立ても難しくするといった弊害をもたらしている。これは昨年まで政権を担った民主党を含め多くの党の共通認識だ。

 審議時間に機械的に上限を設けることには疑問があるが、工夫する余地は十分にある。

 要は、首相らをいたずらに国会に拘束するのではなく、メリハリをつけた質疑や議員同士の論戦の場にすることだ。

 そのためには、党首討論の活性化が必要だ。週に1回開く原則をきちんと守る。45分しかない時間も延ばし、いまは参加できない中小野党の党首にも門戸を開くようにしてはどうか。

 さらに踏み込んで、会期のあり方も見直したい。

 いまは会期中に審議が終わらなかった法案は原則廃案になる。このため野党は抵抗の手段として審議引き延ばしに走り、国会が「政策論争」でなく「日程闘争」の舞台になっていると、野党の側からも指摘されてきた。通常国会を大幅延長して実質的に「通年国会」とする試みを、検討すべき時だ。

 こうした改革を進めなければならないのは、社会保障の立て直しや震災・原発事故への対応など、国会が迅速な対応を求められる案件が山積しているからだ。議員が日程闘争で仕事をした気になっていられる時代はとっくに終わっている。

 司法から抜本的な改革を求められている衆参両院の選挙制度改革を急がねばならないことは、いうまでもない。

 のんびりと構えている余裕はないはずだ。

2013年8月28日水曜日

春秋

 私には夢がある。50年前のきょう、マーティン・ルーサー・キング牧師がワシントンで人種差別の撤廃を訴えた演説は有名だ。動画サイトでみると、16分あまり。決して長くはない。半世紀の時を超えて今なお胸を打つくだりの一つは、次のように語ったところだろう。

▼「私には夢がある。私の4人の小さな子どもたちが、いつの日か、肌の色でなく人格の中身によって判断される国に住むことだ」。キング牧師の子供たちは1960年前後の生まれで、オバマ大統領と同じ世代だ。キング牧師が高らかに掲げてみせた夢が、黒人初の大統領という形をとって実現した。そんな感慨を覚える。

▼言うまでもなく、人種差別の撤廃を求める公民権運動はキング牧師の演説の後も曲折をたどった。演説の翌年にキング牧師はノーベル平和賞を受賞したが、その翌年、やはり黒人の公民権活動家だったマルコムXが暗殺された。さらに3年後には、キング牧師自身が白人男性の銃弾に斃(たお)れた。人種問題の傷痕は深く悲痛だ。

▼それでも米国が、キング牧師の掲げた理想に向けて前進してきたとはいえるだろう。ひるがえって世界を見わたせば、キング牧師のように堂々と夢を語ることさえできない国が、まだある。特定の民族に対して憎しみをあらわにするヘイトスピーチが、公然と行われ始めた国もある。キング牧師の夢を改めてかみしめたい。

「選択と集中」が分けた半導体産業の明暗

 日本の半導体企業の明暗が大きく分かれている。東芝やソニーが大型投資に乗り出し、事業拡張へ積極的に動く一方で、ルネサスエレクトロニクスや富士通は事業の縮小を余儀なくされている。

 各社の浮沈を分けた最大の要因は、事業の「選択と集中」を実行し、世界で通用する強い製品を持てたかどうかである。

 2002年にメモリーの一種であるDRAMから撤退した東芝は、経営資源をフラッシュメモリーと呼ばれる新型半導体に集中することで盛り返した。

 DRAMの教訓を踏まえ、小規模の工場を多数乱立させるのではなく、開発・生産機能を四日市工場(三重県)に一本化し、韓国サムスン電子ともほぼ互角に渡り合える体制を築いた。

 フラッシュメモリーはスマートフォンなどに搭載され、需要は伸びている。東芝は今月、四日市工場内で新生産棟の建設に着手、総額4000億円とも目される巨額の投資を実行し、増産を急ぐ。

 「電子の目」と呼ばれる画像センサー半導体で世界シェア1位のソニーの軌跡も、東芝によく似ている。ゲーム機用の半導体などから撤退し、もともと強みのある画像分野に特化した。

 反対に、NECや日立製作所の半導体事業の統合で発足したルネサスは事業の絞り込みが足りず、収益の核になる強力な商品が育たなかった。

 利益の出ない企業は投資もできない。経営再建中の同社は主力の鶴岡工場(山形県)の売却をめざしたが、設備が古いことが嫌気され、買い手がつかず、最後は閉鎖の決断を余儀なくされた。

 各社の盛衰を決めたもう一つの要因は顧客基盤の広がりである。こちらは「選択と集中」とは逆に、なるべく幅広い顧客層を持つことが、経営の安定につながる。

 ルネサスはゲームや通信など特定少数の国内メーカーへの依存が強く、納入先の経営不振がルネサスの業績悪化に拍車をかけた。内向きの体質から脱却し、広く世界に事業機会を求める会社に変身することが、再生には欠かせない。

 半導体の歴史を眺めて改めて実感するのは、「経営」の重要性である。10年前の時点で、各社の技術力や人材の厚みにそれほど大きな差はなかった。違ったのは、一時的な痛みを伴ったとしても、先を見据えた戦略的な決断ができたかどうかである。

クロマグロ保護は日本から

 太平洋にすむクロマグロの数が急速に減少している。質の高い「トロ」がとれるクロマグロの減少は日本に責任がある。政府は水産関係者や流通企業と協力し、資源量の回復をめざしてほしい。

 日米の科学者などでつくる北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)の調べで、1990年代前半にいったん回復した親マグロの数は90年代後半から減り続け、過去最低の水準に近づいている。

 同委員会は、成熟する前のマグロを巻き網漁などで大量にとってしまう影響が大きいと指摘する。

 20年近く生きるクロマグロは、3~5歳で卵を産めるようになる。だが、現在の漁獲はそれより若いマグロが9割強を占める。このままでは資源の回復は見込みにくく、絶滅の懸念が強まる。

 クロマグロの未成魚は地域によって「メジ」「ヨコワ」などと呼ばれる。成魚に比べ安い価格で取引されるため、手ごろな商材として人気があるという。だが、こうした未成魚の消費が、資源危機を招いていることを流通企業や消費者も考える必要がある。

 国際的な資源管理機関、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は9月2日から福岡市で会合を開く。日本政府はそこで未成魚の漁獲削減案を示す考えだ。

 広い海域を回遊するマグロ類の保護に、各国の協力は不可欠だ。ただ、同じマグロ類でも欧米や新興国で缶詰用の需要が増えるメバチと違い、クロマグロの消費は日本が8割を占める。各国の協力を得るためにも、日本が小規模な沿岸漁業も含めた漁獲規制を確実に実行しなければならない。

 天然資源に頼らずにすむ、完全養殖技術の向上も重要だ。しかし、資源量が大幅に減ってしまった以上、とる量を減らし、資源を回復させることが優先課題だ。

 地中海・大西洋域では、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)で決めた厳格な漁獲規制が奏功し、クロマグロの資源量は回復してきている。太平洋でもできるはずだ。

全国学力調査―ランキングから卒業を

 そろそろ順位に一喜一憂するのは卒業したい。6回目になる全国学力調査の結果をみて、そういう思いを深くする。

 毎度ランキングが注目を集めるが、実は都道府県の成績に大差はない。ほとんどが平均点前後の狭い範囲に集中している。小学校も中学校も、国語も算数・数学もそれは変わらない。しかも差は年々縮まっている。

 わずかな差しかないのなら、細かな順位の違いそのものにこだわることもない。いつも成績のよい県や、ぐんと伸びた県の教え方を学んで手本にする。そちらに力を注ぎたい。

 今は都道府県別の成績公表にとどまっている。これを市町村ごとや学校ごとの公表にまで広げるべきか。文部科学省は首長や保護者らにアンケートを配って検討することにした。

 これまでは序列化を心配して渋ってきた。しかし、「税金を使う以上、市民には成果を知る権利がある」といった首長や保護者の声に押された。通う小中学校を選べる制度のある地域では、「学校選びの参考になる」という声もある。過去の国の調査では、学校ごとの公表に賛成する保護者が多かった。

 しかし、ここは慎重に考えよう。成績が市町村や学校の努力を反映しているとは限らない。

 お茶の水女子大が08年度に国の委託で行った調査では、年収の高い家庭の子どもは学力調査の成績がよく、進学塾に通う子はそうでない子より成績がよい傾向がくっきり出た。

 県から市、さらに学区と単位を細かく区切るほど、豊かな家庭の集まる地域かどうかの影響は色濃く出る。

 ある学校の成績がいいから教え方がいいのかと思いきや、塾に通う子が多いだけだった。そういうことは大いにありうる。逆に、順位は低くても年々上向いているなら、学校の教え方がうまい可能性が高い。

 各校の単年度の成績を見てもそういうことはわからない。少なくとも何年か変化を追って成績の伸び具合を示すくらいの工夫をしないと、学校の努力ぶりは見えてこないだろう。

 自治体独自の学力調査で学校別の成績を公表した例はある。

 あの地域は学力が低い、とネットに書き込まれる。成績を気にして、試験中に先生が生徒に間違いを示唆する。実施した自治体ではそんなことも起きた。

 子どもたちの苦手を知り、わかる教え方を工夫するためのテストだ。過去の自分たちと比べてどれだけ伸びたか。ほかの地域や学校との比較より、そこにこだわったほうがいい。

花火会場事故―火災予防策は法制化で

 お盆の夜、京都府福知山市の花火大会会場で起きた爆発事故は、3人が死亡し、50人以上が重軽傷を負う惨事になった。

 約80年前に始まった一大イベントで、10万人超が集まる。やけどを負った人たちだけでなく、目撃者も心のダメージに苦しんでいる。

 屋台の飲食店を出していた男性が、ガソリン携行缶の内圧を下げる作業をしないまま発電機に給油しようとし、噴き出したガソリンに引火した疑いが強まっている。

 ガソリンは零下でも気化するほど燃えやすい。高温の夏場はいっそう危険だ。認識が甘すぎたというしかない。改めて注意を呼びかけたい。

 携行缶や発電機は、観客が座るスペースに置かれていた。地元の商工会議所を中心とする大会主催者は、露店の配置を露天商の組合に一任していた。発電機や消火設備の有無も把握していなかった。

 露店はイベントにつきものだが、各地を巡業する露天商が多いこともあって、店の配置や防火対策は組合任せになっていることが少なくない。

 ただ、観客が多く混み合うほど、不注意な火気取り扱いが大事故につながる危険性は増す。電源はできるだけ主催者側が用意し、ガソリンや発電機の持ち込みは規制するなど、今すぐ手をつけられることもある。主催者は露店も含め、会場全体の防火対策に責任をもって取り組むべきだ。

 行政によるチェックも強化していくべきだろう。

 現在の法令では、露天商らが少量のガソリンを扱う場合、届け出る必要はない。消防活動に支障が出る恐れがあるとして露店に届け出を求める自治体もあるが、福知山市の条例にはそうした規定はなかった。

 京都府は先週、露天商らに事前講習を義務づけるなど、法的な火災予防策を充実するよう総務相に要望した。

 多くの人が集まり、火気も取り扱うイベントは、消防への事前申請を義務づけ、火気を扱う店の配置や初期消火体制、避難誘導計画などを審査させてはどうか。開催直前に消防職員が会場を見回り、露天商らを直接指導するのも一案だろう。

 今回の事故後、すでに多くの消防がイベント会場での指導を強化している。法制化してそれをしっかり定着させることだ。

 ガソリン携行缶の事故は一般家庭でも絶えない。使用者が手順を誤っても、噴出を防ぐ工夫ができないものか。国は業界に改良を働きかけていくべきだ。

潘国連事務総長 資質問われる偏向「介入」発言

 耳を疑うような国連事務総長の発言である。

 潘基文事務総長が、韓国外交省で記者会見し、「歴史をどう認識すれば未来志向的に善隣友好関係を維持できるのか、日本の政府、政治指導者には、深い省察と国際的な未来を見通すビジョンが必要だ」と述べた。

 韓国人記者から、歴史認識や領土問題を巡る日中韓の対立と日本の憲法改正の動きについて、国連および事務総長としての見解を質問されて、答えた内容だ。

 潘氏は、韓国の盧武鉉政権時代に外相を務めたベテラン外交官だ。だが、今は国連事務総長として、特定の国にくみしない中立性、公平性が求められている。

 潘氏は韓国や中国の政治家には触れなかった。日本の政治指導者だけへの言及は、あたかも北東アジア地域のあつれきの原因が日本にあるかのように、世界中で受け取られかねない。一方的で、問題ある発言と言わざるを得ない。

 事務総長の会見は、国連公用語の英語かフランス語で行われるのが通例だが、今回は異例にも大半が韓国語で行われた。

 潘氏は、「歴史に正しい認識を持ってこそ、他の国々から尊敬と信頼を受けるのではないか」と、暗に日本に注文も付けた。

 「正しい歴史認識を持て」と、日本に戦前の歴史に向き合うよう執拗しつように求める韓国と同じ言い方である。韓国の肩を持つ発言だ。本来、様々な紛争や対立を調停する立場の事務総長が、対立をあからさまにあおってどうするのか。

 歴史は、「正しい認識」でひとくくりにできないものだ。

 菅官房長官は、「地域の平和と安定のためには首脳同士が意見交換することが必要だ」との安倍首相の発言を引いて、「こうした日本の立場を認識した上での発言なのか、非常に疑問を感じている」と述べた。当然の反発である。

