2017年12月5日火曜日

(社説)新大学入試 考える授業への転換を

 センター試験の後を継ぐ「大学入学共通テスト」の試行調査があり、主な科目の問題例と解答が公表された。今の中学3年生から新制度に移行する。

 注目されるのはマークシートの選択式問題の変わりぶりだ。たとえば歴史は、暗記量よりも史実の背景や意義をきちんと理解しているかを問い、数学も筋道を追って答えを導き出す力を試す内容になっている。

 短文の記述式問題が同時に導入されることとあわせ、思考力を重視する姿勢が鮮明だ。

 基本理念は賛同できる。入試が終わればはがれ落ちてしまう詰め込み勉強よりも、「考えるスタミナ」を養うことに高校時代の3年間を使う。その方がはるかに大学進学後や社会に出てから役に立つからだ。

 ただ、現在のセンター試験よりかなり難しく、成績が二極分化する心配がある。多くの受験生が低い点数の範囲に集中すると、差がつかず、選抜試験として使いにくくなるだろう。

 今回はあくまでも試行で、さらに検討するというが、大学を受験する高校生の大半が参加することが想定されるテストだ。適切な難易度を早く見きわめ、本番により近い問題例を示すようにしてもらいたい。

 授業や教科書のあり方も考え直す必要がある。

 複数の資料を読み比べ、あるいは討論をして、多角的な見方を養う。学んだ内容と実社会のつながりを考える――。今回の問題例からは、そんな勉強をしてきてほしいというメッセージを読みとることができる。

 しかし、現実はどうか。

 試行調査にのぞんだ高校からは、授業とのギャップを指摘する声が多くあがっている。

 見切り発車で新テストの実施時期が決まり、どんな姿になるかが見え始めたのはこの夏以降のため、「準備はこれから」というところが多い。来春には新テスト1期生となる生徒が入学する。国の対応の不手際で生徒にしわ寄せが及ばないよう、対応を急いでほしい。

 歴史や生物の教科書について、学者や教員の団体が「扱う用語が多すぎる」と精選をそれぞれ提言したが、他の教科でも同様の検討が必要ではないか。

 文部科学省は「知識から思考力へ」ではなく「知識も思考力も」だと強調する。ことばで言うのは簡単だが、高校に努力を促すだけでは限界がある。

 小中学校の授業のあり方もふくめ、教育全体の洗い直しを不断に進める。「思考力をつける授業」への転換は、そうした営みの積み重ねのうえにある。

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