2017年12月3日日曜日

無戸籍者問題 子の救済を最優先に考えたい

 親の事情で出生届が出されず、無戸籍になる人をなくさねばならない。司法が対策の必要性に触れた意義は大きい。

 民法の「嫡出否認」規定の是非が争われた訴訟で、神戸地裁が妥当性を認めた。生まれた子と父子関係がないと訴える権利は、出生を知ってから1年以内に限り、夫のみが持つという規定だ。明治以来、変わっていない。

 早期に父親を確定し、子の相続権や扶養を受ける権利を守る目的がある。判決は「規定の合理性は肯定できる」と結論付けた。身分関係の安定に一定の役割を果たしてきた点を重視したのだろう。

 60歳代の女性と娘、孫2人が国に損害賠償を求めていた。

 夫の暴力を逃れて別居中の女性が、別の男性との間に娘をもうけた。男性を実父とする出生届は、受理されなかった。婚姻中に妻が妊娠した子は法律上、夫の子とみなすという民法の「嫡出推定」規定に抵触したためだ。

 夫に娘の存在を知られることを恐れて、女性は娘の出生届の提出を諦めた。妻子にも嫡出否認の権利があれば、娘や孫は無戸籍にならずに済んだと主張していた。

 判決は、請求を退けたものの、この女性の立場に理解を示した。離婚訴訟を提起する際の支援や個人情報保護の必要性に言及した。深刻化する配偶者間暴力の実態を踏まえた指摘はうなずける。

 法務省によると、これまでに1495人の無戸籍者が確認された。8割近くが民法の規定に起因している。支援団体は、実際には1万人以上に上ると推計する。

 無戸籍の場合、原則として住民票やパスポートを取得できない。部屋を借りたり、銀行口座を開設したりすることも困難だ。日常生活に支障を来す状況は、改善しなければならない。

 法務省は、無戸籍解消への対策強化を打ち出した。法務局や家裁、法テラス、弁護士会が連携し、戸籍取得を支援する。精神的、費用的な負担から手続きをためらう人への手助けが欠かせない。

 そもそも、親のやむにやまれない事情で、子が無戸籍になるのを防ぐ仕組みを考えるべきだ。

 判決は、血縁上の父が認知するなど、一定の条件下で、妻にも嫡出否認権を認めることを選択肢として示した。夫の関与なしに、血縁上の父による認知が認められる範囲を広げるなど、運用で改善できる部分もあろう。

 無戸籍になった責任は、子にはない。子の救済を最優先に、支援に取り組むことが大切だ。

時事問題

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