 政府は、潘氏に発言の真意をただし、日本の立場が世界で誤解されぬよう、国連などの場で、積極的な発信に努める必要がある。

 戦後70年近く、日本は一貫して平和と繁栄のために努力してきた。これまでの日本の戦後の歴史を、潘氏はどう評価するのか。

 1965年の日韓基本条約は、戦後の日本と韓国の関係を規定する国際協定として確立している。請求権問題は解決ずみなのに、韓国は、元徴用工への賠償や元慰安婦問題を蒸し返してやまない。

 国際機関に籍を置くなら、潘氏は、韓国の常識は世界の非常識であると韓国に伝えるべきだ。

シリア内戦 化学兵器疑惑の徹底解明を

 シリア内戦では、犠牲者がすでに10万人を超えた。まして化学兵器が使用されたとすれば、一刻の猶予もなく流血を止めなければならない。

 シリアの反体制派組織「国民連合」によると、アサド政権軍は21日、ダマスカス郊外に化学兵器を搭載したロケット弾を撃ち込み、多数の市民が犠牲になったという。負傷した子供たちの動画もインターネットで公開された。

 政権側は、これを全面否定し、化学兵器攻撃を行ったのは反体制派だと主張している。

 化学兵器の使用は、明白な国際規範違反である。事実が確認されれば、責任が厳しく問われなければならない。

 シリアに入っていた国連調査団は、現地で化学兵器が使われたかどうかを確認する作業に入ったが、何者かに車両を銃撃される妨害に遭い、難航している。

 安倍首相が、外遊先のクウェートで「国連調査団の現地調査が妨害なく遂行され、事実関係が早期に明らかにされることを望む」と語ったのはもっともである。

 調査結果は、安全保障理事会での討議に付される見通しだ。安保理は、調査結果を踏まえて、化学兵器疑惑を解明し、シリアへの対応措置を講じる必要がある。

 米国は、アサド政権側が化学兵器を使用したとみなし、国連の調査結果を待たず、英国やフランスなど北大西洋条約機構(NATO)諸国との間で、政権側に対する軍事攻撃の検討に入った。

 オバマ大統領はこれまで、シリア内戦への米国の直接関与について、慎重な態度を取ってきたが、強硬姿勢に転じつつある。

 化学兵器の使用は「越えてはならない一線」とアサド政権に強く警告してきたからでもあろう。化学兵器使用を黙認すると、米国の威信に傷が付く。世界の他の地域にも使用が広まりかねない。

 ただ、米国務省は、「政治的解決」の重要性も強調している。軍事行動を決定する前に、一層の外交努力の積み重ねが求められるのは言うまでもない。

 疑惑の解明と並行して、自国民への攻撃をやめようとしないアサド政権への国際的圧力をより強化し、内戦の収拾を改めて目指すことも重要だ。

 6月の主要8か国首脳会議は、シリアの和平に向け、政権と反体制派、関係各国による国際会議の開催で合意している。早期の会議実現が望まれる。

 シリアをめぐる国連と国際社会の動向を注目したい。

2013年8月27日火曜日

春秋

 昭和の文芸評論家、山本健吉が戦後日本の三大愚行を挙げたそうだ。旧仮名を新仮名にしたこと。尺貫法をメートル法に変えたこと。そして住居表示法施行による地名の改悪。前ふたつは愚行と決めつけがたいが、地名改悪だけは「その通り」と両手を挙げて賛成する。

▼山本の話を小紙「私の履歴書」で紹介した民俗学者の谷川健一さんが死去した。民俗学は森羅万象をさばくもので、まして「谷川民俗学」という独自の目を持った人だ。為したことのすべてを門外漢が知ることはできぬ。ただ、地名の安直な改竄(かいざん)に憤り、古い地名を守るため力を尽くしたことは記憶しておかねば、と思う。

▼谷川さんは1970年代末から80年代にかけて、市民組織の「地名を守る会」と研究機関の「日本地名研究所」をつくり、このふたつを拠点に行政の施策に抗する活動を続けた。本人は「長年の努力をあざ笑うような奇妙奇天烈な地名の横行」を嘆いていたが、それでも、碩学(せきがく)の行動力が歯止めになったことは間違いない。

▼地名とは。「日本人が大地につけてきた足跡である」「もっとも身近な民族の遺産である」「時間の化石である」「大事にされないのは水と同じである」。谷川さんは言葉を変えて繰り返し訴えた。足跡を消し化石を壊せば取り返しはつかない。92年の生涯は、奇妙な名にあぜんとしながらの喪失感との闘いでもあったか。

派遣で働く人たちが使いやすい制度を

 派遣という働き方を規制しようとの考え方が根強く、かえって雇用を減らしかねない。労働者派遣制度のあり方を検討してきた厚生労働省の研究会報告にはそんな心配を抱く。法改正を議論する労働政策審議会は派遣労働者の雇用確保を念頭においてもらいたい。

 労働者派遣法は1985年の制定当初から、正規雇用以外の働き方は不安定で望ましくないとの立場をとって派遣を制限してきた。

 今回の報告書は働き方が多様になり正規雇用を希望しない人もいるとして、派遣労働に一定の理解を示した。民主党政権下では仕事があるときだけ契約を結ぶ登録型派遣や製造業への派遣を禁じる動きがあったが、経済や雇用面の影響への懸念などから禁止を求めなかった。これは妥当な判断だ。

 だが、派遣を制限して正規雇用への転換を促すという制度発足時からの考え方は変えていない。問題は派遣期間を限られずに働ける人たちが減りかねないことだ。

 現在その対象は通訳や秘書など「専門26業務」に就く人で、派遣会社との契約が期間の定めのない無期雇用か、有期雇用かを問わない。26業務で働く人は2011年6月現在で64万人と、派遣労働者全体の半分弱にあたる。

 報告書は専門26業務という分類を廃止し、派遣期間を制限しないのは派遣会社に無期雇用されている場合とするよう提言した。無期雇用契約を結ぶ派遣労働者は2割強にとどまる。このため専門26業務に就いている人がすべて、今後も派遣期間を限られないようにするには、無期雇用をもっと増やさなければならない。それが派遣会社に可能かは疑問だ。

 30日以内の短期派遣が昨年10月から原則禁止になったことについても再検討を求めなかった。家計を助けるため短期間でも働きたい主婦らのニーズに応えられるよう、この規制は見直すべきだ。

 派遣労働は仕事内容が正社員とあまり変わらないのに、賃金などの処遇に格差がある場合が少なくない。報告書も求めるように、派遣労働者を受け入れる企業は役割や責任に照らして、正社員と均衡のとれた処遇をするよう配慮すべきだ。正社員への転換を望む人については自助努力がかなうように職業訓練の充実などが必要だ。

 同時に、派遣という働き方を選ぶ人にとって制度を使いやすいものにしたい。その視点が審議会の議論に欠かせない。

投票したくなる選挙にしよう

 選挙への関心の低下が著しい。25日の横浜市長選の投票率は過去最低の29.05%。この10年の政令指定都市の市長選では最低だった2005年の名古屋市長選(27.50%)並みの水準だった。

 民主主義は選挙を通じて民意を束ねる仕組みだ。投票は権利であると同時に主権者たる国民が担う役割でもある。面倒くさい、暑くて出歩く気がしない、などの理由で棄権するのは無責任だ。

 最近の選挙が選択肢に乏しいのは否めない。国政では与野党として対峙する自民・公明と民主が地方選では相乗りすることが多く、有力候補の信任投票になりがちだ。今年は山形と秋田の知事選で現職に挑む対抗馬が現れず、無投票で当選が決まった。

 優れた指導者も競い合いがないと惰性に流されるものだ。公職に任期があるのは仕事に緊張感を保つための知恵でもある。

 横浜市長選では投票所設置などで約10億円の税金が費やされた。無投票でよいではないか、そのカネでもっと保育所をつくれ、という声も耳にした。無投票当選ばかりになれば権力への監視の目が行き届かなくなる。選挙経費は未来のよい政治への先行投資だ。

 投票率上昇には選挙運動を活発にすることが大事だ。ネット選挙は候補者への成りすましなどが心配されたが、参院選をみる限りさほど支障はなかった。まだ禁止されている有権者個人のメールによる投票呼びかけは解禁してよい。

 公職選挙法は買収・供応が横行した時代の産物であり、あれも禁止、これも禁止になっている。ビラの配布枚数は制限され、戸別訪問は禁じられ、街頭活動は午後8時まで。原則自由に転換すれば選挙をもっと身近にできるはずだ。

 深夜に街宣車で住宅地を騒がす候補が出ると懸念する向きもあろう。有権者の歓心を買うことが目的の選挙において周囲を不快にする活動は必ず淘汰される。今度の選挙はなんか面白そうだ、投票に行くか。そう思わせるような選挙を少しずつでも増やしたい。

患者ビジネス―医療の押し売りは困る

 施設で暮らす高齢者や、鍼灸(しんきゅう)院に通う患者を医師にまとめて紹介し、見返りに医師から金を受け取る。そんな患者紹介ビジネスが広がっている。

 高齢化が進み、病院以外の施設や在宅で治療を受けるお年寄りは増える。患者と医師との仲介機能が求められるのは不自然ではない。

 しかし、医師が患者集めに紹介料を払うことは、公費のむだ遣いや過剰診療を招きかねず、看過できない。

 医師に払われる診療報酬は、たとえば訪問診療は1回8300円というように、公的に決まっている。それによって医療経営が成り立っている。

 診療報酬の原資は国民が負担する保険料と税だ。病気やケガをした時に助け合うため、保険加入者や雇用主が拠出する貴重なお金である。直接、医療を提供するわけでもない業者に払う余裕はないはずだ。

 医療の質が低下するおそれもある。

 普通の商品やサービスと比べて、医療は専門性が高い。一般的に、どんな治療が必要なのかは素人の患者には判断できず、医師に任せるしかない。

 だからこそ医師には、患者の利益を最優先する高い職業的倫理が求められている。

 ところが、本来、想定されていない費用(紹介料)を払うとなると、不必要な診療の「押し売り」や手抜きへの誘惑が高まるだろう。

 実際、鍼灸院に患者を集めていたケースでは、報酬が高めの訪問診療を偽装したり、診療回数を水増ししたりするなど、不正請求の疑いが濃い。

 国が後押しする「サービス付き高齢者住宅」などの施設が増えると、紹介料をやりとりしながら、患者を囲い込む動きが広がる可能性がある。

 第三者が患者と医師とを仲介する場合のルールづくりが必要だ。あくまで患者の側に立つことを大原則とし、誰がその仲介機能を果たし、どう規制をかけていくか。議論を急がなければならない。

 今月まとまった社会保障国民会議の報告書は、患者が「かかりつけ医」を持ち、そこで必要な医療を判断し、適切な病院を紹介する姿を描く。

 医療全体の効率性を高めるための提案だが、かかりつけ医との間で長期的に信頼関係を築くことができれば、患者のメリットは大きい。地元医師会も積極的に役割を果たすべきだ。

 不透明な患者紹介ビジネスを排除する対策は、医療の将来像と深く結びついている。

特別養子制度―善意に頼るだけでは

 親のない子と、子育てを望む大人との縁を結ぶ。その大切な役割にもっと目を向けたい。

 原則6歳未満の子どもを対象にした特別養子という制度がある。家庭裁判所が、普通養子より強い、実の親子並みの法的な関係を認める制度だ。

 創設されたのは25年前。親子関係を結ばないまま育てる里親制度とともに、児童福祉として位置づけられた。だが、最初の3年間は年約700~1200件が認められたものの、近年は300件台にとどまる。

 希望者は多いのに、なかなか縁組には至らない。仲介を中心的に担うと考えられていた児童相談所が児童虐待の対応などに追われ、十分手が回っていないことが背景にある。

 そんな中、民間団体が仲介するケースが増えている。厚生労働省によると、07年度の22件から11年度は127件になった。

 昨年度、養子縁組をあっせんしていると届け出たのは14団体。産婦人科医など、望まない妊娠をした女性や、親が育てられない赤ちゃんと接点がある人たちがかかわっている。

 だが、公的な関与も支援も乏しく、これらの団体の善意に頼っているのが実態だ。

 営利目的での養子縁組仲介は禁止されている。一方、厚生労働省は、交通費などの実費以外に、人件費なども養父母から受け取っていいとしており、上限も設けていない。団体の活動費とあいまいになり、運営が不透明になりかねない。

 7月には、実費を超える寄付金を養父母から受け取ったとして、2団体が東京都の立ち入り調査を受けた。

 仲介を非営利の枠組みに頼り切ること自体、無理があるのではないか。

 例えば、養子に出す実親の気持ちが揺れ、その間の保育料が予想より高額になることがある。養父母に引き取られるまでの保育に児童相談所が協力するなど、自治体がもっと連携できないか。仲介の社会的な役割を考えれば、公的助成をする検討もしていいのではないか。

 実の親の同意をえ、養父母を選んでいく過程には専門性がいる。子どもがのちに「実親について知りたい」と訪ねてくるかもしれず、継続して活動していく必要もある。活動の質を保つためどんな手助けができるか、考える時期だろう。

 政府は里親制度を推進しているが、保護を必要とする子どもの9割近くは児童養護施設や乳児院などの施設で暮らす。できるだけ家庭という環境を用意するのは、社会の責任である。

