2017年12月6日水曜日

(社説)無戸籍問題 解消に向け、動き出せ

 生まれた時に出生届が出されず、戸籍がないまま生活している人がいる。夫の暴力から逃げた女性が、新たなパートナーとの間に生まれた子どもの出生届を出せなかったケースなど、さまざまな事情がある。

 背景にあるのが民法の規定だ。「離婚の成立前に妊娠した子は夫の子」「離婚しても300日以内に生まれた子は別れた夫の子と推定する」(772条)。120年前の明治の制定時から変わっていない。

 国が把握している戸籍のない人は700人を超すが、うち約4分の3は民法の適用を避けるため、母親が出生届を出せなかったことが原因だという。無戸籍者は約1万人にのぼるとする民間団体の推計もある。時代にあった法改正など、無戸籍者の解消にむけ、国会や政府は本腰を入れてとりくむべきだ。

 この問題に関連して先日、注目すべき判決が出た。

 生まれた子との父子関係を否定する「嫡出(ちゃくしゅつ)否認」を夫だけに認める民法774条の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、兵庫県の60代の女性と娘らが国に計220万円の損害賠償を求めていた。

 女性は約30年前、夫の暴力から逃れて別居した。離婚が成立する前に別の男性との間に娘が生まれ、離婚後、この男性を父とする出生届を出したが、民法の規定で受理されなかった。女性には嫡出否認の権利がない。元夫の死後の昨年まで娘と孫は無戸籍のままだった。

 神戸地裁は請求を退けたが、要件を限定して妻に否認権を認めることも「選択肢の一つ」と述べ、こうした補完制度の整備は「国会の立法裁量」と指摘した。夫の暴力から逃れる妻への離婚訴訟支援にも言及した。

 女性の娘はパスポートを作れず、孫には小学校入学前の健康診断の連絡も届かなかった。

 国は2008年と12年に、無戸籍者も市区町村長の判断で住民票に記載できると通知したが、要件が厳しく、抜本的な解決策になっていない。

 法務省は先月、各地の法務局に弁護士会や家裁などとの連携組織をつくって無戸籍問題の解決にとりくむよう指示した。上川陽子法相は「人間の尊厳に関わる重大な問題」と述べた。無戸籍者の把握に努め、深刻な問題という認識を政府内で共有し、不利益を生まないための施策を充実させてほしい。

 国会も基本的人権を脅かす問題だと認識し、実情に沿った法整備への議論を急ぐべきだ。法が差別をうみ、社会生活を制約するなどあってはならない。

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