2017年12月3日日曜日

(社説)出自知る権利 いつまで放置するのか

 あす4日から人権週間が始まる。先立つ先月20日は「世界子どもの日」だった。1989年の国連子どもの権利条約の採択などを受けて制定された。

 条約に明記されながら、国内で法的な保護の下にないものの一つが「父母を知る権利」だ。生殖補助医療(不妊治療)の進展を踏まえ、法整備の必要が指摘されてきたのに、国会の動きは鈍い。医療現場任せをいつまで続けるのだろうか。

 日本は不妊治療のさかんな国で、15年には新生児の20人に1人、約5万人が体外受精で生まれた。何らかの原因で精子がない場合も、第三者から提供を受けて子をもうけることができる。戦後まもなく始まった匿名第三者の精子を使った人工授精(AID)で、これまでに1万人以上が生まれ、さらに今年、匿名第三者の卵子による出生もはじめて公表された。

 AIDをめぐっては、親と血がつながっていない事実は子に知らせない方がよいとされてきた。だがこの20年ほどで、子どもたちの抱える深刻な問題や実態が明らかになっている。

 親に裏切られたという怒り、遺伝的ルーツがわからないことに伴うアイデンティティーの喪失感、近親婚への不安、それらに伴う心身の不調などだ。

 厚生労働省の審議会の部会は03年に報告書をまとめた。

 精子などの提供者の個人情報を公的機関で80年間保存する▽子は15歳になると情報の開示を請求することができる▽開示によって予想される問題や影響について、公的機関は当事者からの相談に応じ、説明する――などが柱だ。しかし、議論をまとめて法律に結実させようという強い意思が政治の世界になく、いまも実現していない。

 この間、欧州を中心に出自を知る権利を法制化する国は増えている。今後も不妊治療が進むことを考えれば、法整備の必要性はますます高い。

 法律に代わる現場でのルールづくりを事実上担う日本産科婦人科学会も、出自を知る権利については手をこまぬいている。

 しかし、先の報告書に沿う形で指針や見解を見直していくことはできるはずだ。たとえば、医療機関が個別に管理している提供者の情報を、学会が主導する組織の下に移すなど、できるところから始めてはどうだろう。この問題に取り組む当事者グループや医療機関との協議・連携も欠かせない。

 生まれてくる子どもたちのために、大人たちは何をなすべきか。これ以上の先送りは、もはや許されない。

時事問題

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