薄煕来被告公判 中国権力闘争の危険な火種だ

 中国の習近平・共産党総書記が権力基盤を固める上で、この問題の決着は避けて通れない。

 収賄、横領、職権乱用罪に問われた重慶市党委員会元トップ、薄煕来・元党政治局員の事件のことだ。

 山東省で開かれたその公判は、薄被告がすべての罪を全面否認し、習政権と真正面から対決する姿勢を崩さぬままに結審した。

 習政権は腐敗撲滅を強調しており、薄被告を腐敗の象徴として断罪する思惑があったのだろう。

 一党独裁体制の中国では、司法も共産党の指導下にある。初公判は、習指導部が正式に発足した後、党長老らも加わる夏の重要会議の終了を待って設定された。

 審理の模様を中国版ツイッターで中継する異例の対応をとり、「公正」さもアピールした。

 裁判は、周到に準備した「政治ショー」のはずだった。

 ところが、党の取り調べで一部容疑を認めていた薄被告は、態度を一変させた。背景には、党内左派の強い支持があろう。

 党指導部に逆らった薄被告の罪を、裁判で明確にすることによって、党内意思を統一しようとした習氏には誤算だったと言える。

 薄被告は高級幹部の子女グループ「太子党」の有力者だった。重慶市トップの書記時代には、経済人らに「暴力団」のレッテルを貼って弾圧する一方、低価格の住宅提供など弱者対策に公金を投入して、一躍、人気を博した。

 狙いは、党最高指導部の政治局常務委員になることだった。だが、権力者が利権と富を支配する格差社会に憤る大衆の歓心を買う政治手法は、政権批判とみなされ、当時の胡錦濤政権と対立した。

 薄被告も清廉潔白には程遠い。側近が米総領事館に駆け込んだ事件を契機に、妻の英国人殺害事件も発覚した。中国権力層の利権絡みの乱脈ぶりを示すものだ。

 にもかかわらず、ネット上では薄被告支持の声が相次いでいる。社会全体に経済格差への不満がくすぶる実情の表れとも言える。

 薄被告の重刑は避けられまい。ただ、量刑が軽すぎても重すぎても政権批判を招く恐れがある。習氏も同様の政治手法をとっているからだ。対応の誤りは、権力闘争の本格化に直結しかねない。

 中国政治の混乱は、世界経済に大きな影響を及ぼす。国民の不満をかわし、求心力を強めようとして、習政権が日本への威圧外交を強める事態も懸念される。

 この裁判の帰趨きすうを注視しないわけにはいかない。

NISA 投資活性化の呼び水にしたい

 現金や預金として滞留する個人金融資産を投資に誘導し、経済を活性化させる契機としたい。

 年間100万円までの株式投資などについて、売却益や配当を非課税とする新税制「NISA(ニーサ)」が、2014年1月にスタートする。

 証券会社や銀行などの金融機関は、すでに新たな顧客獲得を目指す動きを本格化させている。

 サービス競争で株式市場が活気づくのは歓迎だが、強引な勧誘などは控えるべきである。

 NISAが個人投資を根付かせる呼び水となるよう、利用者の声にもしっかり耳を傾け、大事に育てることが大切だ。

 金融機関にNISAの専用口座を開設できるのは、日本に住む20歳以上の人だ。非課税期間は5年間で、毎年100万円ずつ口座を開けば、非課税枠は500万円まで拡大できる。

 日本の個人金融資産は約1600兆円と巨額だ。ただし、その半分以上は現金と預金で占められている。企業の活動資金となる「株式・出資金」の比率は約8%にとどまり、米国の34%や欧州の15%よりはるかに低い。

 NISAに後押しされる形で、個人資金が株式市場に流入していけば、企業の成長促進にとって有益だ。資産形成のため、個人の長期投資が広がることは、株価の安定にも役立つだろう。

 NISAのお手本となった英国の「ISA」の場合、口座開設者が人口の4割に達するという。

 日本でも普及させるには、金融機関が顧客に、丁寧に説明することが不可欠といえる。

 営業ノルマを優先し、メリットばかり強調するのではなく、投資に伴うリスクや短所も、きちんと伝える姿勢が求められる。

 例えば、株式や投資信託が値下がりして損失を出すと、非課税の恩恵は受けられない。投資信託しか扱わない会社で口座を開くと、株式の個別銘柄などには投資できないという問題もある。

 NISAを始める人は、口座をどの金融機関に開くか、よく考えて選択してもらいたい。

 NISAは原則1人1口座で、当初4年は毎年、同じ金融機関でしか口座を開けない仕組みだ。利用者には不便なうえに、金融機関が顧客の囲い込みに必死になる要因とも指摘される。

 金融庁は、口座を開設する金融機関を毎年変えられるよう改める方針という。NISAの利用拡大を図るためにも、政府は制度の手直しを検討すべきだ。

2013年8月26日月曜日

使い手の知恵引き出す電力市場に

 8月も後半というのに猛暑が続く。原子力発電所の事故から3度目の夏を迎えても、電力供給は綱渡りだ。電力は経済の血液である。安定供給の実現には供給力を高めるのはもちろんだが、企業や家庭が無理なく消費を減らす工夫を忘れてはならない。

利用分散しピーク抑制
 かぎとなるのは需要が最大になる瞬間、すなわちピークをどう抑えるかだ。電力の利用を分散させて需要の山と谷の差を小さくし、変動をなだらかにできれば、電力会社は余分な発電設備を持たずに済む。発電コストの低減は料金の引き下げにつながる。

 ただし、無理を強いては長続きしない。使い手の節電への意欲を引き出すことが重要だ。

 NTTファシリティーズと新電力のエネット(東京・港)は、7月から「節電お出かけ情報」の提供を始めた。

 電力需給の逼迫が予想される日に使える映画館や水族館、プラネタリウムなどの割引券を、電力の供給契約を結んでいる家庭へ前日に配信するサービスだ。

 消費者は自宅の電気やエアコンを消して外出し、涼しい施設で楽しくすごせる。節電した分は電気料金の支払いにあてられるポイントになる。エネットは需要の増大に備えた供給力を持たずに済み、施設側は集客につながる。

 現行法の下では、サービスを受けられるのはエネットから一括して電気を買うマンションなどに限られる。しかし、政府は2016年をめどに電力小売りを完全自由化する。今は地域の電力会社からしか買えない家庭も自由に電力会社を選べるようになる。

 電気という商品も、様々な発想で価格やサービスを競う時代になる。米国では消費者が電力のピーク時にエアコンを止めたり、出力を半分にしたりすれば、電力会社からお金がもらえる料金メニューがある。日本も節電を促す知恵を競わなければならない。

 地域単位でエネルギー消費を最適化する取り組みも有効だ。

 三井不動産を中心に、企業や自治体、大学が千葉県柏市で開発中の「柏の葉スマートシティ」。住宅約2000戸や商業施設、オフィスなど、4カ所に分かれた地区のエネルギーの使用状況を一元的に管理するのが売り物だ。

 太陽光発電設備や大型蓄電池を備え、地区間で電力をやりとりして全体の消費をならし、外部の電力会社から買う量を減らす。

 住民は電気やガス、水道の使用量を示すモニターを通して自分の節約度合い、さらには居住者の中でどんな順位かがわかる。節電目標を達成すれば、地元の商業施設で使えるポイントがもらえる。

 導入済みの家庭での実験では、温暖化の要因となる二酸化炭素の排出量が柏市の平均世帯より15~20%少なくなった。住民が互いに節電意識を高め、街の活性化も促す仕組みだ。

 北九州市や愛知県豊田市などでも大規模なスマートコミュニティー(環境配慮型都市)の実証事業が進んでいる。これらの経験を各地に広げることが大事だ。

 現行制度では事業者がスマートコミュニティー内で電力を供給する場合、必要となる電源の50%以上は自分で用意しなければならない。太陽光など再生可能エネルギーを電源として計算することも認められていない。普及の重荷となる規制を国は見直す必要がある。

自治体も担い手に
 自治体の役割も大きい。栃木県足利市は昨年、市役所や学校などの公共施設で率先して節電に取り組み始めた。そこで浮いた電気代は、家庭が省エネ機器などの購入に使える金券として分配する。

 自治体の取り組みが市民の省エネを促し、「節電の輪」を広げていく。

 公共施設の屋根を太陽光発電の事業者に貸し出し、そこで得た賃料を自然エネルギーの導入補助金に回すことを検討する自治体もある。これまで節電や省エネの担い手は主に企業や家庭だったが、自治体も新たな制度づくりなどで関与できる余地は大きいはずだ。

 スマートコミュニティー技術は電力消費が急増している新興国のほか、温暖化ガス削減のため欧米各国も導入を急いでいる。省エネで先行した日本はこの分野で高い技術力をもつ。これをうまく育てて国際標準を握り、輸出産業に育てていく発想も重要だ。

原子力機構―もんじゅ推進は愚かだ

 原子力の研究開発でいま力を入れるべきことは何か。文部科学省は最も重要なポイントがわかっていないのではないか。

 問題続きの日本原子力研究開発機構について、文科省が改革の基本方針をまとめた。

 依然として、高速増殖原型炉「もんじゅ」を中心とした核燃料サイクルの研究開発を、優先業務の一つに掲げている。

 的外れもはなはだしい。福島の原発事故の影響を直視し、一日も早く幻想を捨てて政策を転換すべきだ。

 そもそも原子力機構が抜本改革を求められたのは、もんじゅで大量の機器点検もれが発覚したためだった。

 文科省の方針では、もんじゅを民間の原発にならった「発電所」組織に改組し、運転管理には電力会社から出向などで加わってもらうという。

 だが、もんじゅは実用化以前の原型炉である。研究開発段階でのトラブルが最大のリスクである施設に、ルーチン化した運転管理の専門家をあてるのは、ちぐはぐのきわみだ。

 報告を受けた原子力規制委員会では「我が国の原子力を支える研究機関としての自覚とほこりが感じられない」など、厳しい批判が相次いだ。田中俊一委員長は、出身母体でもある原子力機構の現状に、「大変なときに規制委に役に立っているかというと、きわめて不満が残る」と述べた。

 原発事故は、原子力の研究開発に関する優先順位を一変させた。最も急がれるのは、文科省も指摘する通り、放射能汚染水の拡大防止など福島第一原発の事故対応だ。ヒト・モノ・カネの集中投入で、現在の危機的状況を改善しなければならない。

 一方、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す核燃料サイクルは、多くの原発が稼働することが前提になる。

 だが、事故の反省にもとづく規制強化で、原発の多数稼働はもうありえない。見通しの立たないもんじゅにかまけることはただちにやめ、事故対応や安全規制に役立つ技術開発と人材育成に全力をつくすべきだ。

 これは、文科省だけの問題ではない。事故から2年半が過ぎようとしているのに、原子力政策全体をどう改めていくのかをまったく示していない政府全体の責任である。

 原発事故で核燃料サイクル政策が崩壊している現実から目をそらしていては、眼前の危機への対応も遅れるばかりだ。

 安倍政権は、事故対応を中核にすえ、脱原発への見取り図を早急に示さなければならない。

道州制―分権の原点を忘れるな

 国のかたちや自治のあり方を大きく変える道州制の導入が、この秋以降の政治のテーマに浮上する可能性が出ている。

 日本維新の会とみんなの党が、道州制移行に向けた基本法案を先の国会に提出した。自民党も法案骨子をまとめ、公明党と共同で秋の臨時国会での提案を検討している。

 人口減少の中で地域の暮らしを守り、自治を発展させていくには、どうしたらいいか。議論を進めることには大きな意味がある。

 道州制が、その選択肢のひとつであることは確かだ。ただし、その目的や、政府と道州、市町村との役割分担を十分に吟味しないまま導入を急いでは、逆に中央集権を強めることになりかねない。分権の原点を踏まえた議論が欠かせない。

 各党が描く道州制のイメージはおおむね次の通りだ。

 都道府県を廃止し、10前後の道や州に再編する。政府の仕事は外交や防衛、金融といった国家の存立にかかわるものに極力限り、人々の暮らしにかかわることは道州や市町村に任せる。具体的な制度は「国民会議」をつくるなどして議論し、数年から10年程度で移行する。

 道州制は、戦前から何度も提唱されてきた。06年には首相の諮問機関の地方制度調査会が区割り案とともに「導入が適当」との答申を出した。

 それが具体化しなかったのは、明治から続く都道府県の枠組みを撤廃する大改革であると同時に、その目的が行政のスリム化や経済活動の効率化など論者によって異なり、焦点が定まらなかったことも一因だ。

 各党は中央集権の見直しや地方分権を掲げている。ただ、どこまで本気で体制を改めようとしているのかは疑わしい。

 中央政府の仕事を限定するなら、中央省庁の解体・再編、人材や財源の地方への移譲が伴わなければならない。国会議員の役割も変わる。だが、いまの政府や国会、とりわけ自民党にそうした機運や覚悟は見えない。

 前の野田民主党政権まで検討されてきた政府の出先機関改革が、省庁とその意を受けた政治家の抵抗などで進まなかったことが何よりの証拠だ。

 何のための道州制か。自治体への分権を進め、住民生活の向上につなげることが最も大きいはずだ。

 その視点を欠き、政治や行政の行き詰まり感を打破することが主目的となっては本末転倒だ。まずは地方へ権限を移す姿勢をはっきりさせる。それが道州制を論じる大前提だ。

首相中東訪問 資源確保へ戦略的協力深めよ

 エネルギー資源の安定的な確保に向け、日本が湾岸協力会議(GCC)各国と戦略的な協力を深める意義は大きい。

 安倍首相がGCC議長国のバーレーンを訪問し、ハリファ首相と会談した。日本とGCCの閣僚級戦略対話の開始や、事務レベルの安全保障対話の新設で一致した。戦略対話は9月にも開かれる見通しだ。

