2017年12月2日土曜日

(社説)性犯罪と社会 深刻な被害に向きあう

 かねて疑問の声が寄せられていた判例が見直された。

 強制わいせつ罪が成立するには、被告が性的な意図をもつことが必要か否かが争われた裁判で、最高裁大法廷が「不要」とする判断を示した。

 仕返しや侮辱の目的で知人の女性を裸にして写真を撮った行為について、同罪の成立を認めなかった1970年の最高裁判決をくつがえすものだ。

 妥当な結論といえる。「判例は間違っている」と異を唱えた一審神戸地裁、二審大阪高裁に、最高裁がこたえた形だ。

 今回の被告は「金を借りようとした相手から、少女にみだらなことをする様子を撮影するよう求められて応じただけで、金銭目的の行動だった」と主張していた。だが、どんな目的だったにせよ、被害者の性的自由を侵害した事実は重い。

 「意図が不要になれば、治療や介護行為が罪に問われかねない」との意見もあるが、ためにする議論だ。状況を総合的にみれば答えはおのずと導き出されよう。大法廷が「被害の内容や程度にこそ目を向けるべきだ」と述べたのはもっともである。

 判例変更の背景に、個人の尊厳を重視し、それを踏みにじる性犯罪に、より厳しい姿勢で臨むべきだとする、多くの国民の思いを読みとることができる。

 強姦(ごうかん)罪の名称を強制性交等罪に変え、刑の下限を懲役3年から5年に引きあげることなどを柱とする改正刑法が7月に施行された。強制わいせつの罪で裁かれてきた行為の一部も、量刑の重い強制性交等罪が適用されることになった。

 性犯罪の被害者の立場で考えることの大切さは社会全体で共有されつつあり、刑罰の見直しとあわせ、心身に傷を負った人の負担を少しでも軽くするための取り組みも進んでいる。

 犯行の証拠を迅速・確実に採取し、医師との連携を強める▽事情聴取や裁判の進め方を工夫し、二次被害を抑える▽カウンセリングや緊急避妊にかかる費用の公費負担を進めるなどだ。

 一方で、あらゆる相談に対応する「ワンストップ支援センター」がまだ開設されない県があるなど、課題も少なくない。何より「本人にもスキがあったのではないか」「抵抗しようと思えばできたはずだ」などと、被害者をおとしめたり責めたりする言動が一部に根強く残り、苦しみを増幅させている。

 性犯罪の深刻さにあらためて思いを寄せ、理解を深め、必要な施策を推進する。大法廷判決を、そんな流れを強く確かなものにするきっかけにしたい。

時事問題

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