 GCCは、同国と、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、オマーンの計6か国で構成される。安倍首相は、今春にサウジとUAEを訪れており、今回はカタール、クウェートも歴訪する。

 原子力発電所の再稼働が進まずにエネルギー需給が逼迫ひっぱくする中、日本が原油の年間輸入量の7割超をGCC各国に依存していることを踏まえたものだ。

 原油などを運ぶペルシャ湾の海上交通路(シーレーン)は、日本にとって死活的な重要性を持つ。戦略対話では、シーレーンの安全確保策や海賊対策などを継続的に協議することが大切である。

 1月にはアルジェリアで邦人人質事件が発生した。中東・アフリカの過激派によるテロ情報の共有・交換も着実に進めるべきだ。

 安倍首相は、中国、韓国との首脳会談ができない中、対中東・東南アジア外交を重視している。こうした中堅国との関係を強化することは、中長期的に日本外交の貴重な“財産”となるはずだ。

 中東では今、エジプト、シリア情勢が悪化する一方、イランの核開発問題の協議や中東和平交渉が続く。日本のGCCとの戦略的関係の構築は、中東全体の安定に向けた側面支援にもつながろう。

 首脳会談では経済分野で、日本とGCCの自由貿易協定(FTA)交渉の再開や、農業・鉄道・医療分野の協力拡大で合意した。

 安倍首相の歴訪には、50人規模の民間企業関係者らが同行している。2022年にサッカー・ワールドカップを開催するカタールをはじめ各国で、大型の社会資本整備が予定されているためだ。

 日本、GCC双方の利益となるよう経済面の連携を進めたい。

 首相は27日にジブチを訪れ、アデン湾で海賊対処行動に従事する海上自衛隊員を激励する。海自は護衛艦とP3C哨戒機を派遣し、日本の存在感を高めている。

 首相の激励は隊員の士気を高めよう。首相は従来、自衛隊の役割を高く評価し、各地で部隊訪問を重ねている。今後も、こうした姿勢を維持してもらいたい。

「大阪都」構想 自治再生に心許ない制度設計

 「大阪都」構想の全体像が見えてきた。地方自治の形を変える大きな試みだ。日本維新の会の橋下共同代表の原点と言える政策であり、実現への手腕が問われよう。

 橋下氏と松井一郎大阪府知事が提示した制度設計案は、大阪市を廃止し、5か7の特別区に再編する。大阪市長、市議会は姿を消し、東京23区と同様、選挙による区長と区議会が生まれる。

 「大阪都」は経済政策や都市基盤整備など広域行政を進め、特別区は地域に密着した施策を担う。役割分担を明確にし、行政効率を高めるのが目的だ。

 大阪では、権限がほぼ同等の府と政令指定都市である大阪市が、似通った事業を続けてきた。

 橋下氏は、大阪市を廃止して司令塔を一元化することで「二重行政」の弊害が解消し、都市戦略の推進力も向上すると主張する。

 だが、自治を再生するために実効性のある制度改革となるのか。この制度設計では心許もとない。

 市から特別区への移行費用は巨額にのぼる。庁舎の改修、コンピューターシステムの変更といった初期費用だけで最大640億円、多数の区議会議員の報酬など新たな経費も発生する。こうした財源をどう捻出するか。

 特別区の間では、立地企業数などによって税収格差が生じる。その差を縮めるための財政調整が課題となる。調整財源として国からの地方交付税も当て込むが、国の理解を得るのは容易ではない。

 肝心の区割りも、4案提示されていて、確定していない。住民感情や市議会議員の思惑が絡み、難航必至である。

 府・市は2014年6月頃までに制度設計の最終案を協定書にまとめる。協定書は両議会での承認が必要だ。さらに来秋に想定される大阪市民の住民投票で、過半数の支持を得なければならない。

 何しろ、歴史と伝統文化に彩られた大都市を解体する事業だ。行政効率だけでなく、市民生活のメリットや、大阪の将来像も具体的かつ丁寧に説明できなければ、住民から承認は得られまい。

 「大阪都」は、大阪市と同じ政令市で隣接する堺市も将来、特別区とすることを想定している。

 このため、注目されるのが、9月29日投票の堺市長選だ。

 構想に反対する現職は、「堺市の分割につながり、地方分権に逆行する」と主張する。地域政党・大阪維新の会は新人を擁立して、構想実現を訴える構えだ。選挙結果は構想の行方に影響しよう。

2013年8月25日日曜日

アベノミクスの目指すゴールはどこにあるのでしょうか?

「デフレ、円高」から「インフレ、円安」へシフトさせることで景気を好転させ、経済成長を加速させることがアベノミクスの目的です。この政策が奏功すれば、90年代半ばの金利自由化以降、日本人がはじめて経験する金利上昇局面となるかもしれません。企業業績の拡大が持続するのであれば、短期的な浮き沈みはあるものの今後も株価の上昇が期待できると思います。生活者にとって注目すべきは、物価上昇率の目標を年率2%としていること。注意しなければならないのは、景気が回復して物価が上昇したとしても預金金利が同じように上がるとは必ずしも限らないという点です。金利自由化により銀行は貸付先である企業の資金需要を勘案して、独自に預金金利を設定できるようになりました。企業の資金需要の状況によっては、銀行の預金金利はあまり上がらない可能性があります。この場合、金融資産がインフレに対して目減りしていく可能性が高いと考えられます。金融資産が物価上昇率と同じ2%で運用できて、はじめてトントン。それ以上の利回りを狙いたいところですが、その水準が預貯金で期待できるのかということです。そうなると、デフレ時の発想を転換させた、新たな資産運用スタイルが必要となるのです。

民の創意工夫生む環境づくりこそ

 安倍晋三政権は第1の矢(金融緩和)と第2の矢(財政出動)で、経済再生の糸口をつかんだ。そのたすきを第3の矢(成長戦略)につなぎ、今度こそ「失われた20年」と決別する必要がある。

 成長戦略の肉づけ作業が始まった。秋の臨時国会には産業競争力強化法案を提出する。消費税増税と経済成長を両立できる効果的な施策を盛り込めるのか。ここがアベノミクスの正念場だろう。

疑問残る官の旗振り
 経済力は国力の源泉といわれる。富を生む基盤の強化は日本の魅力を高めることにもなる。その主役は民の創意工夫だ。企業や個人の活力を引き出す環境づくりが国の成長戦略の王道である。

 安倍政権がとりわけ企業の活性化を重視するのはいい。しかし政府が特定の産業分野を選別し、官製目標を掲げて育成策を講じる「ターゲティングポリシー」の色合いが濃いのは気にかかる。

 省エネ投資や先端技術の実証実験などに動く企業を国が審査し、条件つきで政策減税や規制緩和の特例を認める。一方で過当競争が解消しない業界を国が公表し、事業の再編を迫る――。そんな誘導政策が目立つのは確かだ。

 よく考えてもらいたい。成長分野や衰退分野の見極めが政府に本当にできるのだろうか。事業の現場に近い企業や個人よりも目利きの能力が高いとは思えない。

 米国のノーベル賞経済学者ミルトン・フリードマン氏の著書「選択の自由」にはこんなくだりがある。「不完全な市場は不完全な政府と同等か、それよりも良い成果をあげるかもしれないのだ」

 官の過剰な介入が民の手足を縛り、自由な競争や経済の新陳代謝を妨げるのが心配である。はしの上げ下ろしにまで注文をつけるような政策は慎み、民の障害を取り除く政策に徹した方がいい。

 世界銀行がまとめた2013年のビジネス環境調査によると、日本は185カ国・地域のうちの24位で、前年の20位から後退した。税制(127位)や起業(114位)への厳しい評価が際立つ。

 アベノミクスの効果もあって過度の円高は修正されたが、それだけで日本企業の重荷が解消するわけではない。海外の資金や人材を呼び込むためにも、自由貿易の推進や法人課税の軽減、大胆な規制緩和に取り組む必要がある。

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加は安倍政権の成果だ。慶大の木村福成教授らの研究によれば、輸出や直接投資には企業の生産性を押し上げる効果もある。こうした恩恵を享受できる自由度の高い協定を望みたい。

 踏み込みが足りないのは法人課税の軽減だろう。成長戦略の目玉に据えた投資減税も、景気のてこ入れには一定の役割を期待できそうだ。だが期限つきの政策減税の効果にはおのずと限界がある。投資規模が大きい重厚長大産業に恩恵が偏るという問題も残る。

 日本の法人実効税率は約35%(復興増税を除く)で、国際標準の25~30%よりも高い。幅広い産業に継続的な恩恵が及ぶ実効税率の引き下げを検討してほしい。

 医療や介護、農業の規制緩和をさらに進め、内需を掘り起こす必要もある。自由診療と保険診療を併用できる「混合診療」の原則解禁などに踏み切るべきだ。

企業改革も緩めるな
 安倍政権が企業の活性化に成功しても、雇用の増加や賃金の上昇につながらないと、成長の果実が家計に行きわたらない。そんな好循環をもたらす民の努力も要る。

 経営再建中のシャープは、13年4~6月期の決算で営業黒字を確保した。昨年導入した再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に支えられ、太陽電池事業が急成長したのが一因だという。

 一時的な政策効果や円安・株高による業績の改善を実力と勘違いし、多くの企業が経営改革の手を緩めてしまうのでは困る。社員や株主にも還元できるだけの収益を持続的に生むことが重要だ。

 企業にとってのキーワードは「開かれた経営」である。M&A(合併・買収)を通じて外部の経営資源を取り込み、成長市場に足場を築く。将来の展望が開けない事業はライバル企業に売却し、違う土俵で勝負する。こうした取捨選択こそが経営の核心だろう。

 民の努力が足りなければ、官に介入の口実を与える。ここは企業の踏ん張りどころでもある。

秘密保全法案―権利の侵害は許されぬ

 安倍政権は、秋の臨時国会に秘密保全法案を提出する。日本版NSCと呼ばれる国家安全保障会議の発足に向け、情報管理の徹底をはかる狙いだ。

 「防衛」「外交」「テロ活動の防止」などの分野で、国の安全保障に重大な支障を与える恐れがある情報を「特定秘密」に指定する。

 これを漏らした国家公務員らへの罰則は、通常の守秘義務違反より重い、最長10年の懲役が科せられる見通しだ。

 しかし、この法案にはあまりにも問題が多い。

 まず、特定秘密の適用範囲があいまいなことである。

 秘匿する情報は法案の別表に列記されるが、基本的な項目にとどまるとみられる。

 特定秘密を指定するのは、所管官庁の大臣など「行政機関の長」。大臣や長官が指定を乱発する懸念も拭えない。

 テロなどに関連すると判断されれば、原発の安全性や放射能の情報まで秘匿されることになりかねない。国民に知られたくない情報を、政権が恣意(しい)的に指定する恐れすらある。

 見逃せないのは、特定秘密を知ろうと働きかける行為も「漏洩(ろうえい)の教唆」とみなされ、処罰対象となり得ることだ。

 報道機関の取材を制約し、国民の知る権利の侵害につながりかねない。

 法案には、拡大解釈による基本的人権の侵害を禁ずる規定を盛り込む方向だが、人権侵害に当たるか否かを判断するのは国であり、その実効性は疑問と言わざるをえない。

 秘密保全の法制化は、3年前の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の際、海上保安庁撮影のビデオが流出したのを機に検討が始まった。

 テロ情報などを米国との間や政府内で共有することが必要な時代になり、情報管理に万全を期すことは当然だろう。だが、この法案では国の裁量が大きすぎて、歯止めがきかなくなる心配がある。

 現行の国家公務員法には守秘義務があり、防衛分野ではすでに一定の秘密保全制度が整備されている。まずは、これらを厳格に運用していくことが第一ではないか。

 「ひとたび運用を誤れば、国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとは言えない」

 秘密保全法案に関する政府の有識者会議が、2年前にまとめた報告書の一節である。

 このような異例の指摘が盛り込まれたこと自体、この法案のもつ危うさを示していると言えないか。

中小企業経営―後継者の「旬」を大切に

 経済成長には新規創業が重要だ。一方で、既存の企業がトップ交代で業績を伸ばすなら、その効果は引けを取らない。

 むしろ、経済の裾野を支える中小企業でこの新陳代謝のダイナミズムが働いてきたことが、日本経済の底力といっても過言ではないだろう。

 ところが、経営者の高齢化と世代交代の遅れが後継者の高年齢化につながり、企業活力の再生機能を弱らせていないか。そんな懸念が、今年の中小企業白書に紹介されているアンケート結果から浮かび上がる。

 調査によると、中小零細企業の経営者の引退年齢は70歳前後で高止まりしており、高齢になるほど、事業について守りの姿勢が強くなる。

 一方、後継者の平均年齢は51歳だが、「ちょうど良い時期に譲られた」と答えた人だけだと平均44歳弱。働き盛りの7年差はもったいない。

 事実、経営を引き継いだ後の業績を尋ねると、40歳未満で継いだ場合は「良くなった」が6割だが、50歳以上では4割前後に下がる。経営の若返りは地域貢献への積極性にもつながる。後継者の「旬」を外さず譲ることの大切さを示すデータだ。

 中小企業庁も「先代、後は私にお任せください!」と銘打って、世代交代と新規事業を促す補助金を導入した。

 現社長が代表を退くことなどを条件に、後継者の新規事業費を補助する。すでに認められた195件の77%が40歳代までの後継者だ。

 企業の大小にかかわらず世襲の割合は低下している。ただ、「後継者が頼りない」と引退を渋る経営者は少なくない。心配するのは無理もないが、高度成長期などでの自らの成功体験が後進の過小評価につながっていないだろうか。

 事業の承継をためらわせる背景には、相続などの税金問題や負債につけた個人保証の解除の難しさもある。

 税制ではさまざまな優遇措置があるが、個人保証ではかたくなな金融機関が多い。個人保証が経済の新陳代謝を妨げているとの批判は強く、代替わりを機に個人保証に頼らない融資に切り替える努力が求められる。

 帝国データバンクによると、日本には創業100年以上の企業が2万5千社近い。世界でも群を抜いて多いという。時代に合わせて商売の中身を変えてきた例も多く、「老舗(しにせ)は新店(しんみせ)」という言葉もある。

 実績ある企業が持つ、次代の起業家を生み育て、世に出す機能を、もっと伸ばしたい。

医療事故調査 機能する制度へ課題は多い

 重大な医療事故を防ぐための制度となり得るだろうか。解決しなければならない懸案は多い。

 病気の治療で患者が死亡した際、原因究明と再発防止を図る「医療事故調査制度」が作られることになった。

 厚生労働省は、専門家による検討会が公表した報告書を基に、制度の概要を定めた医療法改正案を取りまとめる方針だ。2015年度の創設を目指す。

 患者の信頼を得られる制度にすることが何より大切である。

 医療事故による死者は年1300~2000人と推計される。

 医療事故が起きた場合、患者側は損害賠償請求訴訟や刑事告訴など司法手続きによって原因解明を求めるのが一般的だ。

 だが、裁判では医師や看護師の責任の有無に判断の力点が置かれる。必ずしも事故の教訓が再発防止に生かされていない。

 新制度では、死亡事故が起きた医療機関に院内調査を義務付ける。医療機関は調査結果を患者側に説明すると共に、新設される第三者機関に報告する。

 遺族が院内調査の結果に納得できない場合は、改めて第三者機関に調査を求めることもできる。

 医療機関自ら事故原因を調べ、落ち度を認識することで、診療態勢の改善や安全確保につなげることは期待できよう。

 問題は、院内調査の客観性や透明性をどう確保するかである。

 過去の医療事故ではカルテ改竄かいざんの例もある。医療機関の隠蔽体質に対する患者の不信は根強い。

 厚労省検討会は、院内調査の中立性を担保するため、原則として外部委員を加える方針を示している。大学病院や地域の医師会に、外部委員の要員確保への協力を求めるべきだとも指摘した。

 だが、大学病院から医師の派遣を受けている医療機関も多く、“仲間内”が外部委員になる可能性もある。医療事故に詳しい弁護士や患者団体の協力も必要だろう。

 第三者機関のあり方にも課題がある。強制力のない民間組織のため、遺族が調査を求めても、医療機関が協力を拒めば困難になる。法律に基づく調査権限を持たせることを検討すべきだ。

 機関の運営は、政府の補助金などで行うが、調査を申請した遺族からも一定の負担を求める。経済的な理由で調査依頼をあきらめる事態は起きないのだろうか。

 患者の個人情報に留意しつつ、第三者機関に集まった情報を事故防止策に生かし、医療界で共有する制度設計が必要である。

「はだしのゲン」 教育上の配慮をどう考えるか

 原爆の悲惨さを描いた漫画家・中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」について、松江市教育委員会が市立小中学校に閲覧の制限を要請したことが波紋を広げている。

 現在、松江市内の大半の学校図書館では、教師の許可がないと子供が自由にこの作品を読むことができない状態が続いている。

 市教委は生々しい原爆被害の場面ではなく、旧日本軍にかかわる描写の一部を、過激で不適切と判断した。アジアの人の首を面白半分に切り落とす。妊婦の腹を切り裂いて、中の赤ん坊を引っ張り出す。女性を惨殺する、といった描写についてだ。

 成長過程の子供が本に親しむ小中学校図書館の性格を考えて、市教委がとった措置と言えよう。

 憲法は、表現の自由を保障し、検閲を禁じている。市民が広く利用する一般の公立図書館で蔵書の閲覧を制限することは、こうした観点から許されない。

 ただ、小中学校図書館を一般図書館と同列に論じることは適切ではあるまい。作品が子供に与える影響を考える必要がある。心身の発達段階に応じた細かな対応が求められるケースもあるだろう。

 下村文部科学相が「市教委の判断は一つの考え方。教育上の配慮はするべきだと思う」と述べたことはもっともである。

 「はだしのゲン」は、広島での中沢さん自身の被爆体験が基になっている。肉親を失った主人公の少年が困難に直面しながらも、たくましく生き抜く物語だ。

 1973年に週刊少年ジャンプで連載がスタート、掲載誌を替えながら、10年以上続いた。単行本はベストセラーとなった。約20か国語に翻訳・出版されている。

 連載当初は、広島の被爆シーンがリアルすぎるとの批判もあったが、そうした描写こそが原爆の惨禍の実相を伝えてきた。

 被爆者の高齢化が進み、戦争体験の継承が大きな課題になっている中、「はだしのゲン」が貴重な作品であるのは間違いない。

 その一方で、作品の終盤では、「天皇陛下のためだという名目で日本軍は中国、朝鮮、アジアの各国で約3000万人以上の人を残酷に殺してきた」といった根拠に乏しい、特定の政治的立場にも通じる主張が出てくる。

 表現の自由を尊重しつつ、同時に教育上の影響にも目配りする。学びの場で児童生徒が様々な作品に接する際、学校側がどこまで配慮すべきかという問題を、松江市のケースは投げかけている。

2013年8月24日土曜日

聖域を守るだけがTPP交渉ではない

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の第19回の会合が、ブルネイで始まった。日本にとっては実質的に最初の交渉舞台となる。会合に先立ち、安倍晋三首相は「攻めるべきは攻め、守るべきはしっかりと守る」と意欲を語った。

 安倍政権は内閣官房にTPP対策本部を設けた。霞が関の各省庁から人員を集めた混成部隊だが、結束力があり、交渉の前線に臨む陣容は整ったといえる。だが肝心なのは戦力ではなく、政治判断に基づく戦略である。交渉の目標が何なのかがはっきりしない。

 守りのかけ声ばかり目立つのが心配だ。守ること自体は自由貿易の目的ではない。主な対象は「聖域」と呼ばれるコメ、麦など農産品5品目だが、具体的にどう守るのかも明確ではない。

 守り方には、さまざまな方法がある。これまで通り高い関税で市場を丸ごと保護するのか。それとも関税を下げつつ、農家の所得を別の方法で支援するのか。国内農業改革の道筋が見えなければ、対外的な交渉戦略も立たない。

 攻めの面では、ベトナムやマレーシアなど日本が既に2国間で貿易協定を結んだ国に対して、さらに深掘りして関税撤廃を求めるかどうかが不透明だ。既存の日本の協定は自由化の程度が低く、自動車を筆頭に国内の輸出産業から不満が大きい。

 過去の「甘い協定」に手をつけず、相手国の高い関税をTPPの枠組みにそのまま引き継ぐようでは、輸出産業は納得しないだろう。そこで工業品の関税で相手を攻めるうえでも、国内の農業改革がカギを握る。ただ守るだけでは、攻めることもできない。通商交渉の基本原理である。

 改革を進めて農業分野で市場開放に挑まなければ、相手国との取引は成立しにくい。民主党政権が設けた戸別所得補償制度に代わる新しい枠組みに関し、議論を加速しなければならない。

 政府・与党内に、TPP交渉の行方を見極めた後で農業改革に着手するとの声が多いのが残念だ。これでは順番が逆ではないか。具体的な制度づくりが間に合わなくても、安倍政権は農業改革の方向を早急に示すべきである。

 関税以外では、知的財産権、競争政策、投資、政府調達などの共通ルール整備も、日本にとり攻めの分野だ。日本の技術、人材、投資資金の活躍の舞台を広げることこそが重要な交渉目標である。

中国の実像映す薄熙来裁判

 収賄などの罪に問われた中国・重慶市の元トップ、薄熙来被告の初公判が開かれた。一党独裁体制の国なので政治ショーの色合いが濃いとはいえ、情報統制のベールに覆われた共産党政権の実像をうかがう機会ではあろう。

 公判が山東省済南市の地方裁判所で開かれたのは、被告の影響力が比較的弱い地域の裁判所を選んだ結果だ。政治に左右されがちな司法の姿が浮かびあがる。

 被告は昨年3月に失脚するまで最高指導部入りも取り沙汰されていた実力者で、内外メディアの関心は高い。裁判所は法廷内のやりとりや写真をネットで逐次公表する異例の対応を取った。

 一方で共産党政権は、国内のメディアに対し独自の取材や報道を禁止する通達を出している。積極的な情報公開の姿勢や公正な司法を内外にアピールすると同時に、政権に有利なように世論を誘導する狙いがあるのだろう。

 被告が重慶で推進した強権的な手法と弱者重視の政策は、保守的な勢力と貧困層から支持を得ていた。今も政治的な路線対立の火種で、指導部は影響を慎重に考慮して公判の時期や情報公開の進め方などを決めたとみられる。

 検察側は主に被告の大連市長時代の犯罪を問題にした。本人だけでなく妻や息子を通じて計2179万元(約3億5000万円)のわいろを受け取り、500万元の公金を横領したという。

 重慶のトップだった時、妻の谷開来受刑者(執行猶予付きの死刑判決が確定)が英国人実業家を毒殺した事件を隠蔽したとの職権乱用も、起訴の理由だ。

 習近平国家主席ひきいる今の指導部は昨年秋の発足以来、腐敗に厳しい姿勢を打ちだし政権の求心力を高めようとしている。薄被告の裁判もそんな思惑の表れだ。

 公判前は罪を認めていたという被告は公判では供述を翻し争う姿勢を鮮明にした。政治的な思惑が優先され真相の解明は期待できないとの見方が多いだけに、被告がどこまで争うか、注目される。

教科書選び―教委の介入は要らない

 教育には、政治やイデオロギーをもちこむべきではない。

 教科書の採択をめぐり、異例の出来事があった。神奈川県立と東京都立の高校に対し、両都県の教育委員会が特定の出版社を名指しにして、選ばないよう指導した。

 問題にされたのは、実教出版の日本史教科書。指導の結果、選んだ高校は一校もなかった。

 教科書の採択権は教委にあるとはいえ、政治的中立は教育委員会制度の根幹である。行き過ぎと言わざるをえない。

 神奈川では当初28校がこの教科書を希望した。だが県教委は「一部記述が教委の方針と相いれない」と再考を求めた。

 東京都教委は、希望を聞く前に「使用は適切でない」と各校に通知していた。大阪府でも、府教委が「記述が一面的」との見解を府立校に示している。

 3教委が問題にしたのは、国旗と国歌について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と書いた一文だ。東京や大阪などで起立や斉唱の命令に反した教員が処分された。そのことを指している。

 この教科書はもちろん国の検定を通っている。それどころかこの一文は検定を経て修正されたものだ。原文はもっとあいまいな表現だったが、「説明不足でわかりにくい」と検定意見がつき、この表現に直した。

 文部科学省は「校長の職務命令に反すれば懲戒処分になりうるのだから、一定の強制性はある。『強制』は必ずしも誤った表現ではない」としている。常識的な解釈だろう。

 事実を書いた記述であって、よいとか悪いとか価値判断を書いたわけではない。事実に誤りがないかぎり自由な記述を認めるのが検定の原則だ。

 教科書を使う生徒や先生にとっては、大事なのは、古代から現代までの歴史全体が正確に分かりやすく書かれているかどうかだ。この教科書を希望していた学校も、国旗国歌の記述で選んだわけではあるまい。

 この一文だけを目のかたきにして採択の選択肢から排除する教委の方がおかしい。

 神奈川の教委は28校の校長に「採択の際に校名が明らかになると、さまざまな団体が来て混乱が起きる可能性がある」と伝えていた。強い不安を覚えた校長もいるだろう。

 教委が政治的な圧力を恐れて判断を左右することがあってはならない。「圧力次第で教育を振り回せる」という誤ったメッセージにもなりかねない。

 教育の中立を守りぬくという原則が問われている。

街の集約―前へ進めるためには

街を「コンパクトシティー」にすることの必要性が指摘されて久しい。

 商業施設や医療・介護、教育などの公共施設、住宅を一定の範囲に集める街づくりだ。

 少子高齢化と財政難のなか、高度成長期に造った社会インフラの更新が迫る。空き家や空き店舗は、防災や治安の点からも問題だ。過度に広がった街を縮め、インフラ整備を選別していくことは避けられない。

 ただ、住民に引っ越しを強制するわけにはいかない。公共施設の整備が手薄になる地域が反発するのは必至だ。

 なぜ街の集約が必要なのか。税収の現状、施設の利用状況や維持費などのデータを徹底的に公開する。それをもとに住民が自ら議論する場を設け、子や孫の世代のことも含めて考えてもらう。自治体の首長を中心に、粘り強く取り組むしかない。

 国の役割は、制度を整え、自治体を後押しすることだ。

 商店街の振興に偏っていた国の政策は7年前、中心市街地活性化法の改正など「まちづくり3法」の見直しを機に、公共施設や住宅も含めた集約へとかじをきった。計画が国の認定を受ければ、財政上の支援措置が得られる仕組みも整えた。

 しかし、成果が出ているとは言い難い。

 「関係者が集う地元協議会が十分機能していない」「介護施設や大型店は相変わらず郊外での建設が目立つ」。経済産業省の審議会が今春まとめた提言には、厳しい指摘が並ぶ。

 集約化のための補助金がさまざまな省庁に分散するなど、役所の縦割りは相変わらずだ。

 インフラの更新、商店街の振興、住宅地の再開発といった個々の政策を点検し、制度を再編する。補助金や税制優遇による誘導だけでなく、都市計画の視点から規制を強める余地はないか。検討課題は多い。

 コンパクトシティーの先進地も、試行錯誤が続く。

 十数年前、除雪の費用を抑えようと先陣を切った青森市では、いったん増えた中心市街地の人通りが減少に転じるなど、取り組みは停滞気味だ。

 路面電車を生かした街づくりで知られる富山市は、中心部に限らず、電車やバスの沿線にも対象地域を設けており、極端な集約化が現実的ではないことがうかがえる。

 街づくりの主役は、なにより住民である。予算が限られているなかで、どうすれば快適な暮らしを確保できるか。先進事例を参考にしながら、自らの問題として知恵を絞ってほしい。

大飯活断層調査 科学的な議論に徹するべきだ

 国内で唯一稼働している関西電力大飯原子力発電所(福井県)の敷地を貫く断層は、地震を起こす活断層かどうか。

 評価している原子力規制委員会の専門家チームの議論が迷走を続けている。

 大飯原発の稼働の可否がかかる重要な調査だが、データをきちんと示さずに、「活断層が敷地内にある可能性は高いと思う」と主張するメンバーまでいるためだ。

 これで科学的な議論と言えるだろうか。大いに疑問である。

 科学は、実験や測定に基づき仮説の是非を客観的に検証する営みである。根拠なしに「思う」と唱えるのは、あまりに乱暴だ。

 チームは、島崎邦彦委員長代理ら5人の研究者からなる。昨年11月から3度現地を調査し、今週まで5回の評価会合を開いた。

 延々と続く議論に、5回目の会合で説明と質疑に当たった関電側が、「(規制委が命じた)調査を昼夜休みなく進めてきた。早く審査してほしい」と、異例の要請をしたのも理解できる。

 専門家チームの座長である島崎氏は、原子力施設の安全を科学的に評価する、という規制委の方針に沿って議論を進めるべきだ。

 問題となっているのは、「F―6」と呼ばれる断層だ。関電は地震とは無縁としてきたが、一部の研究者が昨年6月、原発の重要施設を横切る活断層だ、と主張し、公的な調査が始まった。

 関電は、規制委の前身である旧原子力安全・保安院と規制委の指示を受け、F―6断層に沿って複数の場所で掘削調査をしてきた。島崎氏の指示で掘った穴は長さ70メートル、幅50メートル、深さ40メートルに及ぶ。

 いずれにも、F―6断層は活断層、との証拠はなかった。

 専門家チームの研究者から「こんな巨大掘削が本当に必要だったのか」と、やみくもな掘削を強く批判する意見が出ている。

 島崎氏は月刊誌で「電力会社は掘らないで済まそうとする」と掘削指示の意図を説明し、同時に「徹底した再調査をすれば、はっきりする」と述べている。その調査は尽くされたのではないか。

 5回目会合では、「どこかで決めないとエンドレスになる」と厳しい注文もついた。結論をいたずらに引き延ばすべきではない。

 活断層調査で規制委は5月、日本原子力発電敦賀原発に活断層があるとの評価結果をまとめた。だが、原電は7月、これを否定するデータを規制委に提出し、再評価を求めている。敦賀原発でも科学的な対応が欠かせない。

中国海洋強国化 地域の緊張高める覇権主義

 「海洋強国化」を加速する中国の習近平政権が強硬姿勢を一段と鮮明にしたと言えよう。

 米国を訪れた中国の常万全国防相は、ヘーゲル米国防長官との会談後の共同記者会見で、「中国が核心的利益を手放すと夢想すべきではない」と強調した。

 沖縄県・尖閣諸島を巡る日本との対立や、南シナ海の領有権問題でのベトナム、フィリピンとの摩擦を念頭に置いた威圧的発言である。常氏は「我々の領土、主権、海洋権益を守る決意を過小評価すべきではない」とも語った。

 習国家主席が7月末の重要会議で、「核心的利益は犠牲にできない」と、「海洋強国」建設へ決意表明したことを受けたものだ。

 オバマ米政権の「アジア重視」の軍事戦略に対する牽制けんせいだろう。日本政府の尖閣諸島国有化から9月で1年になるのを前に、日本に圧力をかける狙いもある。

 終戦の日の8月15日、中国軍が東シナ海での実弾演習と、空母「遼寧」の訓練を実施したのも、日本への威嚇のつもりなのだろう。

 習氏は「中国は決して覇権を唱えない」と言うが、強大な軍事力を背景に公共財である海洋を力ずくで囲い込み、アジア太平洋地域で覇権を握ろうとしている。

 尖閣諸島周辺で1月、中国海軍艦艇によるレーダー照射事件が起きたように、習政権の強硬姿勢は、現場部隊の過激な挑発行動を煽あおる可能性がある。

 日本は尖閣諸島周辺の警戒を強めねばならない。

 艦艇や航空機の偶発的な軍事衝突を回避するために、日中防衛当局間の緊急連絡体制である「海上連絡メカニズム」の構築を急ぐ必要がある。習政権は「平和発展」を掲げている以上、協議を進めるべきではないか。

 南シナ海でも同様に事態は深刻だ。中国とフィリピンが領有権を巡って対立するスカボロー礁では昨年、中国が支配権を確立し、公船の巡回を常態化させている。

 米国はフィリピンとの間で、米軍の巡回頻度と展開規模を拡大する新協定締結に向けた協議を今月中旬から始めた。「アジア重視」戦略の具体化であり、対中抑止力を強める動きと評価できよう。

 日本は巡視船10隻を供与する。フィリピンの海上保安能力の向上に寄与するだろう。人材養成面でも協力を深めたい。

 今月末の東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議などで、日本は中国の挑発の不当さを訴えていくことが重要だ。

2013年8月23日金曜日

国が前に出て汚染水漏れ事故の収拾急げ

 東京電力・福島第1原子力発電所の敷地内にあるタンクから、300トンの汚染水が漏れる事故が起きた。原子力規制委員会は国際的な事故尺度「レベル3(重大な異常事象)」に当たるとし、東電は汚染水が外洋に流れ出た可能性があると認めた。

 大量の汚染水漏れは、福島原発事故がまだ続いていることを示した。憂慮すべき事態である。東電の対応が後手に回り、情報開示の混乱も問題を深刻化させた。国がもっと前に出て事態の収拾と再発防止にあたるべきだ。

 福島原発では山側から海へ日量1千トンの地下水が流れている。うち約400トンが原子炉建屋に流入し、高濃度の放射性物質で汚染される。これを約1千基のタンクに貯蔵しているが、その1つから大量の汚染水が漏れた。

 想定外の事故ではない。日々増える汚染水をためるため、タンクの多くが急ごしらえだ。事故が起きたタンクも鋼製の胴体をボルトで止め、溶接を省いている。汚染水漏れは当然予期すべきで、なぜ大量に漏れ、対応が遅れたか、規制委は原因究明を急いでほしい。

 再発防止へすぐに手を打つべきは、漏れたタンクと同型の約350基の監視・点検だ。汚染水漏れは過去にも4回あり、最大でも10リットルの段階で見つけて拡大を止めた。巡回要員を増やして監視を強め、タンクごとに水位計を付けて検知すれば、大量の漏れは回避できる。規制委や関係省庁が連携し、対策を指揮する体制が要る。

 敷地内にこれからタンクを増設する余地は乏しい。東電は汚染水から放射性物質を除去する装置を稼働させ、頑丈な溶接式タンクに建て替えて汚染水を移す計画だが、これらもできる限り早く着手すべきだ。

 これらの対策に必要な資金や人員を東電が確保できないのであれば、国が支援するのはやむを得ない。高濃度の汚染水が海に流出しているとなると、日本の国際的な信用にも悪影響を及ぼしかねない。政府は来年度予算で汚染水の流出を防ぐ遮水壁づくりを計画しているが、対策は急を要する。

 東電が実質的に国有化されたとはいえ、事故対策にやみくもに国費を投じることには、批判もあるだろう。事故当事者として東電の責任を明確にしたうえで、原子力損害賠償支援機構を通じた東電支援のあり方自体、見直しが避けられない。

柔道界にまっとうな常識を

 全日本柔道連盟の会長に宗岡正二・新日鉄住金会長兼最高経営責任者が就任し、新体制がスタートした。ふつうの常識が通用するまっとうな組織に生まれ変わらせるために、ひいては魅力ある柔道のために、粉骨砕身を期待する。

 ことし1月以降明るみに出た不祥事の数々は、目にあまるものがあった。女子の日本代表選手への暴力行為は、監督をかばってうやむやに済まそうとした。選手強化のための助成金を食事会などに流用する慣行を、組織ぐるみで長く温存した。上村春樹前会長は辞意を示したり翻意したりしながら、ずるずるとその座に居座った。

 今回の体制刷新は組織改革を求める内閣府の勧告を受けた結果であり、自浄能力の無さをさらけ出すことにもなった。

 宗岡氏は経済人だが東大柔道部OBであり、専務理事の近石康宏・トヨタ自動車顧問(元大阪府警本部長)は柔道部の後輩だ。スーパースターだった山下泰裕副会長を含めた3人が新体制の中心になる。ぜひ、しがらみ抜きに柔道界の信頼回復に取り組んでほしい。

 新体制に悠長に構えている時間はない。不祥事を起こさないために組織の何をどう変えるのか。6000万円の返還命令が出ている助成金の不正受給問題はどう決着させるのか。外に向かったこまめな分かりやすい説明が欠かせない。改革にあたって、身内への「物わかりのよさ」は不要である。

 外から理解しにくいのは全柔連と講道館の関係だ。同じ公益財団法人でも、全柔連は選手強化や指導者の育成、大会開催などを行い、講道館の事業は普及や段位認定が中心だ。全柔連が競技団体なのに対し、講道館には絶対的な力を持つ家元の性格がある。

 ただ、全柔連の事務所は講道館の中にあり、2つの組織は切っても切れない。改革も双方の努力が相まって初めて実のあるものになろう。両者のトップを兼ねていた上村氏は講道館の館長は続けるという。柔道界の旧弊をそれで断ち切れるだろうか。疑問は残る。

混迷エジプト―革命を葬り去るのか

 エジプトは、独裁時代へ逆戻りしているように見える。

 軍が主導する暫定政権は7月の政変後、全国で抗議を続ける「ムスリム同胞団」への締めつけを強めている。団長らを拘束したうえ、解散命令の検討も始めた。

 憲法改正の論議では、イスラム主義を掲げる政党を排除する方向が強まってきた。事実上の同胞団の非合法化である。

 一方で、暫定政権は、司法とともに旧体制派の復権を進めている。独裁の座を追われ訴追されていたムバラク元大統領は、保釈された。

 そもそも2年前の民衆革命がめざしたものは何だったのか。それは、自らの文化と風土にあったエジプト流の民主主義を国民の手で築くことであろう。

 この国は古代から現代まで、王政、異民族支配、独裁の歴史しか知らなかった。それがいま初めて国民主権の政治をめざす長い模索の過程に入った。

 当然、変革をめぐる急進派と保守派のせめぎ合いはあろう。混乱を避けるために、時には旧体制の手法の踏襲も必要かもしれない。だとしても、忘れてはならない原則があるはずだ。

 人命と人権の尊重。真の国家統合へ向けた対話と和解。それなしには、安定した民主大国への道は遠いことを、暫定政権は自覚する必要がある。同胞団への敵視をやめて、各派と対話を始めなければならない。

 アラブ世界では長年、少数のエリート層が富を独占し、多くの貧困層がイスラム運動に救いを求めてきた。政治からの宗教色の排除は、独裁者が大衆蜂起を封じる方便に使ってきた。

 イラクのフセイン元大統領やシリアのアサド大統領らも、世俗的な統治でナショナリズムをあおるのが常だった。各宗派や民族との公正な対話を封印した禍根の大きさは、独裁が揺らいだ後の内戦が物語る。

 エジプトの暫定政権に対し、米欧は自制を求めているが、逆にサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は巨額の経済支援を申し出た。いまも独裁体制を守る両国はイスラム運動の飛び火を恐れているからだ。

 だが、エジプトの暫定政権が、旧体制への回帰をめざすなら、それは混乱を長引かせる愚行というほかない。前政権の経済失政などからクーデターを黙認した若者らや知識層も、時計の針を戻すことは許すまい。

 イスラム運動を包含しつつ、民主主義を育てたトルコの例もある。暴力も排斥もない、アラブの盟主にふさわしい新生国家づくりを見せてほしい。

柔道連盟改革―正面から組み合って

 相次ぐ不祥事と、問題を放置する自浄能力の欠如――。すったもんだの末に、全日本柔道連盟が出直すことになった。

 柔道界の外から初めて会長を迎え、ようやく信頼回復のスタート地点についた。

 新会長に就いた宗岡正二・新日鉄住金会長兼最高経営責任者は、東大柔道部に所属した経歴をもつ。就任会見では創始者の嘉納治五郎の名前を挙げ、「教育や礼節の精神といった柔道の原点に戻って、立て直すことが大切」と語った。

 ただ、改革の道のりは厳しいものになるだろう。まずは8月末を期限とした内閣府からの勧告に応えなければならない。

 上村春樹前会長を含めた理事23人が退いて体裁を整えたものの、ガバナンス(組織統治)の確保を柱とする実質的な改革案を急いで示す必要がある。

 不正に受け取り、使っていた助成金6055万円も返還するだけでなく、誰に責任があったかを明らかにするよう求められている。

 宗岡会長は非常勤で指揮を執るため、東大柔道部の後輩にあたる近石康宏・元大阪府警本部長を専務理事に、宇野博昌・全柔連広報委員長を事務局長にそれぞれ据えた。

 そもそも、学閥や選手時代の実績がものをいう閉鎖的な体質が問題の背景にあった。副会長に就いた山下泰裕・東海大副学長との連携も大切になる。

 気になるのは外部からトップを迎えた柔道界内部の反応だ。

 全柔連は執行部と理事会を刷新したが、最高議決機関にあたる評議員会は一連の責任問題をうやむやにしたままだ。複数の評議員が「全員で辞めるべきだ」と提案したが、自ら結論を出せなかった。

 その一方で、理事会の一新を認めて組織改革を託した。不祥事とこれからの改革に対して、当事者としての認識が希薄なように映る。

 自浄能力を発揮できなかった全柔連全体の意識改革こそ、新執行部が時間をかけて取り組むべきテーマだろう。

 もともと、全柔連は選手の国際大会への派遣や強化を担う競技統括部門として、総本山の講道館から分かれたものだ。

 段位認定という絶対的な力を持つ講道館の影響力はいまも小さくはない。

 両者のあいまいな線引きについて、宗岡会長は「別法人だが、議論を詰めていきたい」と話した。上村前会長が講道館長の座にとどまる是非を含め、全柔連の独立性を築く取り組みも進めてはどうか。

原発汚染水 原子力規制委は一層の関与を

 東京電力福島第一原子力発電所で、汚染水漏れがまたも判明した。

 汚染水の漏出が相次いで、解決のめどが立たない。深刻な事態である。東電は全力で対処すべきだ。

 ただ、東電の対処能力は資金面でも、人材面でも限界に近い。政府の幅広い支援、協力が今後、ますます大切になるだろう。

 新たに漏出が分かったのは、放射性物質を含む汚染水の貯蔵タンクだ。漏出量は約300トンで、25メートルプール1杯分に相当する。

 貯蔵タンクは円筒形で鋼製部品をボルトで接合してある。最大1000トンの汚染水を貯蔵できる。溶接していない継ぎ目が弱点で、過去にも漏出が起きている。

 敷地内の貯蔵タンク約1000基のうち今回と同型は約350基ある。総点検を急ぐべきだ。

 これまでの点検は、地面に漏れた水の跡がないかを見る方式だった。だが、少量だと見逃しやすい。タンクに水位計が必要だ。

 汚染水は毎日増え続ける。確実に貯蔵しておくには、今の東電だけでは危うい。原子力規制委員会のチェックが不可欠である。

 原子炉等規制法でも、事故後の福島第一原発を特別な施設と位置付け、規制委が安全確保を監視することを責務と定めている。

 それを担う人員として、現地には、規制委の事務局である原子力規制庁の職員10人が保安検査官として常駐している。東電の保守点検計画に問題はないか。現場の作業は適切に進められているか。しっかり監督してもらいたい。

 今回のタンク以前にも、大きな汚染水の漏出が4件起きている。敷地内での汚染水貯蔵にも限界がある。汚染水の増加に歯止めをかけないと、いずれ破綻する。

 まずは原子炉建屋への地下水流入を減らすことだ。これが汚染水の最大原因と言える。流入前に地下水をくみ上げ、安全確認後に海へ放出するほかない。地元漁協には理解を示す声もある。政府が前面に出て協力を求めたい。

 貯蔵している汚染水に含まれる放射性物質を減らす浄化装置の稼働も急ぐ必要がある。浄化すれば大量貯蔵時のリスクが減る。

 今週の規制委会合では、汚染水問題を海外にどう説明するかが議題となった。今回の漏出を、原子力事故の国際尺度で最大の7から0のうち「レベル3」とする案も出たが、まとまらなかった。

 あれこれ評価するより、事態の収束が最優先だ。政府一丸でこの問題に臨むことが、海外の懸念を軽減することにつながろう。

TPP交渉 米国のペースに惑わされるな

 日本にとっては初めての本格交渉だ。いかに存在感を発揮し、交渉を有利に進めるか。攻めの姿勢が問われよう。

 日米、豪州、カナダなど12か国による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が、ブルネイで始まった。23日に閣僚声明を出し、年内妥結を目標に交渉の加速を確認する予定だ。

 これをもとに、月末まで事務レベルで交渉が行われる。

 閣僚会合の議長を務めるフロマン米通商代表は、「年内妥結はオバマ大統領の最優先事項だ」と強調する。大統領はTPPをテコに輸出を拡大し、雇用を増やすことを目標に掲げている。

 米国は、ブルネイで年内妥結の方針を他国と再確認し、10月の大筋合意へ交渉に弾みをつけたい考えだろう。

 それでは、7月の前回交渉の後半部分からようやく協議に参加した日本は、十分な交渉時間を確保できなくなる恐れもある。

 米国ペースで早期に交渉が打ち切られ、日本が主張する機会を奪われる事態は避けねばならない。各国と個別に折衝し、「味方」を増やす努力も求められよう。

 日本は、今回の交渉に先立ち、関税撤廃に関する提案をまとめ、参加各国に打診している。

 関税を撤廃する品目の割合(自由化率)を80%前後とする一方、自民党が聖域扱いを求めたコメ、麦、乳製品などの農産品5項目の扱いは「未定」とした。

 日本がこれまで13か国・地域と結んだ経済連携協定(EPA)の自由化率が84~88%にとどまり、コメなどは対象外だったことを踏まえたものである。

 TPP交渉では、まず低めの目標を示し、今後激しくなる駆け引きに備える作戦だろう。

 フロマン代表が「もっと野心的な合意を目指している」と述べたように、米国はより高水準の自由化率と市場開放を日本に求めてくるに違いない。

 米国の砂糖、カナダの乳製品など、各国とも高関税で保護したい重要分野を抱えている。

 日本にとっては、農産品5項目すべてを死守することだけが国益に資するわけではない。

 何で譲って、何を勝ち取るのか。政府は絞り込みの国内調整を加速する必要がある。知的財産権や投資などのルール作りでも、積極的に主張を展開すべきだ。

 併せて農業の競争力強化策や、市場開放で打撃を受けることが予想される分野の支援策の検討を本格化しなければならない。

2013年8月22日木曜日

女性の活躍には男性が変わらねば

 安倍晋三首相は成長戦略の柱の一つとして、「女性の活躍」をあげた。少子高齢化が進み労働力人口の減少が懸念される日本で、経済・社会に活力をもたらすには、女性の社会進出をもっと促すことが欠かせない。その認識は正しいが、重い役割を女性だけに押しつけるわけにはいかない。

途上国より大きい格差
 子どもを産み、育て、家事もこなし、さらに家庭の外に出て稼ぎ、親世代の介護まで担う。これらすべてを女性に期待するとすれば、それは男性側のご都合主義だろう。女性に活躍を求めるなら、男性も変わらなくてはならない。

 社会で男女が対等かどうかの観点からみると、日本はとても先進国とは呼べない。男女共同参画白書によると、組織の管理職に占める女性の割合は、わずか11%にとどまる。4割の米国や3割台が多い欧州各国に大きく差をつけられている。

 経済、政治、教育などでの男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」を見ても、この傾向が顕著だ。世界経済フォーラムがまとめている指数で、日本は135カ国中、101位だ。中国やロシアなどの新興国だけでなく、多くの途上国にも後れを取っている。

 なぜ、これほどまでに社会で女性が活躍しにくいのだろうか。仕事と子育ての両立が難しいことが、その大きな要因だ。仕事か家庭かの二者択一を迫られる女性は少なくない。働く女性の半数以上が、第1子出産を機に仕事を離れている。

 保育所の不足は今なお深刻だ。育児休業や短時間勤務など、たしかに両立のための制度はできたが、制度が使いにくい職場もある。

 制度を使えても、長時間労働を前提とした職場では、女性が十分に力を発揮し、責任ある仕事を担うことは難しいだろう。

 大事なのは、日本の企業社会の悪弊ともいえる長時間労働を見直し、働き方の柔軟性を高める努力ではないか。そのためには、男性を含めて働き手すべてが変わらなければならない。

 働き方の見直しは、少子化対策としても繰り返し重要性が指摘されてきた。「女性の活躍」が大きなテーマとなった今こそ、改めて推進すべき課題だ。決して簡単なことではない。だが、実現すれば女性が仕事を辞めたり、両立支援制度に過度に寄りかかったりしなくてもすむようになる。

 これにより男性が育児にかかわる道も開けてくるはずだ。若い世代を中心に、育児にかかわりたいという意識を持つ人は多い。育児経験がその人の仕事の発想の幅を広げることもあるだろう。

 6歳未満の子どもがいる夫の家事・育児時間は1日あたり約1時間で、欧米諸国の3分の1にすぎない。この分担が少しでも増えれば、女性が働き続ける後押しになるはずだ。

 高齢化が進むなかで介護と仕事の両立に直面する社員は、男女を問わず、これから確実に増えていく。有給休暇の取得促進やフレックスタイムなど柔軟な働き方と組み合わせることで、働きながらの介護という新たな課題への備えにもなる。

「かけ算」で強い組織を
 男性が変わらなければならない点はもう1つある。経営者や管理職の意識の問題だ。人材を育てる際に、上司は男性にだけ大事な仕事を与えたり、女性に過剰に配慮したりしていないだろうか。

 上司が「女性は辞める」と思っていると、それが日々の行動に反映され、結果的にその通りになる。シカゴ大の山口一男教授は「予言の自己成就」という。この悪循環を断ち切りたい。

 労働力不足を女性で補う「足し算」でなく、男女が共に力を出し合い、組織の創造性を高める「かけ算」の発想が必要だ。多様な人材や価値観が混在するほど、より柔軟に変化に対応でき、アイデアが豊富な強い職場となる。

 もちろん、女性の側も制度に甘えず、職業人としてのキャリアをしっかり考える必要がある。

 目指すべきは、女性を特別扱いすることではない。性別に関係なく、男女ともに能力を発揮できるよう環境を整えることだ。意欲ある人がいきいきと働ける社会にどう変えていくか。たとえ小さな一歩でも、踏み出せば、やがて大きな変化になる。

汚染水漏れ―首相先頭に危機管理を

 福島第一原発で、新たな事故が起きた。放射性物質で高濃度に汚染された水が、保管タンクから300トンも漏れたのだ。

 原子力規制委員会はきのう、8段階の国際基準に当てはめると上から5番目の「レベル3」(重大な異常事象)に相当すると発表した。

 隔離していた放射性物質を大量に環境中に逃した事態は文字どおり重大である。海外からの懸念の声も高まっている。

 周辺の安全だけでなく、日本の信用にかかわる危機であり、安倍首相は早急な対応でリーダーシップを発揮すべきだ。

 福島での原発事故は86年のチェルノブイリ原発事故と並び、国際基準で最も重大な「レベル7」(深刻な事故)だ。

 レベル7の事故自体が収束にほど遠く、今も放射性物質による環境汚染が続いている。

 その事故対策の過程で生じたタンクからの汚染水漏れを、改めて「レベル3」と判定することに異論もあるようだ。

 しかし、新たな事故と位置づけることで、「なぜ防げなかったのか」という重要な問いに向き合うべきだ。

 汚染水が漏れたタンクは、約1千基のうち約350基を占める簡易型で、耐用年数も5年しかない。漏れる危険性は当初から指摘されてきた。

 大量漏出が起きたのは、汚染水対策が東京電力任せにされ、その場しのぎの不十分な対策が繰り返された結果だ。

 汚染水問題は、安倍首相が今月7日の原子力災害対策本部で「東電任せでなく国としてしっかり対策を講じる」と述べて、ようやく省庁間に連携の動きが出てきたと関係者は語る。

 汚染水対策は従来、原災本部の下の廃炉対策推進会議で、東電と経済産業省中心にまとめられてきた。それが裏目に出た。

 現状の把握や国内外への説明、対策での国際連携、必要な資金投入など、省庁の壁を越えて政府が総力で迅速に取り組むべきことばかりだ。首相の指導力が問われる局面である。

 事故関係の情報は原災本部の内閣危機管理監の下に集約して共有と調整を図るなど、政府として原発事故発生時に準じた態勢を組んではどうか。

 東電任せの枠組みを認め、一歩引いた監督にとどまりがちだった規制委にも責任がある。

 楽観に傾かず、冷徹に最悪を想定するのが役目である。漏水を防ぐ複数の代替策を準備させたり、環境汚染の徹底監視に乗り出したり、内外の最新知見を積極的に取り入れた対策の具体化をただちに進めてほしい。

子育て支援―結婚で線引きするな

 親ひとりで子どもを育てるのは大変な苦労がいる。だから、ひとり親の税金を減らし、子育てを支援する優遇措置がある。

 ところがその対象は、結婚相手と死別したか、離婚した人に限られてきた。結婚したことがない親は、ずっと支援の枠の外に置き去りにされてきた。

 親の経済条件は、子が成長する環境を左右する。未婚で子どもをもうけたことで差をつけるのはおかしい。政府は税の控除制度を改め、幅広く子育てを支える態勢を強化すべきだ。

 この制度は、「寡婦(夫)控除」と呼ばれる。もともとは、戦争で夫を失った妻の子育て救済策として戦後にできた。

 その後、子をもたずに夫と死別した女性や、ひとり親の男性にも対象を広げたが、一度は結婚し、死別か、離婚した人だけに今も限定している。

 税金で払う分の違いだけでなく、控除後の所得額は公営住宅に入れるかどうかや、家賃、保育料などにも反映する。

 2歳の子と市営住宅で暮らす年収約200万円のシングルマザーの場合、控除がないと、所得税、住民税、保育料、家賃で年20万9千円の負担増という。東京都八王子市の試算だ。

 厚生労働省の11年の全国調査によると、母子家庭になった経緯は離婚(80・8%)に続き、2番目は未婚(7・8%)で、死別(7・5%)を上回る。母の就労による年収の平均は、未婚で160万円で、死別、離婚のひとり親より低い。

 見過ごせないのは、控除を受けられない経済的な不利益が、子どもに及んでしまうことだ。

 未婚の母たちから人権救済の申し立てを受けた日本弁護士連合会は1月、婚外子への差別であり、憲法違反だとする要望書を出した。「結婚制度に入らなかった女性に厳しい経済的制裁を科している」と指摘した。

 これを受けて八王子市は6月、未婚のひとり親も控除対象と仮定して市営住宅家賃、保育料の額を決める「みなし適用」の導入を決めた。「子は親の婚姻状況を選べない。市ができる救済を考えた」という。

 同様の動きは、東京都日の出町や沖縄県内の自治体などに広がっている。千葉市、岡山市など以前から保育料にみなし適用する自治体もあった。

 少子化の時代のいま、子どもは社会全体で育むべき宝でもある。どんな事情であれ、ひとりでも子育てに臨む親の負担を和らげる広範な工夫が必要だ。

 政府は判断を自治体まかせにせず、仕組み自体を改め、子育ての支援をすべきである。

社会保障工程案 持続可能な制度へ必要な道筋

 社会保障を持続可能な制度にするための改革は多岐にわたる。優先順位をつけて、着実に実行することが重要だ。

 政府は、社会保障制度改革のプログラム法案の骨子を閣議決定した。秋の臨時国会に法案を提出する。

 この法案は、政府の社会保障制度改革国民会議がまとめた報告書を踏まえ、医療、介護、年金、少子化対策の各制度改革についての内容と工程を示すものだ。

 今回の改革の主眼は、主に現役世代の負担で高齢者を支えている現行の仕組みを、全世代が負担する形に変える点にある。

 少子化で現役世代の負担が過重になる中、制度を維持していくには、高齢者や高所得者に、より多く負担を求めることはやむを得ない。歴代政権が避けてきた改革に取り組む姿勢は評価できる。

 その一つが、70~74歳の医療費窓口負担の引き上げだ。2008年の法改正で2割と定めたが、当時の自公政権が特例として1割に据え置き、現在も続いている。

 ただ、法定通りの水準に引き上げる時期については14~17年度と大きな幅を持たせている。特例措置のために投入される税金が年2000億円に上ることを考えると、早急に見直すべきだ。

 介護保険では、現在は一律1割となっている利用者の自己負担率を、高所得者の場合、15年度から引き上げる。一方で、低所得高齢者の介護保険料は軽減する。

 高齢者の間でも、所得の格差は大きい。高所得者の負担を増やし、低所得者の負担を減らすことは、高齢世代内の公平を図るうえで妥当と言える。

 年金改革については「検討を加え、必要な措置を講じる」とするにとどまった。実施時期を明示しなかったのは、具体的な制度設計に時間がかかるからだろう。

 国民会議の報告書では、高所得者の年金に対する課税の強化や、デフレ下でも賃金水準の変化に応じて年金支給額を抑制できる仕組みの導入といった改革の方向性は明記されている。

 年金生活者は税の控除が大きく、同じ収入の給与所得者に比べ手取り額が多い。若い世代の負担感を軽減するためにも、高所得層への年金課税の強化は必要だ。

 年金支給額の抑制は年金財政を安定させるうえで欠かせない。

 こうした重要な改革の実施に見通しを立てられないようでは、年金制度の持続可能性に疑問符がつく。改革案を具体化させるため、実施時期の検討を急ぐべきだ。

全柔連新体制 子供たちが胸を張れるように

 遅きに失した感のあるトップ交代だ。改革を急ぎ、失墜した信頼を取り戻さねばならない。

 全日本柔道連盟(全柔連)の上村春樹会長ら執行部が辞職し、新日鉄住金の宗岡正二・会長兼最高経営責任者(CEO)が会長に就任した。柔道を創始した嘉納家や五輪メダリスト以外からの会長は初めてだ。

 全日本女子前監督による選手への暴力、多額な助成金の不適切処理、元女子選手への理事のわいせつ行為など、信じられないような不祥事が柔道界で相次いだ。

 暴力問題を調査した第三者委員会が首脳陣の処分を促しても従わないなど、全柔連の自浄能力の欠如は目に余るものがあった。

 とりわけ上村氏はトップとしての統治能力を欠いた。「改革に道筋をつける」として辞任を先延ばしにしながら、何ら再生策を打ち出せなかった。

 公益財団法人を所管する内閣府から「8月中の改革とりまとめ」という最後通牒つうちょうを突きつけられた末の退場はお粗末と言える。

 宗岡新会長は記者会見で、上村体制を「常識とかけ離れた慣行があった」と批判し、透明性のある組織を目指すと語った。ガバナンス(組織統治)の強化を図る改革委員会を設ける意向も示した。

 五輪での成績や学閥が幅をきかせる閉鎖的な体質が、社会常識を欠いた独善的な論理を生む土壌だと指摘されている。宗岡氏は実業界で培った手腕を発揮し、改革を断行してもらいたい。

 会長の右腕の専務理事には東大柔道部の後輩に当たる近石康宏・元大阪府警本部長を充てた。理事の職務を監督する監事に、暴力を告発した選手らを支えた山口香氏を起用したことも注目される。

 山下泰裕・新副会長が言うように「柔道を学ぶ子供たちが胸を張れる柔道界」となってほしい。

 返還命令を受けた6055万円の助成金問題も課題である。

 助成金を穴埋めするため、前執行部は、不正に無関係の強化委員会のメンバーにまで「寄付」を求めたが、これは見直す必要がある。責任の所在をあいまいにした対応は許されない。不正の当事者などに損害賠償を請求すべきだ。

 疑問なのは、上村氏が会長は辞めても、段位の認定などにより競技の普及を図っている講道館の館長を続けることである。

 講道館は、選手の強化や国際大会への派遣などを担う全柔連とは車の両輪と言える。上村氏が柔道界に影響力を保持するなら、国民は厳しい目を向けるだろう。

2013年8月21日水曜日

日ロの北方領土交渉に一段と弾みを

 日本とロシアの両国政府が外務次官級協議をモスクワで開き、本格的な北方領土交渉がスタートした。平和条約の締結に向けて、今後もあらゆるレベルで協議を加速していくべきだ。

 次官級協議の開催は今年4月、安倍晋三首相が日本の首相として10年ぶりに公式訪ロした際、プーチン大統領との会談で合意した。平和条約締結の前提となる領土問題で「双方に受け入れ可能な解決策」を作成するのがねらいだ。

 領土問題をめぐる日ロの立場は大きく隔たっているのが現実だ。

 日本は択捉、国後、色丹、歯舞の北方四島の日本への帰属確認を求めている。一方のロシアは四島が第2次世界大戦の結果、自国の領土になったと主張する。今回の協議でも双方は原則的な立場を繰り返したとみられ、解決策を見いだすのは容易ではない。

 だが重要なのは、日ロ首脳とも領土問題の決着と平和条約の締結に強い意欲を示していることだ。しかもプーチン大統領の任期は2018年まである。安倍首相も先の参院選の勝利を追い風に、長期政権を視野に入れつつある。両国がじっくりと腰を据え、領土交渉を進める環境は整っている。

 両首脳はさっそく、9月にサンクトペテルブルクで開く20カ国・地域(G20)首脳会議の場で個別会談する。今秋にはラブロフ外相の来日が予定され、来年になればプーチン大統領の日本公式訪問が現実味を帯びてくる。一連の外交日程もにらみつつ、領土交渉に一段と弾みをつけていくときだ。

 領土問題の行方は、最終的には両首脳の決断に委ねるしかない。安易な妥協は禁物だが、まずは原則論に固執せず、自由な発想で意見をぶつけあい、互いに受け入れ可能な解決策が見いだせるかどうかを探る必要があるだろう。

 領土交渉の進展には、日ロの幅広い関係強化や信頼醸成も欠かせない。とくにロシアは日本を天然ガスや石油の有望な輸出先とみている。自国の産業構造改革や極東開発でも、高い技術力を持つ日本の投資拡大への期待は大きい。

 安全保障の分野でも、両国は外務・防衛担当の閣僚級協議(2プラス2)の立ち上げで合意している。中国の軍事的な台頭、北朝鮮の核問題は共通の懸念となりつつある。日ロが協力を拡大する余地は大きい。日本の国益に資する経済や安保分野の協力を深めつつ、領土交渉の追い風としたい。

安心して使えるスマホ決済に

 スマートフォン(スマホ)にカードの読み取り装置をつけるだけでクレジット決済ができるスマホ決済が登場した。ローソンは全国約1万店舗で装置を発売、誰でも簡単に利用できるという。しかし便利になれば危険性も伴う。安心して使える環境作りが大切だ。

 スマホ決済は、ツイッターの創業者が4年前に始めたサービスで、米国では個人商店などすでに400万店以上が利用している。日本では楽天やソフトバンクなどが同様なサービスで追随し、現在、4社が事業を展開している。

 クレジット決済をするには、カード会社と契約し、高額な信用照会端末を置かねばならない。これに対し、スマホ決済はインターネットや携帯ショップで申し込め、審査も簡単だ。カード会社と直接契約するより手数料も安い。

 スマホ決済の契約者は街の商店や修理業者などカードを扱ってこなかった店が多いという。日本のカード利用率はネット販売などの普及で10年前の約2倍に増えたものの、欧米や韓国などに比べればまだまだ低い。スマホ決済はカード利用の裾野を広げそうだ。

 心配なのは安全性の問題である。スマホ決済は携帯端末にソフトを組み込み、携帯のデータ通信で信用照会する。カード情報は読み込んだ瞬間に暗号化されるが、情報を盗み取るウイルスが登場してくる可能性は否定できない。

 毎回、電話で交信する専用端末と違い、常にネットに接続しているスマホは、不審な取引があればすぐ検知できるという。しかし審査が簡単な分、悪意のある人が契約することも予想される。その場合でも不正な取引が防げるよう事業者は対策をとってほしい。

 日本のレジは読み取り装置が乱立し、雑然としている。スマホ決済なら、店内がすっきりするだけでなく、海の家のように電話線のないところでも使える。マイナス点ばかり心配し、新技術を使わなければ、販売革新は起こらない。スマホ決済を上手に安全に使う工夫と対策が求められている。

医療の改革―患者の協力も必要だ

 日本の医療は、今のままでは立ちゆかない。私たち患者の側も意識を変え、協力していくことが求められている。

 社会保障改革のスケジュールをまとめた法案の骨子が、きょう閣議決定される。なかでも大きな変革が想定されているのが医療の分野だ。

 改革の設計図を描いた社会保障国民会議の報告書には、医師だけでなく、患者に対する厳しい注文が含まれている。

 特に注目されるのは、日本の医療に特徴的な「病院へのフリーアクセス」について、考え方の変更を迫っている点だ。

 これまでは保険証があれば、「いつでも、好きな病院に行ける」というのがフリーアクセスと考えられてきた。

 多くの病院は、患者を獲得するため、最新の医療機器を導入し、幅広い診療科で専門医をそろえようと競争する。

 結果的に、ベッドはたくさんあるものの、病院間で機能が重複し、効率が悪くなった。医師や看護師が手薄になり、当直勤務が頻繁になるなど、医療現場は疲弊した。

 そこで、「必要な時に必要な医療が受けられる」ことをフリーアクセスと考えよう、というのが国民会議の提案である。

 患者一人ひとりに必要な医療が何かを判断するのは、地域の「かかりつけ医」である。患者を診て、大病院で最先端の治療が必要なのか否か、リハビリや介護に重点を移すべきなのか、などを判断する。

 この振り分けが機能すれば、人材や設備が効率的に活用できるようになる。改革の成否は、かかりつけ医が住民に信頼されるかどうかにかかる。

 この責任を果たすには、患者のニーズにあった病院や施設の受け皿が必要になる。それらを整備し、連携・協力させる役目は都道府県が担う。消費増税分を財源とした基金も使いながら進めることになろう。

 一方、患者は病院を自分で選ぶ自由を制限され、かかりつけ医の指示に従う「我慢」が求められる。今でも、医師の紹介状なしで受診するのに5千円程度余分にかかる病院があるが、こうしたハードルはさらに上がる見通しだ。

 簡単に進む話ではない。混乱を招く恐れもある。

 しかし、急速な高齢化で、医療や介護の費用は経済の規模が拡大する以上に増える。これ以上、今の世代が使うサービスの費用を将来世代にツケ回しすることは許されない。

 医療の効率化は、国民全体の責任と考えるべきだ。

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